喜多敏明Dr.の未病シリーズ、今回は「花粉症」を視聴しました。
すでに患者さんに漢方を多用している私ですが、
それでも勉強になりました。
未病シリーズなので、症状だけでなく、アレルギー体質を変える養生についても触れています。
その中で「乾布摩擦」が登場して驚きました。
私はアレルギー専門医なので、
今から四半世紀前までは、重症小児喘息患者は学校併設の総合病院小児科に入院治療していた時代を知っています。
そこで当たり前のように行われていた健康づくりが乾布摩擦です。
しかしそのエビデンスが不十分であり、
上半身裸になることも時代に逆行しており、
今では姿を消しました。
そして今、乾布摩擦は漢方医学由来であることを知りました。
その理論的背景は「肺(体の表面=皮膚)に刺激を与えて免疫力を活性化する」というもの。
花粉症を気血水で解説し、
免疫力を五臓論(肺・腎)で解説している今回の内容も、
私には腑に落ちました。
西洋医学の概念「アレルギー性炎症」は漢方医学では「冷え・水滞」である、
アレルギー性炎症=寒証
化膿性炎症=熱証
とわかりやすく対比して見せてくれました。
講義メモを備忘録として残しておきます。
▶ 花粉症の概要
アレルギー体質+アレルゲン(花粉)
→ アレルギー炎症
→ 症状:鼻(くしゃみ、鼻汁)、眼結膜(かゆみ、充血)
漢方医学的に考えると、
アレルギー炎症=病気
アレルギー体質=未病
▶ 慢性鼻炎の病態を二次元グラフで位置づける
(化膿性炎症)
⇧
辛夷清肺湯(104)
荊芥連翹湯(50)
(冷え・水滞あり)⇦ ⇨(冷え・水滞なし)
小青竜湯(19)
麻黄附子細辛湯(127)
⇩
(アレルギー性炎症)
▶ “アレルギー炎症“は“冷え・水滞“
・炎症(アレルギーを含)=免疫系の反応
・免疫系は漢方医学的には肺と腎が関係する。
・アレルギー性炎症(西洋医学)は冷え・水滞(漢方医学)である。
・鼻汁は透明・水様である。
・小青竜湯(19)と麻黄附子細辛湯(127)は冷え・水滞を改善することにより症状をやわらげる。
・「冷え・水滞」は漢方理論、すなわち仮説であるが、実際に小青竜湯などが有効であることから実証されている。
▶ “化膿性炎症”は“熱”
・化膿性(感染性)炎症は熱証であり冷え・水滞はない。
・化膿性炎症による鼻炎には辛夷清肺湯(104)や荊芥連翹湯(50)が使用される。
・鼻汁は黄色・粘稠である。
▶ 鼻炎に“養生”が必要な理由
・小青竜湯(19)・麻黄附子細辛湯(127)には麻黄という生薬が入っており、
急性期・有症状期は問題ないが、長期に使用することは好ましくない。
・麻黄を使い続けないために“養生”が必要になる。
・鼻炎の病態には薬>養生、鼻炎の体質改善には養生>薬が重視される。
▶ 五臓理論上、免疫をつかさどるのは肺と腎
・漢方医学が確立した2000年前には免疫学はなかった、当時考えた仮説が五臓論。
▶ 肺の陽気(衛気)の働き
1.表を温めて、防衛する。
・表とは、皮膚・上気道(鼻〜のど)・下気道(気管〜肺)を含む。
2.表に水を巡らせる。
・リンパの流れ、発汗の調節。
▶ 肺の陽虚
1.体表面の冷え
2.防衛力の低下
3.体表面の水滞 → 水様鼻汁・水様喀痰 ← 乾姜・細辛(小青竜湯)で改善
▶ 肺の陽気を活性化する養生
・乾布摩擦
・冷水シャワー(風呂上がり、朝シャワー、滝壺修行)
・リンパマッサージ
▶ 腎の陽気の働き
1.熱を産生する
・深部体温(37℃)の維持
2.排尿
・老廃物(水毒)の排泄
▶ 腎の陽虚
1.下半身が冷えやすい(ヒトの身体は上熱下寒という状態になりやすい)
2.下半身には水毒が停滞しやすい
⇩
腰から下の冷えと痛み ← 苓姜朮甘湯(118):茯苓・白朮で水滞を治し、乾姜で陽虚を治す。
▶ 腎の陽気を活性化する養生
・半身浴:38〜40℃のお湯に20〜30分間、ジワジワと発汗するまでつかる。
・インターバル速歩:3分/3分×5回(合計30分)を週に4〜5日
<参考>
▢ 未病の漢方:花粉症(喜多敏明Dr.の未病シリーズ)