元・還暦社労士の「ぼちぼち日記」

還暦をずっと前に迎えた(元)社労士の新たな挑戦!ボチボチとせこせこせず確実に、人生の価値を見出そうとするものです。

退職願いの撤回は、できるのか?

2013-08-12 16:24:04 | 社会保険労務士
 承諾期間を定めた申し込みは、その期間内撤回できない(民法521条)とあるは、労働契約に適用されるのか!?

 退職については、通常、「依願退職」と呼ばれるところの、労働者と使用者との合意によって将来に向かって労働契約の解消が行われます。正社員等雇用期間の定めをしない場合にあっては、労働者はいつでも退職を申し出ることができ、使用者が2週間以内に承諾すれば、合意解約になることになります。さらに、使用者が承諾をしなかったとしても、2週間経過すれば、雇用契約は終了することになっています。なお、月給等期間によって報酬を定めたものについては、その前の月の前半(15日まで)にその申し込みをしなければならないとされています。(民法627条)

 ところで、承諾期間を定めた(使用者の承諾がなくても2週間経過すると申し込みの効力が生じるから、使用者は2週間以内に承諾しなければならないことになる。)申し込みの場合には、その承諾期間内にはその申し込みは取り消すことはできないとの規定(民法521条、申込みの一般原則)があるので、その2週間の間は、退職の撤回はできないのでしょうか。

 退職の申し込みの撤回は、この労働契約にこの民法の一般原則が適用になるかであるが、そのまま適用にならず、退職の申し込みの撤回は可能とされているところである。その理由として、「労働契約関係は継続的契約関係であり、日々の指示就労を介して人的にも強く結びついていることを考慮すると、民法の承諾期間内の申し込みの取り消しの禁止は、適用されない」(昭和48年田辺鉄工事件)としている。すなわち、会社側から、本人の退職を承諾する旨の意思表示がなされる前であれば、退職の撤回は可能ということになる。

 ただし、「使用者に不測の損害を与える等信義に反する等の特段の事情があるときは撤回できない」(同 田辺鉄工事件)とあるから、後任採用を行い、引き継ぎを指示がなされるなどの特別の事情がある場合は、撤回は困難ということになろう。

 なお、退職願いの申し出先が、直属の上司でなく、人事権限のある人事部長であるとした場合、その人事部長がその場で了解した場合には、退職の合意解約はその場でなされたということになりますので、その後の撤回は無理ということになります。

 参考:採用から退職までの法律知識(安西愈著、中央経済社)
    新・労働法実務相談(労働時報別冊、労働行政)
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