小児漢方探求

漢方医学の魅力に取りつかれた小児科医です.学会やネットで得た情報や、最近読んだ本の感想を書き留めました(本棚3)。

「Dr. 浅岡のもっと楽しく漢方」シリーズ

2009年10月13日 06時27分59秒 | 漢方
医療者向けの漢方医学の解説DVDです。
このシリーズは2ステップ構成となっています。
・「楽しく漢方」シリーズ(全六巻):主に病態に対して解説する基本編
・「もっと楽しく漢方」シリーズ(全五巻):漢方概念の解説を中心とした応用編

私の世代(医者になって20年以上)は大学医学部の講義に漢方医学はありませんでしたので、西洋医学中心の診療に従事した後、あるきっかけで漢方医学に開眼するパターンが多いですね。
私もその一人でして、自分に試したら効いた!→ 身内に試したら効いた!→ 患者さんへ、という流れでこれまで来ました。
漢方セミナーにせっせと通い(30回以上?)、いろんな解説本を読んで少しずつ知識を増やしてきましたが、その中でもこのDVDにはお世話になりました。全巻、1時間を超える講義が2~4回分納められており、結構なボリュームです。
良い点は、漢方の概念を西洋医学を学んだ頭でもわかるように解説しているところで、取っつきにくいハードルを随分下げてくれました。

浅岡先生の教えは「エキス剤の名前を覚えてもダメ、生薬を理解することが基本」です。
発売されている処方可能なエキス剤は複数の生薬からなる約束処方と考え、それを使いこなすには構成生薬を理解することが必要条件となる、そして生薬はデタラメに入っているわけではなく、1000年以上いろいろ試してきた結果、生き残った構成が現在のエキス剤である、それを理解し使いこなせれば自ずと漢方概念も修得できる、と。

漢方の診断名は「証」と呼ばれ、西洋医学の診断名とは異なります。
漢方薬を使用する際は、当然漢方医学的診断に基づく必要があります。
できあがったエキス剤と「証」を結びつけるには生薬の知識が必須です。
患者さんを診たときに、「この生薬が合いそうだな」と感じ、その生薬が含まれる方剤を頭に浮かべ、そのうちどれが一番合いそうか患者さんから追加情報を得て処方に辿り着きます。

例えば、吐き気を訴える患者さんを目の前にすると、喉から胃の仕えを取る「半夏」と利水剤(水の不均衡を治す)「朮・茯苓」が頭に浮かびます。喉の渇きがなければ半夏が合うので「半夏瀉心湯」、喉の渇きがあれば朮と茯苓を含む「五苓散」という処方に辿り着きます。

「証」に基づかない西洋医学的使用法・・・「風邪の始まりには葛根湯」では、漢方を使いこなしたとは言えず、また漢方が理解されずに失墜する可能性を危惧されています。

また、昨今「EBM:Evidence Based Medicine」 が西洋医学でもてはやされており「漢方はEBMが無いから怪しい医療だ」と批判対象になっています。最後の講義で浅岡先生は「Evidenceは日本語に訳すと『証拠』です。『証』に拠る医療を日本は江戸時代まで連綿と行ってきたのです。」
喉のつかえがスウッと取れたような気がしました。

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