■ いたずらに翻弄される毎日
今朝、出勤のしたくを終えて出かけようとしていると、ルイから激しい攻撃を受けた。ぼくが履いているスリッパを狙って攻撃をしかけてくるのである。
毎朝、ぼくのカバンのショルダーベルトに噛みつき、「とうちゃん、行くな!」とばかり唸って抵抗するルイをリビングから玄関まで廊下を引きずっていくのが日課になってはいるが、朝からのスリッパ強奪攻撃ははじめてだった。
3歳の誕生日を4か月後にひかえ、このところ目に見えておとなくしなっている。3歳はわんこにとって子供から大人への変わり目らしいからルイの変化も自然のなりゆきである。
われわれが70歳を間近にして体力が急激に落ちている頃合いだけに、エネルギッシュなルイがおとなしくなってくれるのを女房は大歓迎でいる。だが、ぼくはもう少しの間、やっぱりこのまま元気でいてれたほうがうれしい。
毎日、ルイのいたずらに翻弄されて、たしかに疲れるが、どれだけ元気づけられているかはかりしれない。こちらの気を引くために突然テーブルの上の何かをくわえてかっぱらい、すばしこく逃げまわるのを、ぼくと女房は口では怒りながら、笑顔で追いかけまわす日々である。
■ やっぱりルイがいてくれるから
そんなルイの姿を見ていると、死んだシェラの遺言を忠実に実行しているかのように思えてならない。以前、このブログでも書いたが、シェラは死ぬ2日前、ぼくたちが留守にした30分ほどの間にルイのいるケージの脇に寄り添い、何事かルイに託している(とぼくたちは信じている)。きっと、「わたしが死んだあと、お父さんやお母さんを元気づけてあげてね」と……。
むぎが死んだ悲しみに勝てずに同じコーギーのルイを迎えたのが3年前。ルイがきてから半年ほどでシェラまで旅立ってしまった。それでもルイがいてくれるおかげで、ぼくたちはペットロスに陥らず、ギリギリのところで踏みとどまることができた。
とはいえ、少しでも油断すれば、ルイはキッチンへ入り込んで野菜だろうとゴミだろうと手当たり次第何かをくわえてくる。玄関から靴を、風呂場から洗面器を、ぼくのカバンに顔を突っ込んで書類を……と、とにかく毎日ルイのいたずらにふりまわされている。それもシェラの遺言を忠実に守っていると思えるから本気で怒ることもできない。なによりもこのいたずらが突然なくなってしまったら、ただただ寂しくてならないだろう。
■ たがいにせつない朝の別れ
昨夜、ソファーに寝転んでiPad miniをのぞいていたとき、ルイがお気に入りのおもちゃをくわえてきて「さあ、とうちゃん、遊ぼうぜ!」と迫ってきたが、面倒なので手にしていたiPadで何枚か写真を撮ってお茶を濁し、そのまま寝てしまった。
そんな調子で今週はたっぷり遊んでやっていない。昨夜も気がつくとおもちゃを放り出し、意気消沈した風情でぼくの足元で寝そべっていた。どうやらその不満が今朝まで尾を引いていたらしい。
朝のスリッパ強奪攻撃は玄関まで続いた。毎朝、どんなにぼくを引き止めても、ぼくが玄関で靴を履いてしまえばルイは奥へ引っ込んでしまい、いくら呼んでも決して見送りにきてくれない。今朝も同じだった。靴を履いて振り向くともうルイの姿はそこになかった。
でも、それでいい。背後の悲しげな鳴き声を振り払って出かけていく自信なんてないからだ。幸い、明日から三連休、たっぷり遊んでやろうと思っている。