小児漢方探求

漢方医学の魅力に取りつかれた小児科医です.学会やネットで得た情報や、最近読んだ本の感想を書き留めました(本棚3)。

井齋 偉矢(いさい ひでや) 先生の著書2冊

2015年02月12日 08時17分19秒 | 漢方
 近日、この先生の講演会があることを知り、予習がてら読んでみました。

■ 「西洋医が教える、本当は速効で治る漢方」(SBクリエイティブ、2014年発行)
■ 「西洋医がすすめる、カラダが瞬時に蘇るサイエンス漢方 」(SBクリエイティブ、2014年発行)

 井齋氏は「サイエンス漢方処方研究会」の主催者の一人で、漢方理論を現代医学的に解釈するという手法で人気を博している(?)医師です。もともとは外科医で臓器移植が専門でした。
 「サイエンス漢方」というフレーズに、やや怪しさを感じながら・・・

 ひと言で云うと「漢方に対するハードルを限りなく低くしてくれる本」ですね。
 とにかくわかりやすい。1日で読めてしまう漢方本は珍しい。

 漢方理論を封印して現代医学の言葉に置き換えての解説なので、スッと頭に入り込みます。
 今まで捉えどころがなくイメージしにくかった漢方理論を、イメージできるようになるのです。
 例えば「瘀血」を「微小循環障害」へ、柴胡剤の作用を「抗炎症」へ。
 それから、私の苦手な中医学の「陰陽論」「五行論」は後付けされたものであり、処方を考える際に必須のものではない、とも。

 柴胡剤は傷寒論の時代には急性疾患が体表(表)から体内(裏)に入り込む途中(半表半裏)の病態に有効な方剤ですが、なぜ効くのかずっと?でした。
 そこに「柴胡剤は抗炎症薬」と言い切ってしまう気っぷの良さ。
 そうか・・・抗菌薬(=抗生物質)は菌をやっつけるけど、菌が起こした体の炎症を抑える力はない、そこは人体の免疫力(自然治癒力)に頼っているのが西洋医学の限界。しかし漢方薬は、抗菌作用ではなく人体に備わる免疫力を強化し、起きた炎症をも沈静化する効果があるので「体が楽になる」「治りが早い」という効果が実感できるということ。

 なるほど!

 一方の西洋医学ではどうでしょうか。
 「抗炎症薬」として有名なのは副腎皮質ホルモン(いわゆるステロイド)とNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)。
 ところが、この2つの薬は体の免疫力を低下させてしまうという欠点があります。
 衰弱している肺炎の患者さんにステロイドを使用すると、肺炎が悪化する可能性があるのです。
 というわけで、西洋医学では炎症に対して実は何もしていません。患者さんの自然治癒力に任せているのが現状です。

 漢方薬は免疫を高める一方で、過剰な炎症が起こったときはそれを鎮める働きがあります。さらに、炎症で障害された組織の修復も促してくれるのです。
 ほんと、至れり尽くせりですね。

 目から鱗だったのが「日本で使う生薬量は、中国の1/3と少ない」理由。
 漢方専門家から「中国の生薬は品質管理が甘いので、日本より多く使わないと効果が期待できない」という裏話を聞いてなんとなく納得していた私。
 この本では「昔から生薬は輸入品だったので、最低どのくらいの量で効果が期待できるかを検討した涙ぐましい先人の努力の結果」という史実で説明しています。

 それから、漢方薬を始めてどれくらいで効果が得られるかを、1~2週間とか6ヶ月間とか、具体的な期間で示しているところが新鮮であり、役立ちますね。
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