農文協、2005年発行
著者:三浦於菟、福生吉裕、波平恵美子
~Amazonの紹介文~
「無病」なんて高望みはしない。「未病」でOK。「未病」とは病気の一歩手前の状態。「未病」が生活習慣病を防ぐカギになる。東洋医学、西洋医学、日本文化の視点から、既存の健康観へ警鐘を鳴らし、「未病」という新たな健康観、暮らしのあり方を提案する。
三浦於菟先生は東邦大学漢方講座の教授であり日本漢方界の重鎮です(キャラはくだけていて講演を聞くとダジャレ/オヤジギャグ連発)。
「症状はないが検査値は異常」という状態を「未病」と名付けて、3人の分野の異なる(東洋医学・生活習慣病・文化人類学)専門家が意見を述べる構成となっています。
言葉の定義づけ議論は建前論のようであまり面白くありませんでした。
対談や東洋医学の具体的養生法は興味深く読ませていただきました。
「今日からはじめる養生法ー実践編」では、なんと三浦先生自らがモデルとなり裸になって体操しています。
文化人類学者の波平先生の発言は残り二人の医療者と異なり、目から鱗が落ちるモノがありました。
医療が今より不十分な時代は、日本人は今より「自分の体を知る」ことに長けていた。トイレに行けなくなったら「葬式の準備をしてくれ」と言った。食事が摂れなくなるまで働き、動けなくなったら短くて2週間、長くても2ヶ月で死んだので寝たきり老人は希だった、等々。
現在の日本では、病人が食べられなっても胃にチューブを入れられて栄養剤を流し込まれ、生かされ続けます。
どちらが幸せなのでしょうか?
ヨーロッパでは食事が摂れなくても本人の意志がなければチューブは入れないそうです。無理やり入れることは「人権侵害」という概念が定着しているとのこと。かの国々では寝たきり老人が少ない理由の一つと指摘されています。
<メモ>
私自身のための備忘録です。
□ 『黄帝内経』
前漢~後漢時代、約2000年前の書物。
「内経」は科学問答集という意味。黄帝と岐伯という森羅万象なんでも知っている博士との問答集が24巻の書物として残っている。
□ 国民皆保険の歴史
1961年発効。日本人自らが作った制度ではなく、アメリカのGHQのアドバイスにより作られたもの。しかしアメリカには未だに国民皆保険はない。
□ 未病の推奨する食事
大豆を多く含む食品を主食とし、赤ワインを飲んで魚料理を食べるのがお勧め。
大豆:レシチンというリン脂質を多く含み、リン脂質は細胞膜の構成物であり細胞を守るために必要であり、神経伝達物質であるアセチルコリンの材料にもなる。イソフラボンは血圧を下げるように作用し、また骨粗鬆症の予防にもなる。ゲニスチンは乳癌の予防と関係している。
赤ワイン:ポリフェノールは抗酸化作用を有する(フレンチ・パラドックス)。
魚:EPA入り。
□ 家族の健康を見守るのは主婦の仕事
昭和の田舎の家庭では、毎朝ほぼ同じ内容の食事を食べていた。すると、体の異変に気づきやすい。子どもが好きなモノを残すと「おかしい」と考えて対処するのがふつうだった。
今は他人のことを考える余裕のある人が家庭にいなくなった。
長生きしても幸福になれない。
中途半端に医療があるものだから、病人でいる期間が長くなりがちである。
□ 深呼吸の効用
深呼吸をすると副交感神経が働き、「こころ」を安定させリラックスさせる。精神を統一するとき、何事かを行うとき、感情が不安定なときなど様々なときに、意識して呼吸をゆっくりすることを心がけるとよい。
呼吸法の基本の一つを紹介;
① 息を吐くことより開始する。
② 吐くときは口からゆっくり吐く。
③ 吸うときは鼻から吸う。吐くときより時間は短くてよい。
④ 呼気と吸気は連続して切れ目なく行う。
□ 実証と虚証
実証とは虚証の反対、つまり生命力が充実している状態ではない。実証とは病気を引き起こす有害物である邪が盛んな状態を云う。つまり、体は正常で体力はあるが、邪に侵された、あるいは邪が存在するために病気となった状態を云う。
実証の特徴は、症状が強いこと、激しいこと。
巨匠の特徴は、症状が穏やかなこと。
ちょっとしたことですぐに汗が出てしまう、寝汗をかくなどは虚証の人に多い。寝汗は基本的には体の調子が悪いと出るもの。
痛いところをさすられると気持ちがよいのは虚証の人、触られるのはイヤ、押されると痛いなどは実証の傾向。
西洋薬は実証向きの強い薬が多いので虚証の人は副作用が出やすく注意が必要。
□ 虚実と病気
病気の発生する3パターン;
①「正気」の低下
東洋医学では生命力・抵抗力のことを「正気(せいき)」と呼ぶ。正気が不足した結果病気になった状態を「虚証」という。
②「邪」の存在
東洋医学では病気を発生させる有害物を「邪(じゃ)」と呼ぶ。西洋医学でいえば細菌やウイルス、癌に相当する。正気が十分あるにもかかわらず病気になった状態を「実証」という。実証とは正常に働く力はあるが、邪に邪魔されて働きが妨げられた状態である。
③「正気」の低下&「邪」の存在
①+②の病態。実際の病気ではこのパターンが多い。正気が十分であれば邪を跳ね返すことができるが、低下していれば邪に侵されて病気になってしまう。東洋医学では「虚実錯雑証」(虚と実が同時に存在する状態)と呼ぶ。
以上の視点から病気の予防を考えると「邪になるものを避け、正気を強める」ことに尽きる。
□ 「カゼは万病の元」の真意
このカゼは感冒ではなく風邪(ふうじゃ)であり、季節の変わり目の風向きの変化を表している。つまり、冬は北風が、春になると東風が多くなり、北から東に風向きが変化することになる。このときに病気が起こりやすいから注意しようというのが本来の意味。東洋医学では自然現象が病気を引き起こすと考えたことによる。
□ 「痰・湿・飲」の違い
気血水の中の水分の異常貯留を痰(たん)・湿(しつ)・飲(いん)と呼ぶ。
痰とはやまいだれの中に火があることよりわかるように、水に熱を加え濃縮した状態、つまり粘りけのある水分を云う。咳とともに出る痰とは、本来異常水分の痰から出た言葉である。陰戸は鼻水のように水溶性のもの、湿とは痰と飲の中間の粘りを持ったものを云う。
□ 熱証と寒証~便秘を例に~
東洋医学では体の表面や内部が冷えている状態を寒証、熱を持っている状態を熱証と捉える。
寒証には体を温める作用の薬(温性薬)、熱証には体を冷やす薬(清熱薬)で対応するが、これを誤ると体調が悪化し副作用として現れる。
便秘は基本的にお腹が熱を持った状態である。冷えの便秘もあるが比較的少なく、このときには腸がモコモコ動く感じがする。
便秘薬は西洋医学薬を含めて体を冷やす薬が多い。これを冷えの便秘に使用すると少量でも下痢になってしまう。
著者:三浦於菟、福生吉裕、波平恵美子
~Amazonの紹介文~
「無病」なんて高望みはしない。「未病」でOK。「未病」とは病気の一歩手前の状態。「未病」が生活習慣病を防ぐカギになる。東洋医学、西洋医学、日本文化の視点から、既存の健康観へ警鐘を鳴らし、「未病」という新たな健康観、暮らしのあり方を提案する。
三浦於菟先生は東邦大学漢方講座の教授であり日本漢方界の重鎮です(キャラはくだけていて講演を聞くとダジャレ/オヤジギャグ連発)。
「症状はないが検査値は異常」という状態を「未病」と名付けて、3人の分野の異なる(東洋医学・生活習慣病・文化人類学)専門家が意見を述べる構成となっています。
言葉の定義づけ議論は建前論のようであまり面白くありませんでした。
対談や東洋医学の具体的養生法は興味深く読ませていただきました。
「今日からはじめる養生法ー実践編」では、なんと三浦先生自らがモデルとなり裸になって体操しています。
文化人類学者の波平先生の発言は残り二人の医療者と異なり、目から鱗が落ちるモノがありました。
医療が今より不十分な時代は、日本人は今より「自分の体を知る」ことに長けていた。トイレに行けなくなったら「葬式の準備をしてくれ」と言った。食事が摂れなくなるまで働き、動けなくなったら短くて2週間、長くても2ヶ月で死んだので寝たきり老人は希だった、等々。
現在の日本では、病人が食べられなっても胃にチューブを入れられて栄養剤を流し込まれ、生かされ続けます。
どちらが幸せなのでしょうか?
ヨーロッパでは食事が摂れなくても本人の意志がなければチューブは入れないそうです。無理やり入れることは「人権侵害」という概念が定着しているとのこと。かの国々では寝たきり老人が少ない理由の一つと指摘されています。
<メモ>
私自身のための備忘録です。
□ 『黄帝内経』
前漢~後漢時代、約2000年前の書物。
「内経」は科学問答集という意味。黄帝と岐伯という森羅万象なんでも知っている博士との問答集が24巻の書物として残っている。
□ 国民皆保険の歴史
1961年発効。日本人自らが作った制度ではなく、アメリカのGHQのアドバイスにより作られたもの。しかしアメリカには未だに国民皆保険はない。
□ 未病の推奨する食事
大豆を多く含む食品を主食とし、赤ワインを飲んで魚料理を食べるのがお勧め。
大豆:レシチンというリン脂質を多く含み、リン脂質は細胞膜の構成物であり細胞を守るために必要であり、神経伝達物質であるアセチルコリンの材料にもなる。イソフラボンは血圧を下げるように作用し、また骨粗鬆症の予防にもなる。ゲニスチンは乳癌の予防と関係している。
赤ワイン:ポリフェノールは抗酸化作用を有する(フレンチ・パラドックス)。
魚:EPA入り。
□ 家族の健康を見守るのは主婦の仕事
昭和の田舎の家庭では、毎朝ほぼ同じ内容の食事を食べていた。すると、体の異変に気づきやすい。子どもが好きなモノを残すと「おかしい」と考えて対処するのがふつうだった。
今は他人のことを考える余裕のある人が家庭にいなくなった。
長生きしても幸福になれない。
中途半端に医療があるものだから、病人でいる期間が長くなりがちである。
□ 深呼吸の効用
深呼吸をすると副交感神経が働き、「こころ」を安定させリラックスさせる。精神を統一するとき、何事かを行うとき、感情が不安定なときなど様々なときに、意識して呼吸をゆっくりすることを心がけるとよい。
呼吸法の基本の一つを紹介;
① 息を吐くことより開始する。
② 吐くときは口からゆっくり吐く。
③ 吸うときは鼻から吸う。吐くときより時間は短くてよい。
④ 呼気と吸気は連続して切れ目なく行う。
□ 実証と虚証
実証とは虚証の反対、つまり生命力が充実している状態ではない。実証とは病気を引き起こす有害物である邪が盛んな状態を云う。つまり、体は正常で体力はあるが、邪に侵された、あるいは邪が存在するために病気となった状態を云う。
実証の特徴は、症状が強いこと、激しいこと。
巨匠の特徴は、症状が穏やかなこと。
ちょっとしたことですぐに汗が出てしまう、寝汗をかくなどは虚証の人に多い。寝汗は基本的には体の調子が悪いと出るもの。
痛いところをさすられると気持ちがよいのは虚証の人、触られるのはイヤ、押されると痛いなどは実証の傾向。
西洋薬は実証向きの強い薬が多いので虚証の人は副作用が出やすく注意が必要。
□ 虚実と病気
病気の発生する3パターン;
①「正気」の低下
東洋医学では生命力・抵抗力のことを「正気(せいき)」と呼ぶ。正気が不足した結果病気になった状態を「虚証」という。
②「邪」の存在
東洋医学では病気を発生させる有害物を「邪(じゃ)」と呼ぶ。西洋医学でいえば細菌やウイルス、癌に相当する。正気が十分あるにもかかわらず病気になった状態を「実証」という。実証とは正常に働く力はあるが、邪に邪魔されて働きが妨げられた状態である。
③「正気」の低下&「邪」の存在
①+②の病態。実際の病気ではこのパターンが多い。正気が十分であれば邪を跳ね返すことができるが、低下していれば邪に侵されて病気になってしまう。東洋医学では「虚実錯雑証」(虚と実が同時に存在する状態)と呼ぶ。
以上の視点から病気の予防を考えると「邪になるものを避け、正気を強める」ことに尽きる。
□ 「カゼは万病の元」の真意
このカゼは感冒ではなく風邪(ふうじゃ)であり、季節の変わり目の風向きの変化を表している。つまり、冬は北風が、春になると東風が多くなり、北から東に風向きが変化することになる。このときに病気が起こりやすいから注意しようというのが本来の意味。東洋医学では自然現象が病気を引き起こすと考えたことによる。
□ 「痰・湿・飲」の違い
気血水の中の水分の異常貯留を痰(たん)・湿(しつ)・飲(いん)と呼ぶ。
痰とはやまいだれの中に火があることよりわかるように、水に熱を加え濃縮した状態、つまり粘りけのある水分を云う。咳とともに出る痰とは、本来異常水分の痰から出た言葉である。陰戸は鼻水のように水溶性のもの、湿とは痰と飲の中間の粘りを持ったものを云う。
□ 熱証と寒証~便秘を例に~
東洋医学では体の表面や内部が冷えている状態を寒証、熱を持っている状態を熱証と捉える。
寒証には体を温める作用の薬(温性薬)、熱証には体を冷やす薬(清熱薬)で対応するが、これを誤ると体調が悪化し副作用として現れる。
便秘は基本的にお腹が熱を持った状態である。冷えの便秘もあるが比較的少なく、このときには腸がモコモコ動く感じがする。
便秘薬は西洋医学薬を含めて体を冷やす薬が多い。これを冷えの便秘に使用すると少量でも下痢になってしまう。