■ ルイという悪童の存在
来月の17日でルイが満3歳を迎える。
かれこれ20年前、先住犬のシェラを飼ってまもなく、その落ち着きのない行動に辟易していたとき、休日の朝の散歩の公園で出逢った方から、飼っているわんこが、「3歳になったらとたんに落ち着いた」との話をうかがった。なるほど、脇には落ち着き払って控えている若いビーグルがいた。
それじゃこのシェラも3歳になれば落ち着いてくれるだろうと期待して3歳を待った。だが、シェラは3歳をだいぶ過ぎても相変わらずだった。「やっぱり個体差があるんだろうね」と、いくぶん気落ちしながら家人と話していたが、そのシェラも気がつくといつのまにか落ち着いた子になっていた。4歳を迎えるまでもなく、そう、いつのまにか大人になったようなのである。
幼さゆえの好奇心からだろうが、散歩中のシェラの落ち着きない行動はルイも同様である。むしろ、シェラ以上といってもいい。シェラは道ばたのそこかしこに残るにおいを嗅ぐことにかぎられていた。それでも右に左にと激しく動くので一刻たりとも気が抜けなかった。
■ ルイばかりかぼくにも変化が?
ルイも同じではあるが、それに加えて上の写真のように電車を追いかけるは、大きな音を上げるトラック、オートバイも追いかけようとするし、スケートボード、キックボード、台車の車輪等に攻撃をしかける点ではシェラ以上に苦労してきた。シェラと決定的なちがいは家の中でも、何かいたずらすることはないかと探しまわり、こちらのちょっとの油断で玄関からは靴、バスルームからは洗面器、キッチンからはジャガイモをくわえてきて、「さあ、どうだ」という顔で追いかけてもらうのを待っている。何もくわえてくるものがないと、足下からスリッパをかっぱらっていっていってしまう。そんな悪童ぶりにほとほと手を焼いていた。
3歳になって早く落ち着いてほしいとの願いはシェラの比ではなかった。「おまえはルイじゃなくてワルイだ!」と何度叱ってきたかわからない。だが、悪童ぶりのひどさとともに、いかにも幼稚な性格を思うと3歳で迎える成長のマイルポストは、まだだいぶ先であろと早々とあきらめていた矢先、ここへきてルイに変化があらわれた。落ち着く兆候が見えはじめたのである。
顔つきも変わってきた。そう思って以前の写真と比較すると大人顔になってきたのが顕著である。そういえば、最近、ルイの写真をあまり写していない。飼い主であるぼくの気持ちにも変化が生まれているのかもしれない。
■ 未練が消えたわけではない
変わってきたといっても劇的な変化ではない。1年前、いや、半年よりはだいぶ落ち着いてきたらしいという程度である。散歩のとき、写真のように路面に鼻をこすりつけるようにして歩き、突然、身をひるがえす動きはまだ以前のままである。音をたてて動くものへの攻撃にも変わりはない。ただ、家の中で、たとえば、はいてるスリッパを風のようにさらっていくようなまねが鳴りをひそめてきた。あとは、昼間も夜も寝ている時間がふえた。
けっきょくは、「だいぶおとなしくなった」という程度なのだが、それでもぼくたちにはかなり違う。ただの兆候でしかなくてもどこかでほっとしている。ほっとしながら、心のどこかでもう少しやんちゃぶりを楽しませてほしいという未練があるのも否定できない。
こちらの気を引こうとしてやっているルイのいたずらに翻弄されながら、いつもぼくたちは笑顔で追いかけまわしてきた。いたずら小僧のルイを心底かわいいと思ってしまう。それでいて成長も願っている。飼い主とはまことに勝手なものである。