What A Wonderful World

毎日の暮らしの中で、心惹かれたことを語ります。

佐々 涼子 『紙つなげ 彼らが本の紙を造っている』 (早川書房)

2014年07月04日 14時54分21秒 | 
* 最初にまずごめんなさい。私はまだこの本を読めるほどには、震災と距離をおくことができません。なのに他人にお勧めすることをお許し下さい。


 発売前から、ハヤカワオンラインで、この本のことは知っていたのですが、内容があまりにもすぐ傍で起きた出来事なので、読もうかどうか悩んでいました。震災の出来事を扱った本のコーナーが、市の図書館にはあるのですが、私はいまだにどれとして手に取ることができません。この本も、読めば当時のことを思い出してしまうのは判りきっているので、結局手に取ることはできませんでした。

震災から何日か経って、長靴を履いてあるけるくらいまで津波の水が引いた頃に、食料と水を求めて長男と大きな道路の方へ歩いて行った時に、巨大な白い紙のロールがひとつ、道路に斜めにありました。製紙工場の大きな紙のロールです、どうあってもそこにあるべきじゃないモノがありました。周囲にあるつぶれた車やガレキと同じく、津波に流されてきたんでしょう。まだ工場まではだいぶあるのに、それがある事で、あぁ、工場もダメになったんだとわかりました。

そこからは、たぶん本に書いてあるとおりの、まさに「人力のみの戦い」が続きました。新聞がくるようになって、電気が復旧してTVが観れるようになって、工場の様子を知ることができました。閉鎖ではなく復旧するという文字が、とても嬉しかったのを覚えています。それから年月が過ぎて、とうとう以前と同じくエントツから白い煙が見える光景が戻りました。

地震と津波は、なにもかもを(変な言い方かもしれませんが)差別なく等しく、壊して、流して、錆びさせて、「ガレキ」とひとくくりに呼ばれるモノにしてしまいました。思い返せば、あんなにがむしゃらにドロを掻きだしたり、ゴミとなった家財道具を運んだり、ストーブと鍋でご飯を炊いたり、生きるのに必死だったのは、そうしていないといられない変なアドレナリンが出ていたんだろうなと思います。失ったショックで、自分でいられなくなるのに、懸命に抗ったんですよね。

たぶん、この本で書かれている事は、何かせずにはいられなかった被災地民のあがきです。人がどん底に陥った時に、残る物、選択するのは「本当の事だけ」だと、そういう話を読みたい方にお勧めします。


★「ハヤカワオンライン / 紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている」
( http://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/112196.html )より引用

 2011年3月11日、宮城県石巻市の日本製紙石巻工場は津波に飲みこまれ、完全に機能停止した。

製紙工場には「何があっても絶対に紙を供給し続ける」という出版社との約束がある。しかし状況は、従業員の誰もが「工場は死んだ」と口にするほど絶望的だった。にもかかわらず、工場長は半年での復興を宣言。

その日から、従業員たちの闘いが始まった。

食料の入手は容易ではなく、電気もガスも水道も復旧していない状態での作業は、困難を極めた。東京の本社営業部と石巻工場の意見の対立さえ生まれた。だが、従業員はみな、工場のため、石巻のため、そして、出版社と本を待つ読者のために力を尽くした。

震災の絶望から、工場の復興までを徹底取材した傑作ノンフィクション。


★「Trinity web / 東日本大震災からの奇跡の復活~『紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている 再生・日本製紙石巻工場』」
( http://www.el-aura.com/2014061201/ )
コメント (2)
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