前楽の日に、幕見をしてまいりました。
【伊勢音頭恋寝刃(いせおんどこいのねたば)】
勘九郎の貢はニンじゃないといえば思いっっっきりニンじゃないのだろうとは思いますが(正直観る前はまったく期待していませんでした)、奥庭の惨殺シーン、とっても綺麗だった。彼の周りの空気が。刀に操られてるようには見えなかったという感想をいくつか見かけたけど、私にはちゃんとそう見えたけどなぁ。私、勘九郎が好きかもしれない、と思った笑。
玉さまの万野はやっぱり大好き!廓の世界で生きる女の強かさが滲んでいて。なにより観ていて楽しい。でも決してウケを狙ってるあざとさは感じない。
そして仁左衛門さんの喜助と、七之助のお紺と。やっぱりこの4人が一緒にいる空気はなんか好きだなぁ、とこの演目でも感じました。
ところで小山三さん(仲居千野)の出の度に客席から大拍手とザワメキが起きていて、応援の気持ちは素敵だけれど、最初の出はともかく二度目以降も拍手をするのはどうなのでしょう。。
初めて見た橋之助さんの女方(お鹿)は、思っていた以上に可愛かったです笑。ちょっとやりすぎ?なキワモノ系ではありましたけど。
あと、梅玉さんの万次郎がとても好き!こういう品のいい役、よくお似合いです^^
【寺子屋】
今月2回目の鑑賞。
今回は首実検の場面の松王丸に、涙涙・・・でした。
仁左衛門さんの松王丸、小太郎くんの首が刎ねられる音が聞こえた瞬間、びくっと大きく背中を震わせるのですね。
そして首実検の後、蓋をした首桶にさりげなく体を傾けて、まるで抱くように左手でずっと桶に触れているのですね。そして桶から手を離すとき、そっと掌で優しく桶の表面を撫でるのですね・・・号泣
今日は玉さまや勘九郎&七之助には先日ほどピンとこなかったのだけれど、仁左衛門さんが素晴らしかったから大満足でした。
あとお焼香の場面、お香の香りが前回も今回も4階席まで漂っていました。以前他の演目(たしか仮名手本4段目)でもあったけれど、こういうの、いいですよね^^
【吉野山】
藤十郎さんの静、観る度に若くなってる気が。。。本当の少女のよう。
梅玉さんの忠信、華やかさや色気は少なめだけれど、キチュネの仕草(両手を胸元で揃えてきゅってやるアレ)が想定外に可愛くて。。。キチュネ耳(髪)も。。。キュンとしちゃった。。
このお二人は、忠信がちゃんと静の従者に見えて、鋭さのないふんわりした味わい。
決して嫌いではなかったのですが・・・。
ごめんなさい、途中で意識が・・・遠のいてしま・・・・・ あまりにふんわりしすぎていたせいか、幕間にパンとおにぎりでお腹いっぱいにしたのがいけなかったのか。。。
橋之助さんの早見藤太をいまひとつ楽しめなかったのも同じ理由によるのか、あるいは違う理由によるのか。。
最後に忠信が投げる笠は、慎重に投げていたように見えましたが、藤太の頭上を通り越して地面へポトリ。梅玉さん、もしかしてノーコン?(kawaiiじゃないのさ笑)。菊五郎さんはテキトーに投げてた感じだったけど、私が観た回は全部成功してたなぁ。実は結構難しいのかな、これ。まぁ見るからに難しそうですけど。
さて、ここまでの3演目、実は私、かなりのローテンションで観ておりました・・・。
なぜなら今日は、歌舞伎座の中でも外でも客のマナーにゲンナリさせられることがあまりにも多かったからです。
老いも若きもスーパーレベルの前ノメラーがいっぱいで。あれだけ「後ろの人の迷惑になる」と案内されてるのに、自分くらいは構わないと思っているのか。
また、トイレの個室からオバちゃんが出てきて、お待たせ~と笑いながら友人らしき人と手を洗ってて、入れ替わりに入ったら・・・・ちょっと信じがたい惨状で・・・(流してないとかそういうレベルじゃなく、便器の上が大変なことに・・・・・・・)。次に入る人のことなどどうでもいいのだろうか。何故に歌舞伎座に来てトイレ掃除をせにゃならんのか。
他にもいくつもマナー的に残念なことが重なって・・・。色々な舞台に行ってるけど、正直、本当に歌舞伎だけだよ、ここまで客のマナーが酷いのは・・・。
そんな人達が「寺子屋感動した~!」とか言っているのを聞くと、歌舞伎って一体なんなんだろう・・・とか考えてしまって。舞台の上はあんなに美しいのに・・・。
もう歌舞伎はしばらくいいかな・・・と感じてしまったのです。
どんなに舞台が素晴らしくても、ストレスが溜まっては意味がないもの。お金も時間も有限なのに。
で、「次の演目がイマイチだったら、もう本当にしばらく歌舞伎はやめよう」と、吉野山の後の幕間で決めておりました。
【鰯賣戀曳網(いわしうりこいのひきあみ)】
というわけで、ほぼ歌舞伎に諦めモード、縁切りモードに入りつつあった私ですが――。
勘九郎&七之助。
歌舞伎を嫌いにさせないでくれてありがとう。。。。。。やっぱり歌舞伎って素敵って思わせてくれてありがとう。。。。。。
勘三郎さん。
歌舞伎の楽しさ、素晴らしさを教えてくれる、そんな兄弟を遺してくれて、本当に本当にありがとう。。。。。。
幕切れ。
観音様を手に、感謝を捧げる二人。
リアルからは程遠い、お伽噺のようなハッピーエンド。でも、こういうのもあっていい。
私が大好きな吉田屋にもちょっと似ている、幸福な幸福な夢のようなお話。
花道の二人も、観客も、泣いていて。
そして、割れんばかりの満場の拍手。
いいお芝居を、観せていただきました。
今回の勘九郎は最近私が感じていた彼と違って、勘三郎さんに似てはいたけれど、彼自身の素敵な個性が出ていたように感じました。こういう勘九郎が私はとても好き。これからも、こういう感じでいってほしいなぁ。
今後はもしかしたらこれまでよりちょっとだけ歌舞伎と距離を置いてしまうかもしれないけれど(ちょっとだけね)、これからも観つづけていきたいと思います。
そして今回もらった恩は一生忘れないよ、勘九郎&七之助!!