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外へ出るとたちまちフリーズしてしまう(31日朝)
☆年越しキャンプで過ごしているはずの夜
例年ならば、昨日の30日からぼくたちは伊豆の大仁にあるキャンプ場へ年越しキャンプに出かけていた。そして、2日ないしは3日に帰るのが常だった。
むろん、今年も「シェラが元気でいてくれるなら……」という前提でキャンプのつもりだった。だが、7月にむぎが逝ってしまい、一時はすっかりその気が失せてしまった。むぎの死と前後してシェラの衰えも目立ちはじめ、ますます今回の年越しキャンプは現実的でなくなっていた。
30日の昼過ぎにキャンプ場へ着き、クラブハウスでチェックインの手続きを終えると毎年使わせてもらっているエリアのテントサイトへと移動する。クルマを停め、まず、シェラとむぎを出してやる。芝生の上で二匹が喜んで転がしたり、転がされたりして遊んでいる様子を見ながら「今年も揃ってこれたね。よかった」と笑顔でテントの設営にかかっていた。
だが、今年はむぎがいない。そんな寂しいキャンプを覚悟しなくてはならない。だから、早々と、今年はやめようと決意した。
それでも、ルイがいてシェラも元気を取り戻しはじめたのを見て、もしかしたら今年もいかれるかもしれないと何度か思った。しかし、結局、シェラのガンが見つかり、それに伴う腎不全の発症によって年越しキャンプどころではなくなった。
朝、目が覚めればすぐにシェラを探し、ちゃんと呼吸をしているか確認する。食欲があれば喜び、食べ残せば心配になる。シェラの一挙手一投足を息を殺して見つめ、その都度、一喜一憂する日々が続いている。
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朝の散歩へ出ていけるだけでもがありがたい(31日朝)
☆突然、点滴を嫌がるなんて……
点滴を家で行うようになって一週間、シェラもだいぶ慣れたし、ぼくたちもかなり手際よくおこなえるようになっているはずだった。だが、昨夜のシェラは、点滴に抵抗した。なぜだかはわからないが、激しく嫌がって手こずらせてくれたのである。おかげで、二度も針が抜け、三度もやり直す羽目になった。
ぼくは点滴器の操作を家人に任せ、腹這いにさせたシェラの身体に覆いかぶさって抱き、ずっとやさしく語りかけた。どんなにシェラを愛しているかを、出逢ったときの喜びの記憶を、17年になろうとするさまざまな楽しかった思い出を、そして、いま、どれほど大切な存在なのかを、頬を寄せ、耳を撫でてやりながら語り続けた。
点滴が終わるまでのおよそ20分、シェラは静かな息づかいで、微動だにしないままぼくの話を聞いてくれた。
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食べて寝ての状態をどこまで維持できるだろうか?(31日夜)
☆もっとベッタリしていよう
先ほど、夕飯を食べているとぼくのケータイが鳴った。淡路島へ年越しキャンプに出かけている犬連れキャンプの仲間たちである。シェラの様子を心配して盛り上がっている最中に電話をくださった。ありがたいことである。
兵庫の瀬戸内海に面した街にお住まいのKさんとは、かれこれ8年のおつきあいだし、もうひとりの琵琶湖に面した街にお住いのPさんともそれに近い年月、両ファミリーとは、ときたま一緒にキャンプをしている。今年の元旦はPさんご夫妻と一緒に伊豆のキャンプ場で迎えた。
ご両人ともアグレッシブな素敵な女性であり、Kさんの家には、犬と猫以外にも多種多様の動物がいて、「動物園」と冷やかされるほどである。また、Pさんのお宅には二匹の可愛いコーギー娘がいる。
せっかく皆さんから心配いただいているが、シェラのほうは食欲も衰えず、昨日から出ていなかったウンコも夕方の散歩で少し出て胸をなでおろしたところである。しかし、やっぱり少しずつ痩せていくのがわかる。顔がかなりほっそりしてしまった。
死に急ぐことはない。ゆっくりと生きていこう。痛みや苦しみがないようにできるかぎりの手助けをしよう。
そして、この正月の休みを心ゆくまで一緒に過ごそう。キャンプよりも、もっと愉しい濃密な時間を作ろう。
シェラとの最後の時間を……。
【追記】この記事を書いてアップロードする寸前の午後8時、毎年、年越しキャンプでお世話になっているキャンプ場の「モビリティーパーク」から電話をいただいた。予約が入っているけどどうしましたという確認の電話である。ぼくは予約など入れていない。毎年、予約なしにいってお願いしている。それもかれこれ10年近く……。
きっと、顔見知りのスタッフの方が気を利かせて、ぼくのお気に入りのテントサイトをキープしておいてくださったのだろう。なんともありがたい。
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モビリティーパークでの年越しキャンプ風景(2011年元旦の朝)
今年は辛く、悲しいことがたくさんあったが、このブログを盛り上げてくださっている未見の皆さまを含め、多くの方々の優しさに触れることができた。おかげでなんとも清々しい大晦日を過ごしている。こうしてみると、今年はそんなに悪い年じゃなかったと思えてきた。