風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

対談と詩と音楽の夕べ「みみをすます」1 @TOKYO FM HALL(11月29日)

2019-12-21 00:26:29 | 




遅くなりましたが、先月行った谷川俊太郎さんの国際交流基金賞受賞記念イベント「対談と詩と音楽の夕べ『みみをすます』」についての覚書を。
このイベント、なんと無料でした

第一部(19:05-19:50)は、谷川さんと尾崎真理子さん(読売新聞社)による対談。
尾崎さんは、以前このブログでご紹介した『考える人』の谷川さん特集のインタビュアーの方で、谷川さんの『詩人なんて呼ばれて』(新潮社)の共著者の方でもあります。どちらもとても充実した内容だったので、今回お二人の対談を生で聞くことができて嬉しい
しかし前回の長島さんとの対談のときも思いましたが、谷川さんってこんなにトークが上手で面白いのに、”人間関係が苦手”でいらっしゃるんですねぇ。
以下、対談の一部を順不同に。時間がたってしまっているので記憶違いがあったらすみません・・・。

尾:この度は受賞おめでとうございます。
谷:語学は全くダメなので、こんな賞をいただいていいのかと迷いましたが・・・。昔〇〇さん(←聞き取れず)と初めてお会いしたときに「あなたは何と何ができるの?」と聞かれて、あの方は何ヶ国語も話される方なので、こちらは日本語しか話せないので恥ずかしくて。
尾:そんな風に仰いますが、私が谷川さんを知ったのは『ピーナッツ』『マザー・グースのうた』『あしながおじさん』といった翻訳が最初でした。
谷:子供達には「谷川さんって詩も書くんですねー!」なんて言われます(笑)。でもこういうのは国際交流というのとは違いますよ。
尾:この賞は、大岡信さんや武満徹さんも受賞されています。
谷:大岡や武満がもらってるなら自分もいただいちゃってもいいかなーと思って(笑)、いただくことにしました。

・・・

尾:谷川さんは大変長く活躍されているので、谷川さんの歴史は日本の国際交流の歴史とも重なります。
谷:僕は武満と親しかったから、彼の音楽が爆発的に世界に広がっていく過程を全部見てきました。羨ましかった。詩はそういう風にはいかないから。詩にはどうしても言語という壁があるけど、音楽にはそれがない。詩を外国の方に読んでいただくためには、まず翻訳が必要となる。
尾:谷川さんの詩は20数ヶ国語に翻訳され、世界中で愛されています。
谷:詩を外国語に訳すのはすごく難しい。今回の賞は翻訳家や通訳の方と一緒にいただいたものだと思っています。
尾:翻訳されたご自身の詩を読まれて違和感を覚えたことは。
谷:翻訳の案を読んで感覚的にこの訳は違うのではないか?と感じるときはあって、そういうとき翻訳者と実際に会って話せると意思が通じやすい。以前ウィリアム・エリオットと〇〇とビールを飲みながら気になるところを確認し合えたのはとてもよかった。
尾:谷川さんの詩を中国語に翻訳されている田原(でんげん、ティエンユアン)さんという方がいらっしゃいます。
谷:僕は中也が好きだから彼に中也の詩を訳してみたら?と勧めたことがあるんだけど、中也の詩は中国語に訳しにくいそうです。この人はとても自信家な人で、僕の「かっぱかっぱらった」を意地でも訳すと(笑)。訳したものを聴きましたけど、どこが“てにをは”なのかさっぱりわからない。聞いたらちゃんとあるらしいんですけどね。でもそういう風に頑張ってくれる人がいるというのは嬉しいことですよね。

・・・

尾:谷川さんは対詩や連詩も積極的にされています。観客は詩ができていく過程をライブで見られるので、とても人気がある企画です。今日も、私は進行の原稿を持っていますが、谷川さんは持たれていません。対詩や連詩について、谷川さんはどのようにお考えですか?
谷:対詩や連詩では必然的に詩の型が崩れるから、それが楽しいですね。
尾:詩人祭にも参加されています。ロッテルダム詩人祭などが有名ですが。
谷:以前、参加している詩人が女性の詩人を好きになって追いかけまわしたことがあって、詩人祭はそういう周囲の人間関係の方が面白い。
尾:谷川さんが追いかけられたことは?
谷:あったら自慢してます笑。僕は人と集まるのが嫌いで部屋にこもっちゃう方だけど、実際に行くと楽しい。
尾:ヨーロッパの詩人とアメリカの詩人の違いのようなものはありますか。
谷:国による違いよりも、その人個人による違いの方が大きい。
尾:谷川さんは長期間アメリカを旅されたことがありました。
谷:そのときネバダ州の山奥にゲーリー・スナイダーを訪ねて、彼の詩はもちろんいいんだけど、彼からはライフスタイルを多く学びました。普通の詩人のように都市部に住まずに山奥の小屋に住んだり、反権威の姿勢とか。あと、○○と旅していたときにヒッピーの祭りのようなものが近くでやっていて、森の中のプールで男女がすっ裸で騒いでるんです。僕は一人っ子だからそういうのに慣れてなくて遠慮したけど(笑)、ああいう雰囲気は好き。背広が苦手な人間だから。

・・・

尾:谷川さんはツイッターで作品を発表されていましたが、やめられた理由は「140字は長すぎる」と。
谷:それは冗談ですが(笑)、人と常に交流しているのは自分にはしんどい。

・・・

尾:谷川さんの詩は教科書に合っていると言われますが。
谷:誰がそんなこと言ったの(笑)
尾:今回の受賞理由の一つも、教科書に使われているというものですし。
谷:僕は平仮名を大切にしているからね。
尾:谷川さんは安野光雅さんや大岡信さんと『にほんご』という本も出されています。(詩の朗読)これは「日本語が世界の全てではない」という意味ですよね。
谷:そう。僕達は「こくご」じゃなく「にほんご」にしたかったの。でも「日本語」という教科書はまだできないね。

・・・

尾:『ピーナッツ』の全集が発売されることになりました。
谷:今では『ピーナッツ』の登場人物はみんな親戚みたいな感じがしています。
尾:谷川さんは「good grief!」を「やれやれ」と訳されました。村上春樹さんはそれを使われたのではないかと私は思っているんですが。
谷:それはわかりませんけど(苦笑)、予約がいっぱい入って驚いています。あれ、印税が2%なんですよ。2%というと結構儲かるなあ、と(笑)。

・・・

谷:僕は飽きやすいから、同じスタイルで書いてると、それに飽きてくる。でも新しいスタイルは意識的にできるものではなくて、無意識的に浮かぶもの。詩を作るときも、待つ。「夏の海についての詩を書いてください」と具体的に依頼されても、かえって上手く作れない。右脳ではなく左脳で作ってしまうから。一度そのことは忘れる。そして待つ。

・・・

尾:外国語を勉強しようという方へ何かアドバイスはありますか。
谷:翻訳のときは日本語の意味が大事。僕は日本語なら負けないと思って翻訳をしてきました。それは辞書の意味のことではもちろんなくて。
尾:語学の習得については。
谷:言語というものは一人で教科書と向き合って勉強するのではなく、大衆の中で覚えた方が早い。外国人の恋人がいると覚えるのが早いというのも、そういうことだと思う。

以上、第一部(のほんの一部…)についての覚書でした。
休憩後の第二部は、谷川賢作さんによる演奏と谷川さんによる詩の朗読でしたが、これが圧巻で。。。。。感想&覚書は後日アップいたします。

©The Japan Foundation

©The Japan Foundation
私も写ってる・・笑

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