愛する犬と暮らす

この子たちに出逢えてよかった。

7月の豪雨キャンプを救ってくれた少年

2014-10-13 15:21:32 | ルイとの日々

■ ルイがいたからキャンプが続いている
 7月のキャンプは5月に引き続き白樺の森が美しい信州のキャンプ場だった。ここはわが家にとってホームグランドともいうべきキャンプ場で、5月、7月、9月、10月とシーズンたけなわのキャンプは、原則としてすべてここでキャンプさせてもらっている。
 すでにルイとも何度か訪れていると思っていたが、よくよく考えてみるとそうでもなかった。ルイとは一昨年の7月がはじめてで、今年の5月、そしてこの7月ようやく三回目だった。
 ここへルイをはじめて連れてきたのは、ルイがようやく1歳を迎えたころ。2か月前にキャンプデビューしたばかりだった。先住犬のシェラをガンで送って半年と経っておらず、喪失感に沈みそうになる中、かろうじて気力をふりしぼって出かけた。


 あのときは、ぼくも家人も涙にくれながらこのキャンプ場へたどりついた。高速道路を降り、佐久の町を抜けて見慣れた田園風景の中を走り出したころ、家人が不意にシェラとむぎの思い出話をはじめたのである。話しながら彼女は嗚咽し、ぼくも運転しながらあふれる涙をぬぐうのに忙しかった。
 リアシートにひとりですわる、キャンプデビューしたばかりでまだクレートに入れなくてもすむほど幼く、不安そうにしているルイの存在をぼくたちはしばし忘れていた。
 ほどなくたどりついたキャンプ場での3泊4日をルイとどのようにして過ごしたのか、記憶はきれいに消し飛んでいる。憶えているのは、涙にまみれて走った田園風景のしらじらしいまでの明るさだけである。

 去年はぼくの腰痛が悪化して5月も7月もキャンプを休んだ。焦る気持ちはまったくなかった。むぎを喪い、シェラもまた送ることになり、もし、ルイを迎えていなかったら、もうキャンプなどきれいに捨てていたかもしれない。女房がむぎのいない寂しさに耐えられずにルイを迎えていてくれて正解だった。
 9月になってようやくキャンプを再開する気になったのも、2歳になって日々わんぱくぶりを発揮しているルイと一緒に野遊びをやってみたいという気にさせてくれたからだった。


■ 個性が際立つキャンプでのわんこたち
 シェラとむぎ、そして、ルイたちは、キャンプへくるとそれぞれに彼らなりの個性を存分に発揮してぼくたちを感心させてくれた。零歳児のころから何度もぼくとふたりだけでキャンプに出かけたシェラは、1歳を過ぎたあたりから設営しているぼくに「早くテントを張って!」とせかしたものだった。次に、張り終わったテントの入り口を前足で引っ掻いて中へ入れてとせがんだ。テントの中に入っていれば安心だったのだろう。
 ふだんはいつもシェラの横から離れようとしないむぎは、キャンプへくるとデビューのときから自立した側面を見せてくれた。最初のときは、ちょっと目を離したすきに子供たちがいる近所のサイトへひとりでいってしまった。「あら、むぎちゃん、遊びにきてくれたの」という声で気づいたくらいだった。まさか、あのむぎがとびっくりしたものだった。

 その後のむぎのキャンプでの変わりようはぼくたちにも驚きだった。シェラと離れ、いつも外を向いて見張りに徹していたからである。番犬をやってくれたからといって異変を知らせてくれたわけではなく、たとえば、野生のキツネが近づいてきても、イノシシの吐息と気配がすぐそこにあっても、そういうときはテントの奥に逃れてシェラのわきでシェラとともに知らん顔をしているのである。
 もしこれがルイだったらどうだろう。「ルイは友を呼ぶ」というダジャレで命名したぼくの願いを知ってか知らずか、日常でのルイはこれ以上ないほどフレンドリーな成長を遂げてくれた。ほかの犬に対して、あるいは人間に対しても警戒など微塵もせず、いつも友好的な態度で接している。ただ、まだフィールドでの経験が浅いので野生との間近での出逢いはない。せいぜい、1歳になったばかりの夏のキャンプでお腹を虫にボコボコに食われ、かゆくて悲鳴を上げていた程度である。

 ルイに問題があるとすれば音に対する異常な反応だろう。シェラは花火や雷を怖がったが、ルイは台車のたぐいやキックボード、スケートボード、妙な音を発して走るバイク、自転車、自動車などに反応して激しく騒ぐ。キャンプ場では、よそのサイトであってもテントの設営中のポールの動きを怖がって吠えついている。ポールはいうまでもないが、ほかの乗り物もキャンプ場では無縁ではなく、リードを引きちぎるばかりに全身で騒ぎ立てる。そして、その度に持参のクレートに入れられ、シートで目隠しをされて過ごすことになる。

 

■ ルイもむぎ同様コーギーらしさを発揮して
 7月のキャンプに、ぼくたちは新しい装備でのぞんだ。設営が簡便なテントとタープに変えたのである。設営や撤収に要する時間と労力はこれまでの三分の一になった。
 変わったのはテントとタープばかりではなかった。ルイのコーギーらしい習性を見つけることができたのである。これまでのシェルター型のリビングスペースだと外との接触が遮断される。だが、今度のリビングは一枚布の天幕だから外部といつも接触していられる。ここでルイは「番犬」の習性を見せてくれたのである。タープのはしに伏せの姿勢で構え、常に外部を監視する。むぎがキャンプでいつもやっていた使役犬の顔が顕著になった。

 今年の7月18日~21日のキャンプは、気候がまだ梅雨明けにいたらず、連日の夕立は山の中ということもあって、ひとたび降ればゲリラ豪雨といいたくなほど短時間で激しい降雨となった。このキャンプ場を使うようになって20年近くの大半を自分たちのサイトにしてきた場所は、あたりの地形の変化もあって、雨がふりはじめ、地面が吸い込みきれないほどの水量の豪雨となると地表にあふれた雨水が水路となってぼくらのサイトを横切るありさまだった。
 サイトの引っ越しやら雨の波状攻撃やらでゆっくりルイと遊んでいる暇はなかった。ルイが垣間見せた「番犬の習性」もすっかり忘れてしまい、ちゃんと検証してやる余裕を失っていた。


 雨にたたられてぼくらも楽しんでいなかった。ルイにとっても面白くないキャンプだったろう。雨に閉じ込められ、タープの下で所在なげにしているルイを喜ばせてくれたのは、19日に合流したF家のユウキ君がルイにプレゼントしてくれたサッカーボールだった。先の年越しキャンプでもユウキ君が持参したサッカーボールで遊んでもらい、すっかり夢中になっている。ユウキ君もそれゆえにルイのマイボールをプレゼントしてくれたわけだ。
 さっそく雨のあいまに、あいている芝生サイトへ出てルイをロングリードでつなぎ、都心の地元少年サッカーチームのエースストライカーのユウキ君がこのボールで遊んでくれた。ユウキ君の蹴るボールを鼻先で返し、「ルイくん、いいセンスだ」とユウキくんから何度もほめてもらえるほど熱中した。
 しかし、ついつい熱が入ってボールをかじり、まもなくせっかくもらったボールをパンクさせてしまった。


■ また次のキャンプを約束して
 キャンプ最終日が太陽ものぞいて申し分のない撤収日和だったのが、このキャンプのせめてもの救いだった。撤収後、F家のみなさんとは清里の清泉寮のファームショップへ移動し、しばし高原の夏の日差しを楽しんだ。ここもシェラやむぎとは何度も訪れている。ぼくはソフトクリーム以外のここの料理がどうしてもおいしいとは思えないが、施設とロケーションの素晴らしさについつい足を向けてしまう。

 ルイにとってはボール遊びをはじめ、いつも遊んでくれるお兄ちゃんのユウキ君がいっしょなのですっかり満足していた。最終日の日和が申し分ないと、たとえ大雨にたたられた辛いキャンプでも、思い出の大半はまぶしいほどの輝きの中にある。この7月はそんなキャンプだった。
 9月になったら、また、いっしょにキャンプしてねとルイに代わってユウキ君に頼んで快諾を得たのはいうまでもない。


5月のキャンプでクレートがルイの安息の場になりえないと知る

2014-10-04 23:44:00 | ルイとの日々

■ テントのポールに吠えつく弱虫わんこ 
 すっかり遅くなってしまったが、今年9月までのルイとのキャンプのうち、ここに書き損なった分を書き留めておこうと思う。まずは5月の連休のキャンプの様子からはじめたい。
 
 毎年恒例となっている年末から年明けにかけての年越しキャンプをひと区切りとして、5月連休がわが家のキャンプはじめとなる。2月や3月に出かけていたころもあったが、もうそこまでがんばる気力も体力もすでにない。
 ルイがはじめてキャンプにいったのも、1歳を2か月後に控えた一昨年の5月の連休だった。あのときは、まだ幼犬であり、はじめてのキャンプだったから、近所のサイトから地鳴りのように聞こえてくる男性のいびきにテントの中のクレートでおびえてひと晩中唸り、吠えてぼくたちを悩ませた。松本市内を見下ろす山の上のきれいに整備されたキャンプ場の広場サイトだった。

 あれから同じ松本のキャンプ場をはじめ、伊豆、清里、北八ヶ岳山麓、山梨・道志村といきつけのキャンプ場ばかりだが、一緒にキャンプをやってきた。出かけた回数と森で過ごした夜の数でいえば、そろそろベテランのキャンプ犬といってもいい。
 だが、3歳未満の年齢のせいもあるだろうが、毎回、テントの設営と撤収のたびにアルミの長いポール(支柱)を怖がって激しく吠えつく弱虫ぶりは健在である。いまではその度に、クルマに常備してルイの移動に使っている大型のクレートの中に入れてしまう。ポールが見えさえしなければ吠えることもない。

■ 遊具の横に設営した失敗
 今年最初の5月連休キャンプはその混雑ぶりに驚いた。勝手知ったる穴場のようなキャンプ場だったにもかかわらず、まともなサイトはほぼ埋まっていた。去年から異常なまでのキャンプブームに突入しているという実感をこのときまであまりまともに受け止めていなかった。
 ようやく自分たちのテントを張り終えて、そこがルイ連れのぼくたちにとっては最悪の場所だと気づいたがあとの祭りだった。子供用の遊具がすぐそばにあり、その音がルイを刺激するのである。20~30メートルほどのワイヤーが張ってあって、それを滑車にぶら下がって移動するという遊具である。

 案の定、子供たちがやってきてはひっきりなしにこの遊具を使って遊んでいる。キャンプ場が設置したものだから止めろいうわけにもいかない。子供ばかりか大人たちも集まってきて大声で騒いでいる。周囲への迷惑など眼中にない。特に初心者の連中はただでさえテンションが上がっているからなおさら傍若無人である。連休のハイシーズンにいつも眉をひそめている光景だった。
 すぐ横の喧噪にルイもたちまち反応する。その度にルイをクレートに入れ、シートで目隠しをせざるをえない。おかげでルイもわれわれもすっかり消耗した。

■ 来年GWのキャンプはどうしよう?
 もうひとつ、冷え込みも今年は強かった。もっと冷えた年もあったし、ときならぬ積雪に震え上がった年もあったそうだ。雪こそ経験していないが、3、4年ばかり前のゴールデンウィークのときは、あまりの寒さと芳しくない天候に少しも楽しくなくて1泊で退散したこともあった。その年は、麓の町でようやく桜が咲いているような陽気だった。
 今年はキャンプ場の場内の桜も満開だったので安心していたのだが、山の中は冬の名残が濃厚だった。従姉夫妻が一緒でなかったら、寒い上に、子供たちの歓声のたびにルイをクレートに閉じ込める連続だったから、やっぱり早々に切り上げていたかもしれない。

 気の早い話だが、来年の5月の連休もキャンプへいくかと自問すると、「来年はやめておきたい」という答えが返ってくる。理由は寒さのせいではない。5月の連休の冷え込みを一度ならず経験しているから、今回、ぼくたちはひそかに冬の装備もクルマに積み込んでいったし、シュラフも冬用を持参していた。自前の天然毛皮をまとった犬にとって、寒さは人間ほど深刻ではないものの、この時季のキャンプではいつもクレートの中に毛布や市販の犬用ベッドを入れてやる。これまで経験した寒さだけならそれでいいだろう。
 来年、いく気になれないのは、ただ、ひたすら混雑だけである。連休なのだから、混雑だけならまだがまんもする。しかし、たとえクレートに入れられてもルイの耳に届く人間たちの興奮した叫び声やさまざまな異音が混雑にはついてまわる。クレートはルイにとって決して安息の場所というわけではないからだ。
(写真は7月のキャンプのときのもの。5月のキャンプではほとんど写真を撮っていなかった)