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エネルギー政策を再考する~対策編

2012年05月27日 18時35分35秒 | 社会全般
続きです。
具体的な対策を書いてみます。

ここ数日で触れてきましたが、個々の需要家を基本的に「自家発電・自家消費」型に変えてゆくことを目指します。
各家庭には、コージェネなどの給湯・暖房・発電ユニット、ヒートポンプ、燃料電池、太陽光パネル、蓄電池などの組み合わせでエネルギー効率を高めることとします。
ここに、付加的に電気自動車ないしハイブリッド車も考えるものとします。


今までの電力会社の発電方式ですと、こんな感じでした。
 ・天然ガス燃やす → 電気作る → 使う
 ・自家用車 ガソリン燃やす
当初100のエネルギー投入で38しか使えない、ということでしたね。ここに電気自動車を繋ぐことができたとしても、ロスは更に増加します。

家庭(使う場所)で発電できるとロスが大幅に減少します。
 ・天然ガス燃やす → 給湯、暖房、発電 →使う
 ・太陽光パネル 発電 →使う、余剰は電気自動車へ

少なくとも、電力会社で天然ガスを燃やして発電し、それを各家庭で使うよりも、効率が格段に向上します。
太陽光パネルは、発電量が不安定だ、安定供給に不利だ、電力会社の設備に負荷がかかって設備費用が増える、などといった批判が数々出されていましたね。

買取は値段が高すぎて、パネルのない家庭に上乗せされるのはおかしい、とかも言われたりしました。これは、多く発電できても、うまく利用する道筋がなかったから、です。
けれど、家庭でのエネルギー消費は、電力ばかりではないのですね。給湯も暖房も自家用車のガソリンも含めて考える必要があるのです。これらトータルで「化石燃料消費が減ればいい」ということなのです。余った電力があるなら、自動車の走行エネルギーに変換できれば、それでいいのです。それでも余るなら、他の必要な人に提供できる仕組みさえあればいい、ということで、昨日書いた蓄電所というのがあるといいんじゃないのかな、ということです。

家庭のエネルギー消費構造(自動車燃料は含まない)を見ると、次のようになっています(11年エネルギー白書より一部追加)。

     1973年      2009年
電力   8535(28.2)   19280(50.5)
都市ガス 5145(17.0)   7865(20.6)
LPガス  5267(17.4)   3894(10.2)
灯油   9474(31.3)   6720(17.6)
石炭他  1846(6.1)    420(1.1)
(単位は10^6J、 カッコ内は%)

特徴的なのは、電力が大幅に増えた、ということです。暖房用と見られる灯油の使用は減少し、石炭などのその他と共に減少したのです。ここに電力増加の要因があるものと思われます。電化が進んだこと、電力消費機器が増加したこと、なども関係しているかもしれません。ガス全体としては、占有率は減少していますが、使用量が減ったわけではない、ということで、むしろ増加してます(特に都市ガス)。

もう一度おさらいすると、同じエネルギー消費をする場合、電力はロスが大きく6割以上が失われる、ということでした。よって、家庭用エネルギーの電力占有率をゼロにする、というのを目指せばいい、ということになります。これが、自家発電・自家消費の促進ということです。しかも、暖房用灯油や天然ガスを含めた、トータルエネルギー管理、ということになってゆくということです。


また、再生可能エネルギーの中で、太陽光や風力というのは、不安定だからダメなんだ、と言われてきました。これを逆手に取るのが、自家消費促進ということになります。

最大のメリットは、蓄電さえできればいい、蓄電できれば「安定供給」に早変わりするはず、ということなのです。
家庭や地域での発電ユニットで消費し切れない分があったら、自動車の走行エネルギーに変えてあげればいいじゃありませんか、ということですね。これまでの電力会社の大規模発電システムでは、ロスが非常に大きかったわけです。これを、もっと手近な蓄電システムとして利用できるようにしてやれば、再生可能エネルギーの活用範囲は広がるはず、ということです。


◎新規発電者=需要者としても利用
・各家庭の小口電力+電気(ハイブリッド)自動車
・コンビニなどの小規模店舗
・公共施設(役所、学校、図書館、ホール、美術館など)
・オフィスビル
・病院や老介護関連施設
・マンションや集合住宅
・ホテルなどの宿泊施設
・温泉施設、銭湯やサウナ
・スポーツジム
・工場、ゴミ焼却場などからの不規則な電力供給
・水力、風力、太陽光、地熱、火力等々の事業者


これまでは、電力供給者には、規制が多く存在してきて、特に一定量以上を安定供給する義務などを課されてきたのではないかと思います。そうだとすると、単に発電して「余ったから、そっちに流すよ」というような使い方が難しくなってしまったであろうと思うわけです。

これを解消する方向に行けばいいのではないか、と。みんなで発電機会を逃さず使えばいいのです。暖房や給湯の必要な場所は、とても多いのです。ホテルなんかもそうですね。集積度の高い商業地域などでは、ビルやホテルやデパートが共同で、冷暖房・給湯・発電システムを運営し、余った電力がもしあれば、それを需要家に流すか蓄電できるシステムさえあればいいわけですから。
ジムとか銭湯なんかでも給湯と同時に発電して売電できるなり、駐車スペースに無料ないし有料充電器設置で利用者サービスとして付加できるようになるはずです。電力需給が余裕が大きい時には、「今ならタイムサービス開始です!」といった利用者宛のメール配信などを行って、充電を促進させることも不可能ではないのでは。

つまり、これまでガソリン大量消費で走っていた自家用車が、電力供給の巨大なバッファーとなり得るはず、ということです。余ってる時には、充電価格を下げると充電が促進されるはずだから、ということです。
また、電力の巨大消費地の近くに風力発電所などが存在してないと、余剰発電が無駄になる、といったことも解消(縮小)されうると思えます。


特に寒冷地域では、暖房の石油消費などが増えるわけですから、その発電機会を最大限に活かすべき。電気自動車はもの凄く寒いはずなので、内燃機関併用(つまりハイブリッド)でないと辛いかもしれないですから、そういう地域では純粋な電気自動車よりハイブリッド優先ということになるかもしれないです。
温暖地域であれば、給湯が主で暖房の利用は少ないよ、ということがあって、あまり発電機会が得られない、という事情がないわけでもないかもしれません。コスト計算をやってもらって、よく検討してもらうとよいのでは。積雪がないなら、電気スクーターや電気自動車が有利のはずだし、パネルの発電効率もよいはず(凍結しないから)だし、地域特性を考えてもらうとよいでしょう。


少なくとも、太陽光発電の発電量が増加し、家庭用電力をまかなえるくらいであれば、ピークカット効果が得られることは間違いないので、大規模電力会社が最大需要をカバーする為に持っている巨大な発電施設を維持するコストは削減できるでしょう。その上、昼間電力需要がピークになることはほぼ確実ですから、余剰分を回せるのも「理にかなう」はずです。揚水発電を使わなくなる可能性大、ということですね。ただでさえ発電によるロスが大きいのに、それに加え揚水でロスするわけですから、ざっとで言うと100のエネルギー投入で使用電力としては25まで下がることになるでしょう。これをなくせるだけでも、かなりのエネルギー効率改善ということです。

充電設備なり蓄電施設なりの整備さえできるなら、再生可能エネルギー利用はいくらでも考えられるでしょう。都市交通として電化バスや路面電車などの電力利用にも回せるし、カセット式バッテリーで良いなら、余剰時にどんどん蓄電すればいいだけですし。価格の調節機能が働きやすくなるはず、ということです。


それには、発電者を自由に増やすことと、供給できる仕組みを整えることです。安定供給ができなくなったらどうするんだ、という意見が出るかもしれませんが、それも考え方次第では。
前に書いたように、蓄電所毎に一定規模以上の供給事業者にはバックアップ容量を求めるようにすればよいのでは。余力のある事業者は、少ない事業者にその枠を売ればいいのです。
これまのような大規模電力会社は、大型の水力や石炭などの火力発電で競争力は維持できるはずです。そういう大規模会社には「バックアップ枠」を1週間分なり月間分なりを販売できるようにすればいいのです。枠の需要が高いなら、枠の売買価格は上がるから、バックアップ施設を整備・維持しなければならない大規模電力会社への支払いは増えるし、バックアップの必要度が乏しいなら、各事業者が自前でやれてる=大規模電力会社の無駄な施設を維持する必然性がない、ということになるわけですから。火力の出力を落とすなりで対応すればいい、ということでもいいはずです。ここでも価格による調節機構が働くようにすることで、無駄を減らせるはずです。

不安定な供給の小規模事業者が成り立たないとか参入できないのは、こうした供給力維持の制限が大きいと思われ、事業者が数十とか数百とかあれば、その全体のバックアップ枠というのは「調整された量」として出てくるはずであり、そうするとこれまでのような無駄は減るはずです(実需の取引者だけの市場とすれば公正な価格形成が行われるものと期待できます)。


従って、冷暖房、給湯、発電、蓄電、交通運輸、などの全体でエネルギー消費量を最小化し効率化できるシステムを採用すべき、ということです。電力会社の在り方そのものの変革が必要ということです。原発単体の問題ではありません。
その為には、電力会社などといった上流の方だけではなく、下流(需要)側である末端の発電強化が必要である、ということです。

再生可能エネルギーだけで電力需要は賄えない、などといった反論は、全く意味をなさない、ということでもあります。

誰もそんなことは言ってない(笑)。


効率の高い方法を選べ、ただそれだけです。



エネルギー政策を再考する~2

2012年05月27日 16時52分42秒 | 社会全般
いつも不勉強で申し訳ない。エネルギー政策に関する議論というのは、一般にはあまり知られていない、というだけで、現状での最適解のようなものはおおよそ見えているのでしょう。それは、専門家の間ではほぼ常識のようなもので、当方のような一般素人がただ単に知らなかったというだけなのだろう、ということです。


書いてゆく中身は、単に自分の思考の整理の為のものです。周回遅れもいいところの平凡な内容なので、悪しからず。


1)電力だけで見てはいけない

これまで、原発が「いる」か「いらない」かという話ばかりに目を奪われてしまい、もっと広く見ていなかった。電気自動車のことについても、熱効率が良いからというような気がしたのだが、既存の電力会社ベースでしか考えてこなかった。これが出発点からして、誤りだった。

原子力がなくなったらどうするんだ、というような短絡的意見があるが、それは電力だけ見るからである。10年度版エネルギー白書では、原子力の1次エネルギーに占める割合が11.6%でしかない。これを代替するのは、不可能ではない。それに、水力3.2%+新エネルギー(太陽光等)3.1%と比較しても、到達不可能というレベルではなく、存外開きは小さいとも言える。


2)既存電力会社はエネルギー損失が小さくない

電力として利用する場合、投入されるエネルギー量は倍以上も多い。簡単に言えば、石炭、石油、天然ガスなどで発電されると、電力にするだけで6割が失われる。約38%しか利用できない。これが各家庭などに送電される途中でも、送電ロスによって更に失われる。エネルギー効率(利用率)として見れば、電力はそもそも「非効率」なものである、ということだ。


3)発電エネルギーの3割が原子力

事業用発電に投入される原子力とそれ以外(天然ガス、石油、石炭、水力、地熱等)の比率で見ると、30%が原子力である。そして、面白いことに、家庭での電力消費比率が、同じく約3割(31.3%)となっているのだ。これはどういうことか?
単純に家庭の消費電力が全部太陽光などで賄われた場合、原子力は必要なくなる、ということだ。
民生業務用(36.9%)と産業用(31.8%)の電力をこれまでの電力会社が供給すればいいだけ、ということになる。家庭部門の電力が規制されているのは、裏を返せば、「原発と電力会社を支える為」だけ、ということになる。経団連や経済同友会や商工会議所のトップがみんな揃って原発が必要だ、というのであれば、家庭の電力を全部既存電力会社以外にしても、きっと原発維持の金を払い続けることだろう。

◎従来
 家庭部門――既存の原発や電力事業(利益)を支える
 産業・業務部門――電力自由化の恩恵

◎今後
 家庭部門――自家発電・自家消費・電力自由化の恩恵
 産業・業務部門――既存の原発や電力事業(利益)を支える

原発に大賛成の経済界の奴らが支えればいいだけ。簡単ですよね?(笑)


4)化石エネルギー依存度は高い

電力ばかりではないことが重要。自動車のガソリンなども含まれる、ということ。
で、ざっとの割合でいうと、石油43%、石炭22%、天然ガス(+LPガス)17%、ということで、82%となっている。これをいかに減らしてゆけるか、というのが求められる。原発を倍に増やしても、消費エネルギー量として使えるのは4割にも満たないのだから、あまり効果的でもない。
エネルギー消費割合では、次のようになっている。

  産業部門  42.8%
  業務部門  19.5%
  家庭部門  14.2%
  運輸部門  23.6%

産業界は、確かにエネルギー効率を高める努力を進めてきたし、消費量が実際に減っている。なので、今後の削減余地を探すなら、家庭部門と運輸部門ということになるわけである(業務部門も減らせばいいとは思うが、とりあえず)。
運輸には、商業用の貨物もあるが、大半が家庭用の自家用乗用車のガソリン消費なのである。ここを減らしてゆこう、というのは確かに必要。コスト面でも、効果が期待できる。電力消費に似ているが、家庭用と自家用車でざっと3分の1くらいを占める、ということである。


具体的な対策については、次の記事で。