ほんの100ページほどの一冊の書籍との出逢いが、むぎとシェラを喪って落ち込んでいたぼくたちの気持ちを明るいものに変えてくれた。いまもまだ悲しいけど、どれだけ救われたかはかりしれない。そして、いまも身近にシェラとむぎがいると信じることができるようなった。
「第20回東京国際ブックフェア」が、今年も7月3日(水)から6日(土)までの4日間、東京・有明の「東京ビッグサイト」で開かれた。今年は4日と5日の2日にわたって会場を訪れた。
本来、ここでは本の販売が目的ではないので、いままで会場で書籍を購入したことはなかったが、今年は違った。5日の帰りがけ、まるで導かれるようにして一冊の本を手に取り、買っていた。そのタイトルに惹かれるものがあったからだ。会社へ戻る地下鉄の中でその本を開き、ぼくはたちまち虜になっていた。
『ペットたちは死後も生きている』(日本教文社)というタイトルにうさんくさいものを感じる方々も少なくないだろうが、ぼくは無意識のうちに祈るような気持ちでこの本を手にしていた。なぜならば、もし、自分の死後にシェラやむぎとまた再会することができたら、といつも思ってきたからである。
リアリストを自認し、死後の世界に懐疑的というよりも、信じないできたぼくだったが、シェラやむぎとまた会いたいという願いがいつのまにか死後の世界があってくれたらいいのにと祈るように願っていた。
人間のみならず、動物たちにも死後の世界がある、と本書は説く。「イギリスで約半世紀にわたって愛読されてきた、愛するペットを失った人たちに贈る癒しの名著」(本書の帯のキャッチフレーズから)だそうである。
心霊とか霊能力を信じない方々には無駄な本である。しかし、ここに紹介されているいくつもの事例に興味があったら、手にしてみる価値はある。
本書と出逢うひと月ほど前、家人が占いを得意とする知人に久しぶりに会ったとき、「あなたの肩に茶と黒のトラ猫が乗って、あなたを守ってるわよ」といわれた。その猫こそ、まぎれもないちょびただ。とりわけ家人を慕い、彼女が溺愛していた気弱でおとなしい、とっても不器用なオス猫である。3歳のときにクルマにはねられて死んでしまった。
では、シェラとむぎはどこにいってしまったのだろうか?
まったく霊能力のないぼくだが、二度ばかり玄関にシェラとむぎを感じたことがある。たしかな姿ではないが、影のようなものも見ている。そのとき、直観的にシェラとむぎだと感じた。むろん、会いたい! と願う気持ちが幻影を見たといえばそれなりの説明になる。だが、あれは錯覚ではなかったと確信している。
本書に逢ったのはそのあとである。もしかしたら、シェラたちが、この本の前に案内してくれて、「父さん、錯覚じゃなくて、わたしたちはいつも横にいるんだよ」と教えてくれたのかもしれない。
ぼくたちのもとから旅だっていったシェラとむぎが、死後の世界でいまもかたときも離れずに一緒にいてくれたら、どんなにか素晴らしいだろう。きっとそうしているにちがいない。
むぎの死に続くシェラとの別れはたしかに辛かったが、むぎのもとへいかせてやったと思えばむしろ喜びになる。そして、自分が死んだとき、シェラやむぎ、そして、ちょびた、ファラ、ダダの猫たちがぼくを迎えてくれたらどんなに素晴らしいだろう。
ぼくはそれを信じたい。