☆元気なムギ
ムギが退院して1週間が経っているが……。
退院の日――。
名前を呼ばれて診察室に入ると、パラボラアンテナのようなエリザベスカラーをつけられたムギが先生に抱かれて出てきた。
「おや?」と思ったのは、いつものムギらしからぬ表情をしていたからだった。
診察台に置かれと、すぐに家人へすり寄り、身体を預けようとして台の上から落ちそうになる。そんなムギを制し、何枚ものレントゲン写真を見ながら手術の様子と経過を聞く。
カラーをつけているが、傷をさして気にする様子はないそうだ。しかも、食欲が減るでもなく、散歩へ連れて行くと走ろうとしたくらい元気だという。
お腹には思ったより大きな6センチほどの縦の傷がある。12カ所縫われていた。
抜糸は1週間から10日後だという。念のため、明日か明後日にもう一度連れてきてほしいとの説明だった。
拍子抜けするくらい先生はクールだった。実際、そんなものだろう。クールにしてくれたほうがこちらも安心する。
摘出した石も見せてくれた。大小10個あまりあった。このあと分析検査に出すという。
ムギの場合、石ができやすい体質だろうから石の成分を調べ、今後、餌によって結石を防ぐ手立てを講じるのだとのことだった。
それにしても、こんなにたくさんの石を膀胱に抱えて、さぞやつらかったろうと、もっと早く手術を決意してやらなかった不明をいまさらながら悔やんだ。
☆険しい顔
術後、まったく平気でいたというような話を聞いて少し安心したが、診察台の上のムギをのぞきこむとやっぱり顔が険しい。
手術が原因というよりも、入院で家を離れ、環境が変わってムギなりに緊張して過ごしたのだろう。
相手が人間の大人ならだれにでもなつくし、ほかの犬に対してもきわめてフレンドリーな性格ではあるが、なんせ、根が臆病な子である。きっと、緊張の連続だったに違いない。
エリザベスカラーを装着すると可愛いくてよく似合うだろうと思っていたが、ぜんぜん似合わない。ちっとも可愛く見えないのだ。
食事と散歩のときは外してやってもかまわないが、傷を舐めたりしないようにふだんはカラーを装着しておくようにとの指示を受けた。だが、可愛く見えないどころか、むしろ痛々しく見えるので、クリニックを出るとさっさと外してしまった。
クルマで家に向かいながら、適当な腹巻をさがすか、小さなTシャツを着せておこうと家人と話した。
これから待っている苦労をまったく知らず、とりあえずムギが帰ってきた喜びが先行し、ぼくたちはまだのんびりしたものだった。
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ムギが退院して1週間が経っているが……。
退院の日――。
名前を呼ばれて診察室に入ると、パラボラアンテナのようなエリザベスカラーをつけられたムギが先生に抱かれて出てきた。
「おや?」と思ったのは、いつものムギらしからぬ表情をしていたからだった。
診察台に置かれと、すぐに家人へすり寄り、身体を預けようとして台の上から落ちそうになる。そんなムギを制し、何枚ものレントゲン写真を見ながら手術の様子と経過を聞く。
カラーをつけているが、傷をさして気にする様子はないそうだ。しかも、食欲が減るでもなく、散歩へ連れて行くと走ろうとしたくらい元気だという。
お腹には思ったより大きな6センチほどの縦の傷がある。12カ所縫われていた。
抜糸は1週間から10日後だという。念のため、明日か明後日にもう一度連れてきてほしいとの説明だった。
拍子抜けするくらい先生はクールだった。実際、そんなものだろう。クールにしてくれたほうがこちらも安心する。
摘出した石も見せてくれた。大小10個あまりあった。このあと分析検査に出すという。
ムギの場合、石ができやすい体質だろうから石の成分を調べ、今後、餌によって結石を防ぐ手立てを講じるのだとのことだった。
それにしても、こんなにたくさんの石を膀胱に抱えて、さぞやつらかったろうと、もっと早く手術を決意してやらなかった不明をいまさらながら悔やんだ。
☆険しい顔
術後、まったく平気でいたというような話を聞いて少し安心したが、診察台の上のムギをのぞきこむとやっぱり顔が険しい。
手術が原因というよりも、入院で家を離れ、環境が変わってムギなりに緊張して過ごしたのだろう。
相手が人間の大人ならだれにでもなつくし、ほかの犬に対してもきわめてフレンドリーな性格ではあるが、なんせ、根が臆病な子である。きっと、緊張の連続だったに違いない。
エリザベスカラーを装着すると可愛いくてよく似合うだろうと思っていたが、ぜんぜん似合わない。ちっとも可愛く見えないのだ。
食事と散歩のときは外してやってもかまわないが、傷を舐めたりしないようにふだんはカラーを装着しておくようにとの指示を受けた。だが、可愛く見えないどころか、むしろ痛々しく見えるので、クリニックを出るとさっさと外してしまった。
クルマで家に向かいながら、適当な腹巻をさがすか、小さなTシャツを着せておこうと家人と話した。
これから待っている苦労をまったく知らず、とりあえずムギが帰ってきた喜びが先行し、ぼくたちはまだのんびりしたものだった。
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