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■ 弱虫わんこだからね
ルイが復活した。
日曜日の夜から朝晩の食後に飲ませていた薬の効果だろう。ルイの軟便は少しずつ改善していた。そして、昨夜、女房から、夕方の散歩でルイのウンコは正常に戻っていたと聞いたので、抗生剤をやめた。
このところ元気がなかったのがこの薬のせいなのかどうかはわからない。ぼくは9月からの再三のキャンプの疲れが出たのではないかと疑い、女房は成長しておとなしくなったのだろうと、少なからぬ願望を込めていっていた。
あたかも、ある日突然。大人になったかのように変化するわんこの話はあちこちで聞いてきた。先住犬のシェラの場合は突然ではなく、三歳から四歳になる過程で少しずつおとなしくなっていった。
もう一匹のむぎは最初からおとなし子だったから、どのへんで成長したのかまったくわからない。むしろ、終生、シェラという「母犬」に保護されながら、最後まで子供のままだったかもしれない。それほどまでに幸せな子だった。
ルイは7月ですでに四歳になっている。たいていのわんこたちが三歳で「おとなになった」と飼い主たちを納得させているのにくらべ、ルイはいまひとつ幼さが残る。多少の成長はたしかにあっても、「おまえ、いいかげんにしろよ」というぼくからの叱責が絶えない。
驚くほどの弱虫わんこだから仕方のない面はあるが、やっぱり幼稚さが残るのは飼い主として認めざるをえない。
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■ このまま成長しなかったら……
今朝、散歩から帰り、自分のゴハンを食べ終わり、ぼくが食事をしていると、やけに足元を動きまわる。むろん、それだけ復活していたからだろうが、やがて、どこから持ってきたのか、電線のコードを束ねるベルトをくわえていた。
いつものようにぼくが追い立て、女房がつかまえて取り上げる。どこかへいったと思ったら、今度は何やらメモをくわえてきて破いている。これも同様に取り上げると、また、別のものの物色をはじめた。
決して自分のオモチャをくわえない。ぼくが怒ったり、追いかけたりするとわかっているものをこれ見よがしに運んでくるのである。ときには玄関までいって重い靴を引きずってくる。ルイにとっては遊びでも、出勤を控えたぼくにはそれどころじゃないのである。
「今夜、早く帰ってきて遊んでやるからな」といっても、納得していたずらがやむわけではない。むしろ、出勤で玄関へ向かうぼくにいつも以上に激しく追いすがり、カバンの肩掛けのベルトに噛みつき、「とうちゃん、いくな!」といいたげにドスのきいた唸り声を上げながら引っ張る。
女房には気の毒だが、まだルイがおとなになりきるにはしばし時間がかかりそうである。女房の危惧は、時間がかかってもいずれ落ち着いてくれればいいけれど、ずっとこのままの暴れん坊だったらついていかれないということである。まだ、自分たちが若ければいいが、高齢の飼い主にとって、やんちゃ坊主にずっとつきあっていく自信がなくなってきているということだ。
ぼくのほうは、そんなルイがかわいくてかわいくて、ずっと幼稚でもかまわないと本気で思っている。
*二枚の写真は今夜のルイの狼藉三昧ぶり。