17年間一緒に暮らした雑種のシェラは犬のくせに犬嫌いだった。若いころは、メスのくせにほかの犬には激しく吠えついたものだ。彼女が恋心を抱いたオス犬は、ぼくが知るかぎり生涯2匹しかいなかった。
3匹の先住猫の中で育ったせいで、猫は好きで面と向かうと尾を振っていたほどだ。一度、そうやって尾を振り、油断しているところを地廻りみたいな猫に攻撃され、以来、少し警戒するようにはなった。
その点、12歳で旅立ったコーギーのむぎは、おっかなびっくりながらほかの犬との交流に背を向けはしなかった。ただ、弱虫だったから、相手が子犬でもゴロンとお腹を見せたりしてしまう。そんな情景を母親役のシェラはハラハラ、イライラしながら眺めていた。ガマンの限界を越えてシェラがひと声吠えると、むぎはすぐにシェラの脇や背後に逃げてしまった。
ルイは、犬にも猫にも、そして人間にたいしてもただひたすらフレンドリーな性格というのは何度もここでご紹介した。よその犬からどんなに吠えつかれても決して吠え返さない。攻撃を受けても飛び跳ねて避けるだけである。
むしろ、いまはただひたすら遊びたくてしょうがないらしい。いちばんいいのは体格が同じような犬であり、シェパードやレトリバーなど、体格が違いすぎると、最近は警戒するようになった。突貫小僧も少しばかり成長したのだろう。
体格は同じくらいでも、年齢が違うと遊び方も異なるらしい。このところのルイは相手に跳びついて暴れたがる。だが、大人になった犬は跳びつかれるのが迷惑千万らしく、露骨に嫌がられる。
年端が近いと二匹が跳びつきあって、よれよれになるまで遊ぶ。きっと、きょうだい犬と一緒に育っていけば、日常的にこうして体力をつけながら成長していくのだろう。
それにしても、動けなくなるまでやってしまうのは、たまにしかこうして遊べないからだというのがよくわかる。ほほえましくもかわいそうに思えてくる。
先日、スーパーの前で似たような身体の柴に出会った。とってもフレンドリーな子ではあるが、4歳ということでルイの跳びつき遊びを受け入れてはもらえなかった。二匹の姿を見ていると、たしかにルイがガキわんこに見える。
いずれ立場が逆転したとき、ルイは時分に跳びついてくる若いわんこに対してどんな反応を示すのだろう。吠えはしないだろうが、あからさまに「やめてくれよな!」なんて態度をみせて、隙を見て相手のわんこのお尻のにおいを嗅ぐことに専念するのだろうか。
人間ならだれでも好きという性格もときには困ったことが起きる。
最近もコンビニの前で、店から出てきた見ず知らずの女性客のほうへいこうとしてリードを強く引っ張り、家人は右手の親指の爪を剥いでしまった。家人は、あまりの痛さに息が止まり、うずくまったまましばし動けなかったという。
よほどこっぴどく叱られたのか、その夜、ぼくが帰ってからもルイはしょんぼりしたまま、まったく意気があがらなかった。
ちょっとかわいそうだったので、抱きしめ、慰めてやった。