やはらかに鳩ゐて冬の屋根瓦 中里夏彦
『水によるセラピー』(「川と水流」 ヘンリー・デイヴィッド・ソロー 仙名紀訳)
二人の男たちが乗ったスキッフ・ボートとこの近くですれ違ったが、そのボートは木々を映している水面にたゆたっている。空中に漂う羽毛のように、あるいは小枝から離れた葉が、ひっくり返りもせずに静かに水面に落ちつつあるかのように、動きを止めて、自然の法則に任せてかすかに漂っている。このように彼らがたゆたっている光景は、自然の哲学のなかで展開される美しさを、巧みに具現している。私たちの目には、鳥が空を飛び、魚が水中を泳ぐのと同じく、人間が舟を漕ぎ進めることは芸術の域に達しているように思える。人間のあらゆる行動は、さらに高尚で崇高なものにすることができるはずだ、という点に思い至る。私たちは人生のすべての面で、芸術作品や自然に劣らない程度に美しく優雅にやりおおせることができるのではあるまいか。
四海波静 茨木のり子
戦争責任を問われて
その人は言った
そういう言葉のアヤについて
文学方面はあまり研究していないので
お答えできかねます
思わず笑いがこみあげて
どす黒い笑い吐血のように
吹き上げては 止まり また噴きあげる
三歳の子だって笑い出すだろう
文学研究果たさねば あばばばばとも言えないとしたら
四つの島
笑(えら)ぎに笑ぎて どよもすか
三十年に一つのとてつもないブラック・ユーモア
野ざらしのどくろさえ
カタカタカタと笑ったのに
笑殺どころか
頼朝級の野次ひとつ飛ばず
どこへ行ったか散じたか落首狂歌のスピリット
四海波静かにて
黙々の薄気味悪い群衆と
後白河以来の帝王学
無音のままに貼りついて
今年も耳澄ます除夜の鐘
それを選んだ 茨木のり子
退屈極まりないのが 平和
単調な単調なあけくれが 平和
生き方をそれぞれ工夫しなければならないのが 平和
男がなよなよしてくるのが 平和
女が溌剌としてくるのが 平和
好きな色の毛糸が好きなだけ買える
眩しさ!
ともすれば淀みそうになるものを
フレッシュにもち続けてゆくのは 難しい
戦争をやるより ずっと
見知らぬ者に魂を譲り渡すより ずっと
けれど
わたくしたちは
それを
選んだ
札幌国際芸術祭
札幌市では、文化芸術が市民に親しまれ、心豊かな暮らしを支えるとともに、札幌の歴史・文化、自然環境、IT、デザインなど様々な資源をフルに活かした次代の新たな産業やライフスタイルを創出し、その魅力を世界へ強く発信していくために、「創造都市さっぽろ」の象徴的な事業として、2014年7月~9月に札幌国際芸術祭を開催いたします。
http://www.sapporo-internationalartfestival.jp/about-siaf