風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

美輪明宏 『紫の履歴書』 2

2015-04-20 12:39:06 | 




氷河だ。

一瞬、私は見てはならぬものを見たように思った。

神の世界
これは神々の座だ。

何千何万の彩りが氷のプリズムに踊って、凄まじい光を放っている。
未知の宇宙から宇宙へ向かって無音の凱歌をあげながら、ほとんど動いていないのではないかと思われるほどの遅さで雄大に流れて行く。



この素晴らしい美を皆に見せてあげたい。…私一人がこのような光景を観ることが、何よりも惜しかった。


この美しさを一度も見ることも感じることもなしに、一生を終わる人もいるのだと思うと、ますます残念でならない。

この地球
静かに流れてゆく地球

人間とは、まあ、何と自惚の強いものだろう。人間は何一つ知らずに死んで行くのだ。
たかだか百年にすぎぬ命。
この氷河の百分の一、千分の一にも遠く及ばぬ命。その短い一生で全てを知ったような、知り尽くしたような顔の何と多いことか。

酒の種類
マナー
ダンスのステップ
宝石
学識
恋愛
社会
常識
知識人

そんなものは屁のようなもの。
真実は他にあるのだ。
何一つ知らず、知ったつもりの錯覚と自惚れのまま死んでゆく人間。



塵ほどもない、小っぽけな人間
しかし、それが広大な宇宙に匹敵するものがあるとすれば……
そう……愛

それは美しい心
これこそは広大無辺の宇宙に比べることのできる永遠のもの、偉大なるもの

(美輪明宏 『紫の履歴書』)


人間の小さな脳の想像を遥かに超える大いなるものに対する畏敬、謙虚さは常に感じていたいですし、そういうものを感じられらることは感じられないよりも人間を幸福にしてくれると思っています。
そしてもしその大いなる存在に匹敵するほどの何かが人間の中にあるとすれば、それはきっと愛だけ。
だから宝石も知識も常識も、そこに愛があれば、何倍もの光を放つ。愛がなければ屁と同じ。

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美輪明宏 『紫の履歴書』 1

2015-04-20 12:38:06 | 




歌の心の世界に差別など無いのです。
歌が悲しんでいる心もわからず勝手に差別しているのは歌の心のわからない夢のない人間達なのです。歌は人間と異って天使のように自由なのです。歌は誰にも、どんな権威にも支配されません。
だから歌は人々から羨ましがられ、望まれるのでしょう。僕は一生涯、歌の心で、歌のように自由奔放な美の世界に生きていきたいと思います。
何者にも束縛されない一生。それは僕自身が歌になることなのでしょう。それでこそ、自由な歌の心がわかり、歌と一心同体となり、人々の内部に満ち、その上空を飛び翔ることが出来るのでしょう。金色に輝く歌の天使のように。

 (美輪明宏 『紫の履歴書』)


今更ではありますが、美輪さんの『紫の履歴書』を読んだのですよ。
美輪さんの本は『正負の法則』しか読んだことがなかったのですけれど、私はこの『紫の履歴書』の方が読んでいて楽しかった。図書館で借りたのだけど、文庫本買っちゃおうかしら。
これを読んで、美輪さんの舞台の「熱いけれど冷めている」あの感覚の理由が改めてよくわかったように思いました。
舞台の印象そのままの本。
言葉が綺麗で、一ページ前と言ってることが違うじゃん笑!な感じもいかにも美輪さんで。
うん、好きですねぇ、この本。

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