愛する犬と暮らす

この子たちに出逢えてよかった。

足早に老いていく

2011-03-29 23:43:51 | 日記

 
 月曜日の朝、いつものように6時に起きてリビングへ移動するぼくに従うシェラの様子がいつもとまるで違っていた。激しくよろけそうになる身体を懸命に支えて歩き、水を飲むのも前足を踏ん張りながら、それでもなかなか思うように飲めずに時間がかかった。
 
 明け方からベッドに上がってきて短く吠えながら訴えていた原因がようやくわかった。毎朝、夜明けどきにやってきては吠えるいつもの行動とは少し違ってはいたが、まさか、こんな姿を見せつけられようとは思いもよらなかったので驚くばかりだった。
 原因はわかっていた。日曜日にほかのマンションで3階まで階段を昇り降りしたのが悪かった。日曜日はそれからも出先で散歩をして、夕方、大型電器店の駐車場にとめたクルマに向かう途中、かなりヘタった歩き方をしているのに気づいた。
 
 夜、家では感じなかったが、朝方に前日の疲労が一気に出てしまったらしい。散歩は最低の距離で終えた。シェラ自身もわかっているのか、すぐに排泄を終えてくれた。
 殊勝にも、毎朝、排泄をなかなかすませてくれずにてこずらせるムギも月曜日は早めに終えた。
 
 この日は、家人が4月からはじめる店のプレオープンの初日だった。3月のなかばにオープン予定でいたが、地震とそれに続く原発事故で世間が騒然としていたので4月にずれこんでいた。土曜日になって、周りからのリクエストもあって急遽プレオープンを決めたのである。
 
 結局、家人はスタッフの方々にまかせて店へ行かなかった。シェラには、以前、クリニックでもらってあった栄養剤を飲ませて様子を見ることにした。足の自由が思い通りにならなくても、気力は充溢しているのが救いである。
 午後、家人に電話をかけてその後の状態を訊くと、かなり好転していた。時間の経過がそうさせたのか、はたまた栄養剤のおかげなのか、あるいはその両方のおかげなのか……?
 いや、いや、シェラの気力のなせるわざであろう。
 
 今朝の散歩はシェラがルートを選んだ。休日の朝用のショート・コースである。まだ少し歩き方がおかしい。
 これからは、階段をなるべく避けなくてはならない。ぼくたち人間の何倍もの速さで年をとっているのである。そのことへの配慮を失念していた。


恐怖心が磨く学習能力

2011-03-23 21:56:18 | 日記


 「あれ? ムギがいない」
 地震の揺れがおさまってあたりを見るとムギの姿がない。シェラはかすかな揺れがはじまると、ゆっくり立ち上がり廊下から寝室へ入っていった。その寝室にもムギの姿はなかった。玄関の扉の前にもいない。およそ、ムギが隠れそうな場所をのぞいたが、忽然と消えてしまった。
 「まさか……」と思いつつ浴室をのぞくと、怯えた顔のムギと目が合った。いつ、そこに逃げ込んだのだろう。

 今朝、午前7時12分、福島浜通りを震源とするマグニチュード6の地震が発生した。テレビから警報音が鳴り、画面には福島、茨城では強い揺れに注意するようにとの文字が映った。
 やがて天井から吊っている電灯が揺れだした。身体にはあまり感じない程度の揺れである。あとで確認するとぼくが住んでいる町田市は震度2だった。

 11日の東北地方太平洋沖地震以来、ムギは怯えたままでいる。ぼくか家人のそばにいるか、シェラの近くで寝ているかだった。以前は、ソファーの裏側など巣穴のようなお気に入りの空間に入り込んで寝ていたのに、あの地震からこの方、そうした場所に近づかなくなった。

 ふだん、ひとりでは決して入らない浴室へなぜ逃げ込んだのかには理由がある。11日の本震のとき、家人とともに浴室へ逃げていた。
 地震がきたら風呂場へ逃げろ――かつてそんな“常識”が語られた時代があった。風呂場はあのスペースの四隅に柱があるから丈夫なのだ、と。伝統的な日本家屋ならともかく、このマンションの場合はユニット・バスと呼ばれるプラスチックの一体型の箱であり、強度についてはどこまで信頼できるかわからない。

 だが、リビングなどでのテレビが飛んできたり、サイドボードが倒れてくる危険からは身を守ることができる。まさか、ムギがそこまで考えて浴室に逃げたわけではないが、先々週に家人と逃げ込んだのを憶えていて身を潜めたのは容易に想像がつく。

 わが家のわんこながらその学習能力をほめてやりたい。たまたま浴室の扉が開いていたから入り込んだのだが……。これがシェラとなると自分でドアノブを操作して解錠し、ドアを開けて入っていく。
 雷や花火を怖がっていたころは始終、浴室に逃げ込んでいた。そのときの痕跡が浴室のノブにいくつもの傷となって残っている。

 雷にビビり、ぼくの部屋へ逃げ込んできたのはいいが、出たり入ったりとうるさいのでドアを閉めてしまったら、自分で開けて出ていこうとしたのが下の写真である。
 押してドアを開けることはできても、引く知恵はなかった。引く知恵がないだけに、浴室のドア・レバーは傷だらけにされてしまったわけだ。

 いずれにせよ、「怖い!」という本能的な危機意識がそうした行動になるのだろう。
 だが、今朝のムギは、いったい、いつ浴室に逃げ込んだのだろう。何日か前にも、地震がくるという警報が鳴ったときには、浴室ではなく、玄関の扉の前で怯えていた。その素早さを見ると、地震の予兆を感知する動物的な特殊能力が備わっているように思えてならない。

 シェラも雷に関しては予知能力が備わっているかのような反応を示したが、これは遠雷を犬本来のすぐれた聴覚でとらえていると解釈してきた。ムギの地震予知も、きっとなんらかの説明がつくのだろうが、容易には思いつかない。

 昨日の朝までは、出勤で出かけるぼくについてこようとしたムギだったが、今朝は呼んでも出てこなかった。「おお、きっと今日はもう地震はないぞ」と思ったら、会社へ着く前に大きな余震があった。


私を会社へ連れてって!

2011-03-18 17:34:59 | 日記


 久しぶりのエントリーです。
 
 未曾有の大地震・東北関東大震災から一週間、犠牲者の皆様のご冥福をお祈りするとともに、被災なさった方々に心からのお見舞いを申し上げます。
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 震災の被災地から遠い東京でも地震の影響は色濃く、とりわけ、電力不足から交通機関の自主規制がおこなわれ、混乱に明け暮れた一週間だった。計画停電(輪番停電)の実施によって、予測できたとはいえ、交通事故が頻発し、死者も出て深刻な事態を招いている。
 それでも、この震災は日本というこの国が直面した非常事態であり、国民すべてが心をひとつにして乗り切らなくてはならない。そのときようやくわれわれも成熟した市民社会の国だと胸を張ることができる。

 一週間前の3月11日午後2時46分、東北太平洋沖大地震の発生ととももに東京も揺れにゆれた。わが家には女房とシェラ(16歳♀雑種)、ムギ(12歳♀Wコーギー)がいた。女房は家具が倒れてきたり、テレビが飛んでこない場所として風呂場へ逃げ込んだ。ムギもビックリして従ったが、シェラはいくら呼んでさっぱりこない。揺れている部屋であたりをうかがっていたそうである。
 
 あの日から、ムギがすっかりおびえたままでいる。地震の最中にオシッコをもらしてしまった。翌々日の日曜日にも、朝起きると部屋の中にムギのものと思われるおもらしの痕跡があった。
 地震(余震)が怖くての粗相だろうとは思ったが、ムギは腎臓に前歴がある。「頻尿」は再発ののサインかもしれない。行きつけのクリニックの日曜日の診療時間は午前中のみ。急いで連れて行った。
 「たぶん、地震のせいでしょう」というのがドクターの診断だった。地震におびえ、いつもと違う行動をとるわんこたちがたくさんクリニックにきているそうだ。
 
 以来、夜はあまり感じないが、朝のムギが以前と変わった。日を追ってぼくに張りつくようになった。
 前は、会社へ出かけていくぼくに見向きもしなかったというのに、一昨日の朝は玄関へ出てきて見送ってくれた。連れ
 昨日は玄関の扉の前で待っていて一緒にいきたがる。今朝は出かけるしたくをしているぼくのあとをついてまわり、立ち止まるとぼくの足にお尻をつけて離れない。移動するとまたついてくる。玄関で靴を履いていると、写真のように昨日同様に「一緒にいきたい!」と待っている。
 
 非常時にはだれに頼ったらいいのかよ~くわかっているらしい。
 それにひきかえ、シェラのほうは今朝もベッドの下で熟睡していて見送りにも出てこなかった。
 雷や花火に敏感に反応し、あれほど恐怖に駆られたわんこも地震にはへーちゃら。ムギは雷にも花火にもまったく動じなかったというのに地震にはビビリきっている。
 できることなら会社へ連れて行ってやりたいのだが……。