風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

かながわ伝統芸能祭 文楽公演 @神奈川県立青少年センター(10月12日)

2014-10-13 22:25:12 | その他観劇、コンサートetc




勝手に地元で古典芸能シリーズ第?段。
巡業公演の昼の部に行ってまいりました。

楽しかったぁぁぁ。。。。。。。。。。
もうもうもうもう。。。。。。
文楽ってやっぱり素敵
こんな舞台を見せていただいて1500円。こんなにお安くてほんとによいのですか?


【曽根崎心中】

この世の名残り、夜も名残り。
死に行く身をたとふればあだしが原の道の霜。
一足づつに消えて行く夢の夢こそあはれなれ。

文楽の曽根崎心中、いいですねぇ!
「生玉社前の段」は、演出が歌舞伎ほど現代的でなく(スポットライトも、立体的な舞台の使い方もない)、私はこちらの方が好みかも。

「天満屋」は、歌舞伎では九平次の悪事がばれる場面がありますが、今回それのない文楽を観て、あれは意外と効果的な入れ事なのかもしれないなと感じました。本来は死ぬ必要のない二人がそうとは知らずに死ぬ、観客だけがそれを知っている。その方が悲劇性はより一層強まる気もする。ロミジュリ的な悲劇性。

しかしこの文楽の曽根崎心中、人形が生み出す効果がそれはそれは素晴らしくて、もうほんと良かった(>_<)
歌舞伎のときは藤十郎さんのインパクト(女子高生♪なお初ちゃん)のために徳兵衛の存在感が薄く感じられたのだけれど、今回は玉女さんの徳兵衛を目で追ってしまった。
真っ直ぐな青年らしさと、でもちゃんと色気があって(世慣れた系の色気じゃなくて、若く美しい色気。天満屋でお初ちゃんの裾に隠れているときの綺麗さといったら!)、九平次に大事なお金を貸しちゃう優しさがありながら、決して弱々しくはないの(力説)!
そんな徳兵衛の雰囲気が、落ち着いた中にも情熱的な和生さんのお初ちゃんととても似合ってて。徳兵衛のお初ちゃんに対する仕草がいちいち優しくてねぇ。。
そして何より、二人がとっても愛し合っちゃってるの(>_<)
二人の体が触れ合う場面は、それが指先であろうと、布越しであろうと、ことごとく心臓がぎゅッて掴まれた。
床下で死ぬ覚悟を伝える場面はもちろんだけど、何度かある二人が正面からひしっと抱き合うところも「人形同士でどうしてこんなに感情が溢れてるの!人形なのに!」と。簑助さんの八重垣姫もそうだったけど、人形遣いさん達が舞台から消えたよ。人形にこんなに胸を苦しくさせられるなんて・・・。もちろん「まるで人間みたい!」という意味ではなくて、人形だからこその切なさ、美しさだった。

そして咲大夫さん(@「天満屋」)!
前回の『油地獄』に続き、なんて安定感なの!
私は超初心者なので人形を目で追っていると気付くと耳が疎かになっているということが時々あるのだけれど、咲大夫さんの時は不思議とどんなに人形に集中していても語りもすんなり耳に入ってくるのです。そしてちゃんと相乗効果の感動がもらえるのです。

天満屋のラストは、歌舞伎と違ってお初ちゃんは徳兵衛の手は引かないで徳兵衛が先をいくのね。
にもかかわらず、歌舞伎と同様、やっぱりこのお話はお初ちゃんが心中をリードしてるように見えるのが不思議。
原因を作ったのは紛れもなく徳兵衛だけど、お初ちゃんは九平次に騙されたとまだわかっていない段階から早々に「逢ふに逢はれぬその時は、この世ばかりの約束か」なんて死を匂わせる台詞を言ってるし。それがお初ちゃんの場合、若い女の子ゆえというのとはちょっと違う気がする。その点徳兵衛の方は特にそういう感じは受けなくて、そこはノーマルな感覚を持ってる印象。彼の「そなたに離れ徳兵衛に、なに生き甲斐があらうぞ」も普通の恋人の睦言に聞こえるけれど、お初ちゃんの方はなんかマジっぽく聞こえる。
だから、もしかして相手がお初ちゃんじゃなかったら徳兵衛は心中することにはならなかったのではないか、とかも思ったり。
曽根崎心中って原作では最初にお初ちゃんの観音巡りの場面があるのですよね。そういうお初ちゃんの信仰の強さとかも、関係あったりするのかな。
まぁどちらにしても二人は愛し合っちゃっているので、そういう意味ではあまり重要なことではないのかもしれないけれど。

それとこのお話って、「生玉社前」~「天神森」まで、たった一昼夜の出来事なのですよね。そんなところも、悲劇性が増されるなぁ。

文楽「曽根崎心中」(4/4) 天神森の段


こちらの動画の玉男さん&簑助さんの濃密な徳兵衛&お初と比べると、今回の徳兵衛&お初は空気がさっぱりめ。
この動画も衝撃的な素晴らしさですが(特にラストの死に様・・・!!!)、今回の二人も私はとっても好きでした。
勢いのまま死に向かっちゃう感じといいますか、それがいかにも若い恋人達という感じがして。それこそロミジュリ的な。

オープニングの動画(1/4)で山川さんが語られているお話が興味深いです。
実際の心中事件のとき、近松が天神森へ飛んで行くと二人の遺体に小紋が被せられていて、その中から4本の足だけが見えていて、それに近松は強烈な印象を受けて、帰ってこの話を書いたのだと。そう思って見ると、天満屋の場面がより印象的に感じられますね。


【義経千本桜~道行初音旅】

ごめんなさい。。。決して太夫さんや人形遣いさんのせいではないのです。。。
でも、お人形さんによる舞踊は私にはたいくつ。。。
所作事は人間の体で観る方が私は好きみたいです。。
歌舞伎ではあんなに感動した吉野山なのだがなぁ。。
でも眠ってはいませんよ!ひたすら清治さん達の三味線に聴き入っておりました。
あ、そうそう、忠信の登場がほんとにキチュネなのは文楽ならではですね。あれは楽しかった。
あと静が忠信に扇子を投げるところは惜しくも落下しちゃっていましたが、おぉ!と感心するほど一瞬で拾い上げていました笑。

※追記:ツイで知ったのですが、会場にPAが入っていたのだとか。私は上手の席だったせいか気付きませんでしたが(床からちゃんと音が聴こえてた)、下手の席では左から音が聴こえていたそうな。それは思い切り萎えますねぇ。。