愛する犬と暮らす

この子たちに出逢えてよかった。

今朝も追われるようにして

2017-03-07 22:50:05 | ルイとの日々

 昨秋、勤めている会社の代表取締役社長就任という予期しなかった一身上の都合で、いっとき、ルイをなかなか遊んでやれなかった。正直、精神的にも、また、体力的にもそれどころではない毎日だった。
「これはいかん」と気づき、年明けあたりから、ことあるごとに声をかけてやるようにした。ルイにどれだけルイを思っているかを言葉で伝えてきた。

 前にも書いたが、散歩のとき、ルイはこちらの気持ちを推し量ろうとするように並んで歩きながらこちらの顔を見てくれる。目が合えば、笑顔で話しかけてやってきた。
 いつまでも亡くなったシェラやむぎにこだわっているよりも、その存在から日々を楽しませてくれるルイに心から気持ちを傾けてきたのである。もし、いま、ルイがいなくなってしまったら……。そんなことはとてもじゃないけど考えられない。想像さえできない。いまや、ぼくや女房にとって、ルイはかけがえのない存在になっている。
 シェラやむぎへの愛惜はかわらないけど、ルイはルイである。

 気が小さいという性格でもオスのわんこである。どうしてどうしてきかん気はなかなかのものだ。5歳も半ばを過ぎたというのにやんちゃぶりは健在である。
 散歩中も油断ができない。郵便局のバイクを追う。キックボードには異常な反応を見せる。こうした嫌いなものへいつなんどき襲いかかるかわからない。
 家の中でもぼくや女房の気を引こうと、すぐにいたずらがはじまる。すばしっこく動くから容易に対応できない。ルイには軽い遊びでも70過ぎたわれわれにはかなりの負担になる。その様子がわれわれの目にはたまらなくかわいいからなおさら始末が悪い。

 だいぶ前からだが、朝、会社へ出かける支度をはじめると、追いすがってくる。スーツのズボンを破かれ、去年はバーバリのトレンチコートも牙で破かれてしまった。女房の被害はそんな程度ではないという。
 それでも怒る気になれないのは、やっぱり歳とってからの子だからなのだろう。服を破かれないように気をつけているせいもあるが、最近はようやく牙をたてなくなったのは、やっぱりルイの成長のたまものなのかもしれない。

 ぼくが家を会社へ向かうころあいを見て、ルイは自分のフリスビーをくわえてくる。布製のヤツだ。これでかなりマジで引っ張りっこをしようとする。うっかり相手をすると思い切り引っ張られて転びそうになることさえある。
 二、三度相手をしてから「帰ってきたら遊んでやるからな」と言い置き、出かける。しかし、あまり約束を果たしたことがない。昼間の疲れでルイの相手をしてやるのが大儀だからだ。
 ルイもわかっているのか、それとも自分も疲れているからか、たいてい、朝のような鋭さ、しつこさはなくなっている。

 毎朝、追いすがられ、逃げるようにして家を出たときのぼくの口元は笑っている。
 この幸せだっていつまで続くかわからない。いまだからこそのルイとのこの楽しみは、しんどいけど、一日でも長く続いてほしいと切に思う。