風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

歌舞伎座新開場 こけら落五月大歌舞伎 第二部(5月29日)

2013-05-29 23:24:27 | 歌舞伎



ギリギリまで迷ったのですが、行ってしまいました、今月三度目の第二部。
だって仁左衛門さんの体調が心配で。。。(←本気です)

というわけで千穐楽です。
千穐楽って、独特の雰囲気があっていいですよね。
初日の明るい華やかさとは違う、どこか切ない華やかさ。


【伽羅先代萩】

3階A席2列目の席だったのですが、3階からはあの奥行感溢れる松の広間の背景がほとんど見えないのですね。。あの背景は、大奥的な場面をより迫力あるものにしているように思うので、ちょっと残念でした。
今回も飽きずに沖の井のカッコよさに惚れ惚れし、思わず時蔵さんの舞台写真を買ってしまいそうになりましたよ。でも私の一番好きな懐剣に手をあてている姿は筋書きに写真が載っているので(松竹GJ!)、思いとどまりました。
この沖の井と扇雀さんの松島が、栄御前と八汐の出方に神経を張りつめている様子の、カッコイイのなんのって!どうしても舞台の左にばかり目がいってしまい、困った。
秀太郎さんの栄御前の花道の引込みも、あいかわらず雰囲気があってよかったなぁ。
歌舞伎の女方って、どうしてこんなに魅力的なのでしょう!
あと前回も思いましたが、藤十郎さんの政岡が千松の亡骸を抱いて嘆く場面の台詞がうしろの音に綺麗にのっていて、感心しました。音楽を聴いているみたいで(←褒めてます)、聞き惚れた。もともとが情感たっぷりめの演技をされる方なので、ここはこういう方がしつこくならなくて良いように感じました。
ただ今日の政岡は千松が刺されているときにすでに目にいっぱい涙が浮かんでいて、これでは栄御前は誤解なんてしないんじゃないかしら、とちょっと思いました^^; 感動的ではありましたが。 涙が頬を伝うのが千松に駆け寄った後なのは、これまでと同様。


【廓文章 吉田屋】

う・・・・・、わぁ・・・・・・・・・・・・・・・・・。
すごかった。。。。。。。。。。。

今までに観た歌舞伎の舞台の中で一番感動したかもしれない。。。。。
最初から最後まで鳥肌立ちっぱなし。。。。。
4月の千穐楽前日に観た盛綱も神がかっていたけれど、今日の伊左衛門は神だった。。。。。

ほんとうに、なんなんだろう、この人は。
この人の舞台を観ていると、人間ってなんて美しいんだろうって思う。人間が好きになる。
第三部の娘道成寺からは一生分の幸せをもらったけれど、今日の吉田屋からは三生分の幸せをもらってしまいました。
今夜の舞台の思い出だけで、この先三回生まれ変わってもきっと幸せでいられます。
ほんとうにほんとうに、いいもの、観させてもらいました。
心からありがとう、仁左衛門さん。
玉三郎さんも、仁左衛門さんの伊左衛門と並んでこれほどまでにしっくりくる夕霧は、これまでもこの先も、この人以外にいないでしょう。仁左さんとの二人の姿、本当に綺麗だった。ご両人!っていう掛け声はこの二人のためにあるのだと思った。夕霧の雪持ちの梅の打掛を伊左衛門がさらっと脱がせて自分が羽織るところは、二人ともスマートで美しくて、動く絵巻物を見ているようだった(その打掛を伊左衛門が歩きながら自然に肩から床に落とすところも、さりげないけれど、だからこそ忘れられない美しさ・・・)。
秀太郎さんのおきさも、彌十郎さんの喜左衛門も、優しくて、大きくて、最高でした。

最後の幕切れのときの仁左衛門さんは本当に本当に嬉しそうで、5日に観たときとも、23日に観たときとも、youtubeのダイジェストとも違う、それこそ満面の笑みで。
いっぱいの大向こうと、満場の拍手と、観客の幸福な幸福な笑顔に溢れた、杮茸落五月大歌舞伎千穐楽の吉田屋でした。


5日の感想
23日の感想


「廓文章 吉田屋」ダイジェスト(歌舞伎座さよなら公演)


※追記:
5月30日の孝太郎さんのブログ
「父も後半体調を崩し、正直あぶなかったので心配しました。お陰様で楽日を迎えられ嬉しい限りの千秋楽でした。」とのこと。
やっぱり後半は相当体調がお悪かったのですね…。千穐楽のあの笑顔は仁左衛門さんには珍しく舞台上で見せた素の笑顔でしたから、千穐楽まで演じ切れたことが、観客が喜んでくれていることが、本当に嬉しかったのだろうなぁ…。
ですがどうか、ご体調が悪いのなら、無理なさらないでいただきたいです。。。私達はまだまだあなたの舞台が観たいのですよ。。。