朝倉書店、2008年発行。
食育を考える基礎知識として、日本の食について知りたいと思い手に取った本。
日本大学生物資源科学部から全学部の学生へ遠隔授業として発信された内容です。
編集者の1人上野川先生はアレルギー学会でも時々講演される有名な方です。
実際に読んでみると・・・広く浅くの知識で大学の一般教養の範囲を出ないレベルでちょっと退屈。
統計の数字とかは使えそうですが、あまり知的好奇心を刺激される内容ではありませんでした。
まあ、基礎知識を知るためのテキストであり読み物ではないということですね。
<メモ>
■ 先進国の食糧自給率
オーストラリア、フランス、アメリカは100%を超えている。日本は40%弱で、先進国の中では際だって低い。
日本は先進国の中で長期的に食糧自給率を低下させてきた唯一の国である。供給熱量自給率は、1965年度の73%から1985年度の53%、2006年度の39%へと低下してきた。穀物自給率(食用と飼料用を含む:重量ベース)は1965年の62%から1985年の31%、2006年度の27%となっている。
■ 近代日本の米事情
日本の米の生産量は明治前期の約400万トンから、1920年には913万トンへと約2.3倍に増加したにもかかわらず、戦前期を通じて日本は常に米不足の状況にあり、1918年には米騒動が発生している。我が国が需要を上回る米の生産をようやく達成するのは、1960年代末になり、米が所得の上昇に伴い減少する、つまり商品としては劣等財になってから。
米の消費量は1人当たりでは1962年、総消費量では1963年をピークにして大幅に減少した。このため米は不足状況から一転して過剰となり、1969年から米の生産調整が導入され、水田に他の作物を作付けする「転作」が推進されるようになった。
米の消費量が減少する一方で、畜産物、野菜、果実などの消費量は増大した。2006年度の国民1人当たりの品目別消費量は、1960年度と比べ、肉類や牛乳・乳製品を含む畜産物は4.3倍、油脂類は3.1倍に増加している。
米の全供給熱量に占める割合は、1965年度の44%から2005年度の23%に減少、畜産物・油脂類の合計が全供給熱量に占める割合は1965年度の13%から2005年度の30%に増加している。
■ 食生活と健康
日本の平均寿命は明治・大正時代は42-43歳、戦前ようやく50余歳であった。戦後になり経済力・医学の発展により平均寿命が伸びてきた。
1977年にアメリカ上院の特別委員会が発表した「アメリカ人の食事目標」(マクガバン報告)は公的機関として初めて、望ましい食事栄養の在り方についてPFCバランス(P:蛋白質、F:脂質、C:炭水化物)という明確な数字を示した。日本人の食生活は、1980年頃には平均的に見ればこの望ましいPFCバランスにほぼ一致しており、このことが日本が世界一の長寿国であることと合わせて日本食が健康的であるとの評判を高め、日本食が世界的に普及する大きな要因となっている。
欧米における豊かな食生活は20世紀後半にようやく実現されたかに見えたが、動物性脂肪にうま味を求めた食事は、加齢に伴って循環器の機能障害など、保健上最も懸念される成人病の要因となりがちであることが明らかにされた。一般的に欧米では心筋梗塞が多く、日本ではこれまで少なかったが、WHOの調査によれば、これは米を主食にした食生活によることが指摘されている。非米食文化圏が米食文化圏に比べて肥満も高脂血症も多く心筋梗塞の死亡率は5倍近く高い。
日本の食生活の内容を欧米諸国と比較してみると、国民の所得水準に比してカロリー水準が低く、そのなかでデンプン質比率が高いこと、動物性たんぱく質と植物性たんぱく質の割合がほぼ半々であって、しかも動物性たんぱく質のうち水産物の割合が高いなどの特徴がある。
主要国の食生活についてPFCバランスを比較すると、フランス、アメリカなどの欧米諸国では、肉類、牛乳・乳製品、油脂類の消費が多いことを反映し、脂質が4割程度を占めている。一方、ベトナム、タイ、インドなどのアジア諸国では、炭水化物が7割程度を占めている。日本では脂質の割合が3割程度まで増加しており、PFCバランスが欧米に近づきつつある。
日本の食生活は、米、野菜、魚、大豆を中心とした伝統的な食生活のパターンに、肉類、牛乳・乳製品、鶏卵、油脂、果実が加わってきたもので、欧米諸国とは異なる「日本型食生活」ともいうべき特色のある食生活パターンを形作ってきた。
■ 食育に関する最近の動き
・2005年:食育基本法制定、食事バランスガイド決定
・2006年:食育推進基本計画策定
■ プロバイオティクス(probiotics)とプレバイオティクス(prebiotics)
両者とも腸管内に有益な微生物を増やして宿主の免疫機能を調節しようとする試み。
・プロバイオティクス:消化管(腸管)微生物のバランス化以前により宿主に有益な作用をもたらす生きた微生物添加物
・プレバイオティクス:経口摂取した時に生体に有益な作用が期待されている特定の腸内細菌を選択的に増やしたり活性化したりすることのできる難消化性食品成分
■ 減農薬・無農薬・有機栽培の違い
・減農薬:農薬の使用を寒冷の5割り以下で栽培したもの
・無農薬:農作物を栽培する期間農薬を使用していないもの
・有機(オーガニック):3年以上農薬及び化学肥料を用いていない農場で栽培したもの
■ 日本の食の特徴
1.多彩で新鮮な食材:温帯に位置し南北に長い島国、明確な四季の賜物
2.独自の伝統と中国そして西欧の食文化とが融合して世界にも例がない多様な食品を生み出している
3.うま味へのこだわり
■ 「すし」
にぎり寿司は文政年間(1800年頃)に江戸の華屋与兵衛が考案したといわれている。当時は魚の鮮度を保つため、塩や酢で締めたりゆでたり焼いたりという下ごしらえが必要だった。刺身をそのまま握るようになったのは時代が下って後に冷蔵庫が普及するようになってから。
もともとの「すし」は東南アジアにルーツがある。魚を貯蔵するための保存食として考えられたもので、魚肉を塩で味付けし、ご飯の中につけ込んでつくる発酵食品だった。日本では熟れ鮨(なれずし)の中にその原型が残っている(例:滋賀県の鮒寿司)。最も古い寿司の文献は奈良時代以前に書かれた『大宝令』(702年)で、当時、すしは納税用に使われていたらしい。平安時代の『延喜式』には諸国からすしが貢ぎ物として納められたことが記録されている。
室町時代になると現在のすしの原型が登場する。熟れ鮨は乳酸発酵による熟成に数ヶ月以上を要するいわゆるスローフードだったが、熟成が未だ十分進んでいない早い段階でも食べられるようになった。その後食酢が商業生産されはじめると乳酸発酵の代わりに食酢で味付けするようになり、これを早鮨と呼んだ。一種のファストフードである。早鮨をもとにして現在の押し寿司の原典である箱寿司がつくられるようになり、文政年間のにぎり寿司の原型へと変身し、さらに冷蔵庫の普及に伴って新鮮な材料をそのまま生かした現在のにぎり寿司へと発展してきた。
このように、スローフードである発酵食品の元祖としながら、食酢の製法開発や冷蔵庫の普及などの技術進歩と共にファストフードとしての地位を確立してきた寿司の発展の経緯には大変興味深いモノがある。
■ 「ラーメン」
日本のラーメンの草分けは1910年に浅草公園に回転した「来々軒」といわれている。当初は手打ちめんであったが、昭和に入った頃から手打ちめんは次第に機会打ちへと変わり、現在の日本式ラーメンの原形が形成された。戦後になると、スープに煮干しやカツオ節などの和風だしを加える店が増え、次第に中国のめん料理から日本式のラーメンへと姿を変えていった。
1958年には初のインスタントラーメン「日清チキンラーメン」が発売され、これを契機にラーメンは日本人の食生活に完全に定着することになった。さらに1971年には画期的な形態のカップラーメン(日清食品「カップヌードル」)が発売され、お湯さえあればどこでも短時間でできたてのラーメンを楽しむことができるという、従来では考えられなかった究極のファーストフードとして登場することになった。
日本人がラーメンを好む理由の第一にスープの味が挙げられる。日本式ラーメンの基本となっているのは、醤油や味噌などの日本の伝統的調味料をベースに煮干しやカツオ節などの和風だしを加えたモノである。そのうま味はグルタミン酸と核酸である。日本では古来「だし」を巧みに利用してうま味を楽しむ和食文化を築いてきたが、この和風だしと中国のめんを組み合わせて生み出されたのが日本式ラーメンであり、日本で発明された食品と言ってもよいものである。
■ 「カレーライス」
日本人が初めてカレーに出会ったのは幕末の頃といわれている1863年幕府の遣欧使節の1人、三宅秀がフランスへ向かう船の中で、インド人がカレーとおぼしきものを食べている姿を目撃したことを記録している。その後、1872年に出版された西洋料理の本「西洋料理通」にはカレー料理の調理法が記載されており、さらに1893年の「婦人雑誌」には「即席ライスカレー」なるものの作り方が紹介されている。当時既に「カレーライス」は即席の食品と見なされ、カツオ節や醤油などの日本の調味料を使うという日本人の味覚にあったリアレンジメントが行われていたようで、この頃が「カレーライス」誕生の時期ではないかと考えられる。一方、1900年頃に横須賀で始まった「海軍カレー」が原点とする説もある。いずれにしても、群退職として利用されたことがきっかけとなり、日本全国に広まったようである。
1914年には元祖のカレールウ「ロンドン即席カレー」が発売され、即席食品、ファーストフードとしての発展が始まった。1950年には固形カレールウが登場し、「カレーライス」は家庭料理の定番となった。ついで1969年には日本初のレトルトカレーが登場し、現在のカレーライスのスタイルが完成した。
このようにカレーライスは、文明開化に西欧経由で伝えられたインドカレーを日本流に変形したモノで、本場のインドにも西欧にもない日本で創作された食品といってよいものである。
■ 発酵食品
<特徴>
1.優れた保存性
・有機酸の生成による保存性向上
乳酸菌を用いた発酵食品では、乳酸菌の増殖とともにつくられる乳酸自体が殺菌作用を示す。乳酸に限らず、発酵でつくられる有機酸は一般的に細菌類の増殖を抑制する作用がある。しかし乳酸は酢酸などの他の酸とは違い、酵母やカビなどの真菌類に対しては強い抗菌作用を示さないという特徴があるため、乳酸菌と酵母やカビの共同作用でつくり出される発酵食品成立の大きな要因になっている。
・カツオ節のヒミツ
日本のカツオ節の製造工程では、いぶして水分30%程度まで乾燥させた後にカビ付けを行う。このときに使用されるのがカツオ節カビの Aspergillus glaucus である。カビ付けは数回にわたって行われ、カビの生育に伴って水分が最終的には14%以下に達すると本枯節が完成する。ここまで水分が低下すると他の微生物は増殖することができなくなり、保存性が高まる。また、カビの酵素の働きにより、脂肪芽脂肪酸へ、蛋白質はアミノ酸へと分解され、おいしさが増す。
2.食品としての一次(栄養)・二次(おいしさ)・三次(健康の維持・増進)の機能性の高さ
食育を考える基礎知識として、日本の食について知りたいと思い手に取った本。
日本大学生物資源科学部から全学部の学生へ遠隔授業として発信された内容です。
編集者の1人上野川先生はアレルギー学会でも時々講演される有名な方です。
実際に読んでみると・・・広く浅くの知識で大学の一般教養の範囲を出ないレベルでちょっと退屈。
統計の数字とかは使えそうですが、あまり知的好奇心を刺激される内容ではありませんでした。
まあ、基礎知識を知るためのテキストであり読み物ではないということですね。
<メモ>
■ 先進国の食糧自給率
オーストラリア、フランス、アメリカは100%を超えている。日本は40%弱で、先進国の中では際だって低い。
日本は先進国の中で長期的に食糧自給率を低下させてきた唯一の国である。供給熱量自給率は、1965年度の73%から1985年度の53%、2006年度の39%へと低下してきた。穀物自給率(食用と飼料用を含む:重量ベース)は1965年の62%から1985年の31%、2006年度の27%となっている。
■ 近代日本の米事情
日本の米の生産量は明治前期の約400万トンから、1920年には913万トンへと約2.3倍に増加したにもかかわらず、戦前期を通じて日本は常に米不足の状況にあり、1918年には米騒動が発生している。我が国が需要を上回る米の生産をようやく達成するのは、1960年代末になり、米が所得の上昇に伴い減少する、つまり商品としては劣等財になってから。
米の消費量は1人当たりでは1962年、総消費量では1963年をピークにして大幅に減少した。このため米は不足状況から一転して過剰となり、1969年から米の生産調整が導入され、水田に他の作物を作付けする「転作」が推進されるようになった。
米の消費量が減少する一方で、畜産物、野菜、果実などの消費量は増大した。2006年度の国民1人当たりの品目別消費量は、1960年度と比べ、肉類や牛乳・乳製品を含む畜産物は4.3倍、油脂類は3.1倍に増加している。
米の全供給熱量に占める割合は、1965年度の44%から2005年度の23%に減少、畜産物・油脂類の合計が全供給熱量に占める割合は1965年度の13%から2005年度の30%に増加している。
■ 食生活と健康
日本の平均寿命は明治・大正時代は42-43歳、戦前ようやく50余歳であった。戦後になり経済力・医学の発展により平均寿命が伸びてきた。
1977年にアメリカ上院の特別委員会が発表した「アメリカ人の食事目標」(マクガバン報告)は公的機関として初めて、望ましい食事栄養の在り方についてPFCバランス(P:蛋白質、F:脂質、C:炭水化物)という明確な数字を示した。日本人の食生活は、1980年頃には平均的に見ればこの望ましいPFCバランスにほぼ一致しており、このことが日本が世界一の長寿国であることと合わせて日本食が健康的であるとの評判を高め、日本食が世界的に普及する大きな要因となっている。
欧米における豊かな食生活は20世紀後半にようやく実現されたかに見えたが、動物性脂肪にうま味を求めた食事は、加齢に伴って循環器の機能障害など、保健上最も懸念される成人病の要因となりがちであることが明らかにされた。一般的に欧米では心筋梗塞が多く、日本ではこれまで少なかったが、WHOの調査によれば、これは米を主食にした食生活によることが指摘されている。非米食文化圏が米食文化圏に比べて肥満も高脂血症も多く心筋梗塞の死亡率は5倍近く高い。
日本の食生活の内容を欧米諸国と比較してみると、国民の所得水準に比してカロリー水準が低く、そのなかでデンプン質比率が高いこと、動物性たんぱく質と植物性たんぱく質の割合がほぼ半々であって、しかも動物性たんぱく質のうち水産物の割合が高いなどの特徴がある。
主要国の食生活についてPFCバランスを比較すると、フランス、アメリカなどの欧米諸国では、肉類、牛乳・乳製品、油脂類の消費が多いことを反映し、脂質が4割程度を占めている。一方、ベトナム、タイ、インドなどのアジア諸国では、炭水化物が7割程度を占めている。日本では脂質の割合が3割程度まで増加しており、PFCバランスが欧米に近づきつつある。
日本の食生活は、米、野菜、魚、大豆を中心とした伝統的な食生活のパターンに、肉類、牛乳・乳製品、鶏卵、油脂、果実が加わってきたもので、欧米諸国とは異なる「日本型食生活」ともいうべき特色のある食生活パターンを形作ってきた。
■ 食育に関する最近の動き
・2005年:食育基本法制定、食事バランスガイド決定
・2006年:食育推進基本計画策定
■ プロバイオティクス(probiotics)とプレバイオティクス(prebiotics)
両者とも腸管内に有益な微生物を増やして宿主の免疫機能を調節しようとする試み。
・プロバイオティクス:消化管(腸管)微生物のバランス化以前により宿主に有益な作用をもたらす生きた微生物添加物
・プレバイオティクス:経口摂取した時に生体に有益な作用が期待されている特定の腸内細菌を選択的に増やしたり活性化したりすることのできる難消化性食品成分
■ 減農薬・無農薬・有機栽培の違い
・減農薬:農薬の使用を寒冷の5割り以下で栽培したもの
・無農薬:農作物を栽培する期間農薬を使用していないもの
・有機(オーガニック):3年以上農薬及び化学肥料を用いていない農場で栽培したもの
■ 日本の食の特徴
1.多彩で新鮮な食材:温帯に位置し南北に長い島国、明確な四季の賜物
2.独自の伝統と中国そして西欧の食文化とが融合して世界にも例がない多様な食品を生み出している
3.うま味へのこだわり
■ 「すし」
にぎり寿司は文政年間(1800年頃)に江戸の華屋与兵衛が考案したといわれている。当時は魚の鮮度を保つため、塩や酢で締めたりゆでたり焼いたりという下ごしらえが必要だった。刺身をそのまま握るようになったのは時代が下って後に冷蔵庫が普及するようになってから。
もともとの「すし」は東南アジアにルーツがある。魚を貯蔵するための保存食として考えられたもので、魚肉を塩で味付けし、ご飯の中につけ込んでつくる発酵食品だった。日本では熟れ鮨(なれずし)の中にその原型が残っている(例:滋賀県の鮒寿司)。最も古い寿司の文献は奈良時代以前に書かれた『大宝令』(702年)で、当時、すしは納税用に使われていたらしい。平安時代の『延喜式』には諸国からすしが貢ぎ物として納められたことが記録されている。
室町時代になると現在のすしの原型が登場する。熟れ鮨は乳酸発酵による熟成に数ヶ月以上を要するいわゆるスローフードだったが、熟成が未だ十分進んでいない早い段階でも食べられるようになった。その後食酢が商業生産されはじめると乳酸発酵の代わりに食酢で味付けするようになり、これを早鮨と呼んだ。一種のファストフードである。早鮨をもとにして現在の押し寿司の原典である箱寿司がつくられるようになり、文政年間のにぎり寿司の原型へと変身し、さらに冷蔵庫の普及に伴って新鮮な材料をそのまま生かした現在のにぎり寿司へと発展してきた。
このように、スローフードである発酵食品の元祖としながら、食酢の製法開発や冷蔵庫の普及などの技術進歩と共にファストフードとしての地位を確立してきた寿司の発展の経緯には大変興味深いモノがある。
■ 「ラーメン」
日本のラーメンの草分けは1910年に浅草公園に回転した「来々軒」といわれている。当初は手打ちめんであったが、昭和に入った頃から手打ちめんは次第に機会打ちへと変わり、現在の日本式ラーメンの原形が形成された。戦後になると、スープに煮干しやカツオ節などの和風だしを加える店が増え、次第に中国のめん料理から日本式のラーメンへと姿を変えていった。
1958年には初のインスタントラーメン「日清チキンラーメン」が発売され、これを契機にラーメンは日本人の食生活に完全に定着することになった。さらに1971年には画期的な形態のカップラーメン(日清食品「カップヌードル」)が発売され、お湯さえあればどこでも短時間でできたてのラーメンを楽しむことができるという、従来では考えられなかった究極のファーストフードとして登場することになった。
日本人がラーメンを好む理由の第一にスープの味が挙げられる。日本式ラーメンの基本となっているのは、醤油や味噌などの日本の伝統的調味料をベースに煮干しやカツオ節などの和風だしを加えたモノである。そのうま味はグルタミン酸と核酸である。日本では古来「だし」を巧みに利用してうま味を楽しむ和食文化を築いてきたが、この和風だしと中国のめんを組み合わせて生み出されたのが日本式ラーメンであり、日本で発明された食品と言ってもよいものである。
■ 「カレーライス」
日本人が初めてカレーに出会ったのは幕末の頃といわれている1863年幕府の遣欧使節の1人、三宅秀がフランスへ向かう船の中で、インド人がカレーとおぼしきものを食べている姿を目撃したことを記録している。その後、1872年に出版された西洋料理の本「西洋料理通」にはカレー料理の調理法が記載されており、さらに1893年の「婦人雑誌」には「即席ライスカレー」なるものの作り方が紹介されている。当時既に「カレーライス」は即席の食品と見なされ、カツオ節や醤油などの日本の調味料を使うという日本人の味覚にあったリアレンジメントが行われていたようで、この頃が「カレーライス」誕生の時期ではないかと考えられる。一方、1900年頃に横須賀で始まった「海軍カレー」が原点とする説もある。いずれにしても、群退職として利用されたことがきっかけとなり、日本全国に広まったようである。
1914年には元祖のカレールウ「ロンドン即席カレー」が発売され、即席食品、ファーストフードとしての発展が始まった。1950年には固形カレールウが登場し、「カレーライス」は家庭料理の定番となった。ついで1969年には日本初のレトルトカレーが登場し、現在のカレーライスのスタイルが完成した。
このようにカレーライスは、文明開化に西欧経由で伝えられたインドカレーを日本流に変形したモノで、本場のインドにも西欧にもない日本で創作された食品といってよいものである。
■ 発酵食品
<特徴>
1.優れた保存性
・有機酸の生成による保存性向上
乳酸菌を用いた発酵食品では、乳酸菌の増殖とともにつくられる乳酸自体が殺菌作用を示す。乳酸に限らず、発酵でつくられる有機酸は一般的に細菌類の増殖を抑制する作用がある。しかし乳酸は酢酸などの他の酸とは違い、酵母やカビなどの真菌類に対しては強い抗菌作用を示さないという特徴があるため、乳酸菌と酵母やカビの共同作用でつくり出される発酵食品成立の大きな要因になっている。
・カツオ節のヒミツ
日本のカツオ節の製造工程では、いぶして水分30%程度まで乾燥させた後にカビ付けを行う。このときに使用されるのがカツオ節カビの Aspergillus glaucus である。カビ付けは数回にわたって行われ、カビの生育に伴って水分が最終的には14%以下に達すると本枯節が完成する。ここまで水分が低下すると他の微生物は増殖することができなくなり、保存性が高まる。また、カビの酵素の働きにより、脂肪芽脂肪酸へ、蛋白質はアミノ酸へと分解され、おいしさが増す。
2.食品としての一次(栄養)・二次(おいしさ)・三次(健康の維持・増進)の機能性の高さ