いい国作ろう!「怒りのぶろぐ」

オール人力狙撃システム試作機

「Expected Burden view」について(ちょっと追加)

2010年08月26日 22時18分28秒 | 経済関連
最初に、自分が大それた批判などできる立場にない、ということを分かった上で、それでも尚批判を書いておくことにした。


これは興味深い見解ではあるものの、仕上がり具合としては、「やっつけ仕事」の感が否めない。

マネーと成長期待:物価の変動メカニズムを巡って:日本銀行

日銀内の若手論客をかき集めてきたのかな?(笑)
いや、全く知らないんですがね。そんなことは大した問題じゃないから別にいい。

読んだ率直な感想としては、学生さんのレポートみたいな感じ(今まで一度も読んだことがないんだけどw)がした。
何かを解明しようというスタンスではなく、どちらかと言えば「日銀ヴュー(笑)」強化を謳うべく、先に(言うべき)結論を決めてから書いたという意図が丸見えという感じである。本当かどうか知りたいとか、これってどうなんだろうかというような、素朴な疑問が根底には感じられないのである。残念ながら。執筆者の方々は多分一生懸命書いたものと思うけれども、論の展開としては寂しいものとなっている。
書き手の意思みたいなものって、やっぱり何となく伝わってくるものなんですね。文章には書いていないけれども、背後にあるものが滲んでくるんじゃないかな、と思いました。

んー、あと、また自慢みたいで申し訳ないんだけれど、ぼくへの挑戦かと思ったよ(笑)。自意識過剰だというのは分かってる。こんな場末のブログ如きに反応なんかするもんか、というのが普通ですから(笑)。だけど、扱ってる中身は記事に書いてきたようなものがあるんだよね。


潜在成長率の低下とか>3兆円で構造問題は解決できない

貨幣数量説の話とか>経済学界という病~事例2

ちょっと古くて06年なんですが、物価とプライマリーバランスの割引現在価値の話を書きました。
物価と財政規律(追加後)

論文中では、毎期の財政余剰と割引率ということになっていますけれども、意味合い的には同じものと思います。


多くのレンズを用意しよう、という著者さんには同意しますので、あまり一つの見方に固執することもないとは思いますが、あまりに都合よく「EB view」を全面に押し出してこられてもなあ、とは思いますね。
それ以前に明らかにするべきは、例えば日本においては「潜在成長率」と「インフレ率」の間には、諸外国にはない相関関係が見られる、ということなら、それがどうしてなのか、というところから出発しないとダメでしょう?

ハリセルの人の講義資料じゃないけど、アイスクリームと天候の話みたいなもので、そういうのは拙ブログでも過去に取り上げたわけなんですよ。

君は何を見たか

この記事中には、
『「何故比較するデータとして、『真夏日の日数』を選択したと思うか」という質問に、「アイスクリーム販売が天候に左右されると思ったので、ビールもそうかもしれないと思ったから」とか、普通に答えられるでしょう。』
と述べていたのだった。しかも、日本の「長期金利」と「合計特殊出生率」のグラフ形状が似た感じだから相関とか言うのか、という例を出していた。


こうして見てみると、日銀の非常に賢くて優秀で専門的な立場の著者さんたちが4名もおり、しかも有益な助言等をしたその他大勢も含めて、みんなが考えたりした結果が、ド素人の一人でしかないぼくのブログ記事に書いていたような程度のことしか考えつかないとか、あり得ないでしょう?

そういうレベルではなくて、もっと学術的なアプローチを頑張ってやるべきなんじゃありませんか?
なので、幻滅したというか、ガッカリしたわけなんですよ。まるで「学生さんレベルではありませんか」っていうのは、そういうことなのです。

おまけに、リファレンスがないのは、おかしくないですか?
恐らく先行研究は膨大にあるはずだろうし、もっと専門的な議論があるはずなのではありませんか?夏休みの宿題とかじゃないんですから、もうちょっと完成度を上げないと、日銀ペーパーとして出すのに恥ずかしくない程度にはならないのではありませんかね?

いくら、ぼくが日銀をつき崩すのに有効なのは「事実の積み重ね」と主張したからといって、まんま「事実を挙げてくる」なんて、とは思いました。

あれはあれで悪くないと思いますけれども、探求がそこで終わっておりますな。
だからこそ、余計に残念、という感じがするんですよね。

本気の本気で取り組むのであれば、「日本独自(日本にしか通用しない)の経済学理論」でも確立してみてはどうか。
前にも例示したけれど、ねずみと人間では、同じ哺乳類で似たような循環系を持つといっても、現実には結構違うわけで、そういうのを明らかにしてゆくのが学問なんじゃないですかね、ということ。

日銀でもこの程度では、お先真っ暗、では。



ちょっと追加ですけど(0時頃):

時間があまりなかったので、慌てて載せたんですが、書いておきたい。

本ペーパーの最後の脚注にもありましたけれど、rが低下するなら、物価Pを上げるにはSを小さくするということになるわけで、そうすると財政出動をするべき、ということになるんじゃないですかね。
それとも、Bを大きくするということなら、やはり「国債買入」をやって国債価格を上げる(利回り低下)ことを正当化できる、ってことを意味するように思うんですけど、どうなんでしょうか。

そういう「Pを上げる」手段を考えるのは、いけないことなのでしょうか?(笑)

まだまだ議論すべき部分は、いくつもありそうですけど。




為替介入の話の補足ですけれど

2010年08月26日 12時24分36秒 | 経済関連
投機的なファンドの傍若無人ぶりというのを「(助さん格さん)懲らしめてやりなさい」的にやるというつもりなら、勿論黙っているに決まってる。少なくとも私が責任者であれば、必ずそうやる。
切るか切られるか、というような勝負ならば、手の内なんか教えるわけがない。無言でバッサリやる。だから、介入する場合であっても、「影の投資家」としてしか行動しない。投機筋がどんなに買っても買っても、ある壁を突破できないという不気味さを与える。そうじゃないと意味がない。相手にとって「よく分からない」という存在じゃなければ、恐怖したりはしない。この恐怖こそが、投機を抑制するはずなのである。投機筋にとっての「リスク」として存在する意味は、正体不明で計算の埒外という不気味さである。極端に言えば、何をやってくるか掴めない、いつどの程度でやってくるかというような行動パターンも読めない、といった存在でなければならない。


現状の円高は、そういう投機筋の仕掛けというだけではないはずだ。円買いのプレイヤーは大勢いる、ということだけに過ぎない。ファンド勢はそのうちの一部でしかないのではないか。例えば、日本の輸出企業だけ考えても、円買いを行ってしまうことは多いはずである。更に、中国は資産多様化を目指してJGB購入額を増額しているのではないか、という観測が流れたりした。外貨準備の欧米向けが一部日本円に振り向けられるだけで、それなりの影響が出るだろう。
日本国内の一般の個人投資家たちでみても、以前に流行ったような外貨建・外債投信への資金流入が細るだけでも、相対的に円高に傾くことになるだろう。外貨買い資金の減少を意味するからである。毎月配当のような投信であると、配当原資分を必ず円買いに振り向けなければならないので、投信残高が減る場合には円買いが優勢ということになってしまうだろう。


要するに、円買い要因はたくさんあり、円売り要因の減少なんかも相まって、円高に傾いてしまう、ということはある。そういう流れを読んで、相場に金を張ってくるファンドがいても不思議ではなく、必ずしもそうしたファンド勢の巨額マネーが引き起こしている現象だと短絡的に断ずることもできないだろう。

昨日の記事でちょっと触れたけど、為替介入に関する参考記事を追加しておきます。

09年1月>現時点で日本は円の減価を選択すべきか

09年2月>経済政策についての一考察

10年3月>財政破綻を危惧する伊藤元重東大教授の論説は学術的に正しいか?