駅からとーっても遠かったですけれども、頑張って行ってまいりました、猿之助の襲名披露巡業。
2階席が2500円というお値段は、巡業ならではですね。
ちなみに、私にとって初の澤瀉屋メインのお芝居です。
演目も、2つとも初見。
【毛抜】
はっきり申しますと、、、とても退屈でございました。。。
もしかしたら、私には荒事の魅力を感じ取る感性がないのかもしれん。。。
大声で笑っているお客さん達は、本当にあのお芝居を面白いと思っているのだろうか。
一度でいいから、気持ちの醒める暇もないほどわくわくする荒事芝居に出会いたいと切に切に思います。。。(助六は大層楽しかったですが、あれは少し和事ミックスですよね)
右近さん。
とても上手な役者さんだと度々耳にしていたので楽しみにしていたのですが、お上手・・・なのでしょうか・・・。
決して下手だとは感じませんでしたが、鼻にかかったようなお声なので台詞がとても聴きずらく、正直とてもストレスでした。。。
ただ次の口上は、声量があり堂々としていて、カッコよかったです。
猿弥さんは、おそらく旧歌舞伎座で観た『天守物語』以来だと思いますが、あまり当時と印象は変わらず。
全く悪いところはないのだけれど、無難な感じだなぁ、と・・・。
【口上】
やはり襲名披露の口上というのは、普段の口上と違い、特別な感じがするものですね。
今日は巡業の千穐楽だったので、猿之助がそれについても触れていました。
「巡業というより強化合宿のようでした」とも、笑。
一か月間、おつかれさまでした!
そして梅玉さんの口上にあった、今年に入って何度聞いたかわからない「これからも歌舞伎をよろしく」の言葉。
歌舞伎役者の方々の危機感がひしひしと伝わってきて、さすがにこれだけ聞き続けると寂しくなってきます。。。
私は見捨てないよ!!!
と言いたいけれど、先ほどの『毛抜』でちょっとくじけそうになりました。。。
いや、もちろん歌舞伎は観つづけますけれど!
【義経千本桜~四の切~】
猿之助の狐忠信、さすがに上手ですね。
この役に、ものすごくぴったりだなぁと思いました。
顔から体つきから声から身体能力から、現在の歌舞伎界でこれほどこの役が似合う役者は他にいないのではないでしょうか。
ただ、これでもだいぶ余分な力がとれたとの評判ですが、私にはまだ「演技の巧さ」(俺、巧いでしょ?的な…)というのが表に出てしまっているように見えました。
それでも彼のような勢いと才能とカリスマ性のある役者は歌舞伎の未来には不可欠だと思うので、これからも応援していきたいと思います。
なにより、彼がお芝居に対して全力なのが伝わってきましたから。
今日のお芝居全体の感想としては、『毛抜』でも『四の切』でも、演目は古典でも役者さん達の空気がひどく現代的に感じられ、観終わった後、なんだか無性に“歌舞伎らしい歌舞伎”が観たくなってしまいました・・・(何をもってそう感じるかは、人それぞれだと思いますが)。
芸の技巧や理屈を超えた、“のんびりとした歌舞伎らしい空気”とでも言いましょうか。
そういう空気が、懐かしくなりました。
だからかもしれませんが、今日は梅玉さんの義経の存在にひどくほっとしました。
この舞台にいてくれてありがとう梅玉さん・・・って思った。。
門之助さんの静御前も、情が感じられる優しい静で良かったと思います。
次回の歌舞伎は、来月の竹三郎の会。猿之助は竹三郎さんにとても懐いていて、この会にも自ら出たいと名乗りを上げたとのことですので、女團七をどんな風に演じてくれるのか、とっても楽しみです。
そして、十月の歌舞伎座の義経千本桜も、ますます楽しみになりました(こちらは音羽屋型ですよね?)
※追記:
いま気付きましたが、私、何年も前に澤瀉屋メインのお芝居を一度だけ観ておりました。
主役は海老蔵でしたが、『伊達の十役』です。
ちなみに、これまでに観た全ての歌舞伎の中で、最も印象に残っていない舞台です・・・(海老蔵の早変りしか記憶にない・・・)。
今思うと、人生3度目の歌舞伎鑑賞だった『天守物語』で「いいな」と思ったのが、門之助さんの舌長姥、吉弥さんの薄、そして我當さんの桃六でしたから、人の好みって変わりませんね。歌舞伎など全く見慣れていなかったにもかかわらず、可笑しくなるほど今と好みが同じ。
《インタビュー》
・猿之助が語る「松竹大歌舞伎 東コース」