風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

七月大歌舞伎~夜の部~ @大阪松竹座(7月15日)

2013-07-21 16:51:46 | 歌舞伎



歌舞伎座と違い松竹座は昼の部が終わると一旦外へ出されてしまうため、松竹座から歩いてすぐの『今井』で夕食も兼ねて夜の部の開場待ち。
関西風のきつねうどんと、白蜜のわらび餅が大変美味どした~。
こういう美味しいお店をみつけると、また松竹座に来たくなりますね(キケンキケン)


【曽我物語】

昼の部では、松嶋屋の次男さんと三男さん。そして夜の部では、ご長男の我當さん。
我當さんは私は杮落しの盛綱陣屋の印象が強かったので(あの時政は素晴らしかった)、今回の曽我兄弟長男役の意外な若々しさ(失礼)にびっくり。お元気そうでよかったです。
今更ですが、松嶋屋のご兄弟って三人三様の個性で素晴らしいですね。
今回は東&西成駒屋のご兄弟、松嶋屋三兄弟と、三つのご兄弟を堪能させていただきました。
皆さん、なんて芸達者なご兄弟でしょう!
『曽我物語』は、何と言うこともないストーリーですが、歌舞伎初心者の私には五郎&十郎の他の兄弟が見られて、良かったです。
五郎役の進之介さんは今回長い台詞を話されているところを初めて拝見しましたが、、、、どうなんでしょう・・・。正直、ちょっと吃驚しました^^;


【一條大蔵譚(いちじょうおおくらものがたり)】

「阿呆を演じても品を失ってはいけない難しい役」とのことですが、仁左さまが演じればどんな役でも好むと好まざると品は滲み出てしまうので無問題。
しかし噂で聞いてはおりましたが、仁左衛門さんの大蔵卿の可愛いこと可愛いこと!
初めの出から全開のほんわぁオーラで、一瞬にして客席中を撃沈しておられました。
お歯黒の半開きのお口で、ぽけ~~~~~な笑顔。
下手で孝太郎さん達が色々しているのに、上手では――
床几からコケて、それがシーソーになると気付いて、シーソー遊びをはじめちゃうニザさん。
虫を楽しげに追うニザさん。
自分で舞を所望しておきながら、飽きちゃったのか心地よくなっちゃったのか、こっくりおねむなニザさん。
舞の足踏みの音ではッと目を覚まして、一生懸命孝太郎さんの振りを真似して、ご機嫌なニザさん(座ってるのに、足までちゃんと動かしてる)
帰るときに、靴を片方忘れたまま、トコトコ歩いていってしまい、御付の鳴瀬さん(吉弥さん)に履かせてもらうニザさん。吉弥さんのヌル~イ視線がたまらん。
花道で傘持ちの家臣に、なぜかきちんとお辞儀をするニザさん(なぜだ、笑)。
差しかけられた傘に吃驚し、ぱっと顔を輝かせて、傘にぴょんぴょん飛びつくニザさん。
これでもか!の可愛い攻撃にこっちはもうクラクラですよ。。。
吉田屋の伊左衛門と比べて、アホさも5倍増し、可愛さも5倍増し。
そして花道でふっと素の表情に戻るところ、鮮やかでした!

後半は、凛々しくカッコいいバージョンの大蔵卿がご登場。
ラストで何度か披露される「作り阿呆⇔素を一瞬で使い分ける」演技は恐らくさほど難しい演技ではないとは思いますが、「この上なく可愛い!」⇔「この上なくカッコいい!」の極上の転換を客に見せてくれる役者は、仁左衛門さんをおいて他にいないのではないでしょうか。
だからといって決してイロモノにはならず、最初から最後まで大蔵卿の心の芯がはっきりと通っていて、最後はその生き様に胸が熱くなる。
素晴らしい。。。

橋之助さんの鬼次郎と孝太郎さんのお京もとてもよかったです。
常盤御前は、秀太郎さんでした。



【杜若艶色紫(かきつばたいろもえどぞめ)】

この演目はもう、ザ・福助さんな演目でした。
福助さんの舞台で最初から最後まで気になるところが一つもなかったのは、今回が初めてかもしれません。高く張り上がる声も今回は全然気にならず(張り上がってはいるのだけれど、役的に気にならなかった)。
福助さん演じる、蛇使いのお六。
いやー、きっぷがよくて、カッコよかった!
心から満足&感動させていただきました。
特に最後の衣装がすごくお似合いで、素敵でした。

扇雀さんの八ッ橋。
昼の立役と夜の女形。一日に両方観られてお得な気分でした♪
立役もステキだったけど、やっぱり女形もいい!
そして『籠釣瓶~』と同じく、やっぱり八ッ橋は次郎左衛門に殺される運命なのですね。。

橋之助さんの願哲。
個性的な役柄の割には、なぜでしょう、あまり印象に残りませんでした^^;
でも、福助さんとは相変わらず安定のコンビで、安心して観ていることができました。

亀蔵さんの釣鐘弥左衛門。
八ッ橋が来るのをおふとんの中で待ってる姿が可愛かったです、笑。


翫雀さんの佐野次郎左衛門。
昼間のインパクトが強すぎて、次郎左衛門に見えずに困りました^^;
亀鶴さんの伝兵衛に長持に入れられて匿われてるところが可愛かったです、笑。

亀鶴さんのお守り伝兵衛。
予想外な大活躍で嬉しかった!
福助さんとの夫婦がとってもイイ。
女王さまキャラな福助さんと、おおらかで優しい、でもいざとなると頼りになるカッコいい旦那の亀鶴さん。
大好きだー。

お芝居の途中で、福助さんのご紹介による、片岡松十郎さん&中村橋吾さんの名題昇進披露。
こういうのは初めて見ましたけど、いいですね。客席からの拍手も暖かくて、ちょっと感動しちゃいました。
橋吾さん、お顔もお声もすっきりとしていて、いいなと思いました。
そしてそれぞれが口上を終えた途端、「さっさと出て行きな!」と芝居に戻る福助さん。カッコよすぎ、笑。

この演目、他にも見所がたくさんで、福助さん、翫雀さん、橋之助さん、亀鶴さんによるだんまりの場面も、皆さんお上手なので、楽しかった!

あと、なんといってもラスト。
夕立が上がって(暗幕が落ちて)、明るい田園風景がぱぁっと現れるところ、すごく綺麗でした。
客席から「わぁっ」って声が上がってた^^
雨に本水を使っていたので、雨上がりの田畑に太陽がきらきらと光る様が目に見えるようで。
なんか、ものすごいストレス解消!
一日の最後がこの演目で良かった!!

こんなに昼も夜も充実しているのに、どうしてチケット売れてないんだろう~。
私が関西に住んでいたら、絶対にもう一回観に行くのにな。

それと松竹座。
とてもいい劇場ですね!この日は大向こうも素晴らしかったです。
音響も照明も歌舞伎座よりずっとしっくりくるし、なによりサイズが歌舞伎にぴったり。
三階席からも舞台がとても近く、役者さんを近くに感じることができました(もっとも、一列目のガラスは最悪ですけれど)。


ところで、前日に知ったのですが、この日は
祇園祭の宵々山の日でした。
たまたま京都にホテルをとっていて、京都駅に着いたのが22時頃だったので、せっかくだから祇園祭でも覗きに行くかと四条まで出て、すぐに後悔いたしました。。。
もはや現代の祇園祭に「風情」を期待してはだめなのですね。。。
真夏の湘南ビーチのごとき雰囲気でした。。。八坂神社の方へ行けば少しは風情があったのだろうか。。。
まっすぐホテルに帰って、舞台の余韻に浸っていればよかったです。。。





道頓堀『今井』のわらび餅。
甘すぎず、ぷるっぷるで美味しかった♪



祇園祭(の人混み・・・)


七月大歌舞伎~昼の部~