ん?タリアセン夫人?(PART 1)
デンマンさん。。。今日も私の話題ですか?
いけませんか?
私は、あまり登場したくはないのですけれど。。。
どうして。。。?
どうしてってぇ~、悪い事が起こりそうで、なんとなく怖いのですわ。
悪い事ってぇ。。。どう言う事ですか?
誰かが私を逆恨(さかうら)みして。。。私の家族に不幸な事が起こるとか。。。?
あのねぇ~。。。いくら警戒していても、注意していても不幸な出来事は起こるかもしれないのですよう。
たとえば。。。?
ずいぶん昔の話になるけれど、あれだけ人気のあった坂本九ちゃんは日本航空の123便に乗ったばっかりに、墜落して群馬県の山の中で亡くなってしまった。。。また、人気作家の向田邦子さんも飛行機事故で亡くなってしまった。。。それに、あの 9.11のニューヨークの大惨事だって、あの日にワールドセンタービルに追突した飛行機に乗ったばっかりに命を落とした人がたくさん居た。。。これは、もう予測不可能な事故ですよう。。。運が悪かったというより他に言いようがない。
つまり、どんなに警戒しても、注意していても、人の命は運命に任されていると、デンマンさんは言いたいのですか?
いや。。。僕は運命論者じゃないけれど。。。、どんなに警戒しても、注意していても、運命的な出来事に巻き込まれてしまうことがあるのですよう。
だから。。。?
だから、一日一日を精一杯生きるしかない。ささやかな幸せを噛み締めながら、できれば悲しい事は忘れて、うれしい事、小さな喜びにも生きていることの幸せを噛み締めて、生かされていることに感謝して、朝、目覚めたら、お日様に感謝するのですよう。
デンマンさんは、マジでそうしているのですか?
マジですよう。。。あのねぇ~、僕はすでに記事で書いているのですよう。ちょっと読んでみてくださいよう。
北極の原野での孤独
本当に孤独になって寂しくなると、死ぬなんてことは全く頭から消えうせてしまうものですよ。むしろ本能的に生きようとするすさまじいまでの生に対する執着にとらわれるものですよ。
どういうことですか?
北極の原野に一人で置き去りにされた事を考えてみてくださいよ。寂しいなんて言っているどころじゃない。その瞬間から生きなければならない。腹をすかせたハスキー犬が牙をむいて襲い掛かる。グリスリー・ベアに出会えば、命はないと思わなければならない。
デンマンさんは、北極の原野に放り出された事でもあるのですか?
もちろん、ありませんよ。でも、僕の宿舎から5分も歩くと人の姿は見えませんでした。30分も歩いたら、そこは上の写真のような原野ですよ。野生化したハスキー犬が獲物を狙い、牙をむいて近づいてきますよ。
ハスキー犬って何ですか?
狼と犬の混血だと言われています。だから野生化したハスキー犬は人も襲いますよ。
怖いでしょう?
怖いなんてものじゃない。ハスキー犬の群れに襲われたら命がありませんよ。
それでハスキー犬に出会ったことでもあるのですか?
ありますよ。僕は2週間ほど休みをとって夏、北極の原野を歩きましたよ。せっかくイエローナイフに行ったのですからね。もう2度とそういう経験は出来ないと思いましたからね。
イエローナイフの中心部 (人口約2万人)
ノースウェスト・テリトリー(準州)の首都
それで怖い思いをなさったのですか?
“怖い思い”と言っているうちは本当に怖くはないんですよ。
どういうことですか?
僕は“野生化する”という意味が初めて分かりましたよ。野生化するということは一口で言ってしまえば“死と隣り合わせ”で生きるということなんですよ。常にビクビクしていなければならない。感覚が研ぎ澄まされている。ライフルを背負っていないと安心していられない。
ライフルって、。。あの~。銃、。。。鉄砲のことですかあああ?
そうですよ。カップヌードルじゃないですよ。常に身を守る事を考えていますよ。ハスキー犬でもただの野犬でも、飛びかかって来る前にライフルを構えなければならないから、つねに辺りに気を配っていますよ。あんなに音に敏感になれるとは思ってもみませんでしたよ。葉っぱが擦れ合う音にさへ最初のうちはビクッとしましたよ。
それでどのような怖い思いをしたのですか?
夜でも横になっては寝られなかったですよ。
どのようにして眠るのですか?
座って寝るんです。とても横になって寝る気になれませんでしたよ。リュックを背にしてライフルを抱くようにしながら眠るんですよ。熟睡できない。1時間半から2時間おきに目が覚めますね。
それで。。。?
遠吠(とおぼ)えなんかが聞こえると実に嫌なものですよ。“お~い、獲物が居たぞォ~、みんなで襲おうじゃないかァ~~”そう仲間に呼びかけているように聞こえてくるんですよ。
それで。。。
よく西部劇で獣を寄せ付けないために一晩中火をたきながら眠るシーンがありました。でもね、あんな事は出来ませんでしたよ。
どうしてですか?
燃やす薪(たきぎ)がすぐになくなってしまうんですよ。上の写真で見るように森なんてありませんからね、潅木がチラホラ程度ですよ。燃やすものがなくなって火が消えて真っ暗になります。そういう時にオーロラが頭上を神秘的に踊っている。まさに踊っているようにサラサラ動いている。ゾォ~~とするような美しさですよ。でも、いつまでもボケーと見上げているわけにはゆかない。コソッとでも物音がしようものならすぐにライフルを引き寄せて構えますよ。最初のうちは、珍しいから撃ちたくってバンバン引き金を引きましたが、そのうち弾(たま)が減ってくるから、そうやたらに撃てなくなる。弾が無くなった時が僕の命が無くなる時ですよ。
それで。。。
最初の夜などは、かなりぶっ放しましたが5日ぐらい経つとライフルを撃つ事も面白くなくなる。それよりも弾の数が減ってくる事の方が心配になりますよ。
それで。。。
とにかく、近くにセブンイレブンはないんですよ。自動販売機もないんですよ。公衆電話もないんですよ。人っ子一人居ないんですよ。短波放送を聞く気になれば聞く事が出来ますが、ラジオなんかかけていたら、獣の物音が聞こえなくなる。ハスキーの群れに襲われたら、命は無いんですよ。耳を澄まして物音だけに神経を集中しますよ。そういう時には寂しいなんて気持ちにはならないものですよ。早く夜が終わってくれないか。そればかりを考えている。気を紛らせることができるのはオーロラを見上げる時ぐらいです。
それでどういう怖い事があったのですか?
1週間ぐらい経った頃ですかねぇ~。僕はもうやたらにライフルを撃たなくなりました。ある程度物音にも慣れてきました。“殺気”という言葉を聞いた事があるでしょう? 僕は初めてそういう経験をしましたよ。あれは、野生化した僕が本能的に感じたものだと思うんですよ。理屈ではどうにも説明できないんです。確かに物音を感じた。でも、それが獣だか潅木の葉っぱが擦れ合う音なのか?あまりはっきりしなかった。 とにかく“やばい”という胸騒(むなさわ)ぎがして僕はライフルを引き寄せてテントの入り口から外をソッとうかがった。
何が居たのですか?
目が2つ光って僕を見ているんですよ。ゾォ~としましたね。僕は引き金に手をかけていましたが撃つ気になれない。
それは何だったのですか?
おそらくハスキー犬か野犬でしょうね。瞬(まばた)きもせずに僕の方をジィ~と見ているんですよ。最初の夜だったら、僕は間違いなく、すぐにぶっ放していましたよ。でも、“殺気”はそれまでなんですよ。僕はもう怖さはない。すぐ撃てるからですよ。僕はブルックリンで人間の返り血を浴びた事があるから、結構そのような度胸はついている。“かかってくるなら来い、ぶっ放してやるだけだ!” そう思いながら僕も睨(にら)みつけましたよ。僕の目もおそらくオーロラの光を受けて光っていたでしょうね。僕には5分ぐらいに感じられたけれど、それ程長い間のことじゃなかったでしょう。とにかく、にらみ合いの挙句、その獣は諦めたようにクルッと身を翻(ひるがえ)すと帰っていきましたよ。
デンマンさんは撃たなかったのですか?
“殺気”が消えていたんですよ。喧嘩した後、さっぱりした気持ちになるでしょう。あの気持ちなんですよ。動物同士だって勝ち負けがついたら相手を殺さないものですよ。
それで、その夜はそれ以外には何もなかったのですか?
何もなかった。もうその獣はやって来ませんでしたよ。
それで、デンマンさんの寂しさって何ですか?
つまり、人間が野生に返って生きるなら、寂しさを感じている暇がないんですよ。僕はしみじみとそう感じたものですよ。そしてあの朝を迎えた時のなんとも言えない幸せな気分。僕はお日様に向かって感謝し、祈るような気分になりましたよ。“あああ。。。お日様さん、ありがとうございます。夕べも無事で命に別状はありませんでした。今夜もよろしくお願いします。どうか僕をお守りください” 朝日を浴びながら、実際そう思ったものですよ。レンゲさんに、この僕の伝えようとしている気持ちが分かりますかあああ?
『群衆の中の孤独!寂しくって死んでしまいたい』より
(2005年12月31日)
僕はこの気持ちをいつも忘れていませんよう。
デンマンさんは毎日、お日様に手を合わせて感謝しているのですか?
もちろん、毎日ではないけれど、小百合さんからバレンタインの小包を受け取ったときには、僕は幸せな気分に浸って、しみじみとお日様に向かって生きていることを感謝したのですよう。
デンマンさんは、何かにつけて過激な反応をするのですわ。
お日様に手を合わせて感謝する事が過激な反応だと小百合さんは言うのですか?
いいえ。。。そうではありません。私からバレンタインの小包をもらったぐらいでお日様に手を合わせないでくださいな。
あのねぇ~。。。小百合さんは全く赤の他人ですよ。それに、太平洋をはさんで何千キロも離れている。それなのに、チョコや、女の子が口に含むミントやガムや、それにカレーうどんや、昔作りのあられ、どん兵衛の鴨だしそば。。。、そういうものを買い揃えて、それから小包を作って、郵便局へ持って行って、手間、暇かけて日本からバンクーバーまで送ってくれた。
たいした事ではありませんわ。
しかも、40代とは思えないような可愛らしい手紙を書いてくれた。うししししし。。。
前略
バレンタインデーに
間に合うように
送るつもりでしたが、
もしかすると
月末に着くかもしれません。
とことんフルーティ!MINTA
LOTTEのチェリーミントガムは
最近、気に入って、
カバンに入れて
持ち歩いてます。
デンマンさんの
迷惑そうな顔が
思い浮かびます。
でも、1年に一度ぐらいは
女の子の気持ちになって
ルンルン気分で
スキップしながら
チェリーミントガムでも
かんでみてくださいね。
うふふふふ。。。
うららかな春のバンクーバーの街を
歩きながら。。。
また、フードストアに向かう
買いものついでに。。。
それから、思いつくままに
カップヌードルや、即席うどん
おそば、焼きそばを入れました。
日本の味を懐かしみながら
食べてみてくださいね。
では。。。
早々
小百合より
2010年2月3日
『愛と夢のチョコ』より
(2010年3月7日)
僕はマジでガムをかみながら、ローティーンの女の子のようにロブソン・ストリートをスキップしながらルンルン気分で散歩してしまいましたよう。うへへへへへ。。。
マジで。。。?
通りすがりの人が、“アイツ、春先になって気が可笑しくなってしまったのォ~?”。。。そう言いたそうな呆れた顔して僕を見ていましたよう.うしししし。。。
デンマンさん!。。。冗談は止めてくださいな。
とにかくねぇ~、僕はイングリッシュ・ベイの遊歩道を歩きながら、太平洋のはるか向こうを見つめて、軽井沢タリアセン夫人に手を合わせて感謝したのですよう。
そのタリサセン夫人というのも私を美化しすぎていますわ。止めてくださいな。
どうしてですか?
だってぇ~。。。逆恨(さかうら)みされて、私は殺されてしまいますわ。
それこそ過激な反応ですよう。んもお~~。
。。。で、わざわざ私を呼び出してタリアセン夫人のお話ですか?
そうですよう。
デンマンさんのお話は前置きが長いのですわ。
やだなあああァ~。。。小百合さんが素直に。。。はい、はい、はい。。。、と言わずに、ああでもない、こうでもないと言うから、わき道にそれなければならなかったのですよう。
。。。で、いったい何をお話になるのですか?
あのねぇ~、“軽井沢タリアセン夫人”と聞いただけで。。。、あるいは目にしただけで興味をそそられる人が居るのですよう。
どうして、そのような事が分かるのですか?
次の統計を見てくださいよう。
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