元・還暦社労士の「ぼちぼち日記」

還暦をずっと前に迎えた(元)社労士の新たな挑戦!ボチボチとせこせこせず確実に、人生の価値を見出そうとするものです。

テレワークと「みなし労働時間」=より利用しやすく⇒労働時間を算定しがたい場合とは

2021-03-01 11:30:55 | 社会保険労務士
 3条件①自宅②使用者の具体的指示のないこと③労働者の即応義務のないこと 

 テレワーク(在宅勤務を主に想定する)においては、みなし労働時間の適用がなされることがある。みなし労働時間とは、実際の労働時間にかかわらず、あらかじめ定めた時間を労働時間とみなす制度です。(労基法第38条の2)テレワークのみなし労働時間については、従来は事業場外であるにもかかわらず、ケイタイを持たせたりパソコン等により労働時間の管理ができると考えたのか、その適用要件である「労働時間を算定しがたいとき」とは、認めがたい雰囲気があり、なかなか当制度の適用はむずかしかった。社労士の中にも、従来は、在宅勤務について、みなし労働時間に否定的な態度をとる方も多かったように思う。

 厚生労働省は、この否定的な方針を一転して、平成16年に通達を出し、さらに、平成16年通達での「自宅の個室の確保等」を要件としていたのがこの要件を取っ払った上、詳細でより実態的な通達を平成20年に発出して、使いやすくして、テレワークの促進を図っている。

 そのみなし労働時間制の適用にあたって、次のように厚生労働省のガイドラインでは、述べている。

 『在宅勤務については、事業主が労働者の私生活にみやみに介入すべきではない自宅で勤務が行われ、労働者の勤務時間帯と日常生活時間帯が混在せざるを得ない働き方であることから、一定の場合には、労働時間を算定しがたい働き方として、・・・事業外労働のみなし労働時間制を適用することができる。』
 すなわち、プライバシーの侵害と日常生活の混在の観点から、一定の場合には、労働時間を管理できない場合ありとの結論に至ったようである。

 では、みなし時間制を認める条件とは何かということであるが、次の3点である。

 1、業務が私生活を含む自宅を行われること
 これについては、通達全体では、サテライトオフィス勤務等も含んでいるようにも思えるが、当例では「在宅勤務」に限って言及する。

 2、パソコン、スマホ、ケイタイ等の情報通信機器により使用者の指示(黙示を含む)に即応する義務がない状態におくこと
 すなわち、使用者が労働者に対して情報通信機器を用いて随時具体的指示を行うことが可能であり、かつ、使用者からの具体的な指示に備えて待機(待機しながら実作業を行っている場合を含む。)している状態にないこと
(具体例1)・回線が接続されているだけで、労働者が自由に情報通信機器から離れることや通信可能な状態を切断することが認められている場合
(具体例2)・会社支給の携帯電話等を所持しても、労働者の即応の義務が課されていないことが明らかである場合

 3、随時使用者の具体的な指示に基づいて業務を行っていないこと
 一方で、例えば、当該業務の当該業務の目的、目標、期限等の基本的事項を指示することや、これら基本的事項について所要の変更を指示することは含まれない。

 要は、在宅勤務のみなし労働時間制の適用には、1、在宅勤務であること 2、会社からの具体的指示に対してすぐに応答する義務がないこと 3、会社からの指示が基本的な事項(業務の目的や期限等)にとまること が条件となっている。

 ただし、くれぐれも、常に残業しているような会社で、いつもの所定労働時間であるみなし労働時間制を導入するのでは、会社の計算上の残業時間(?)は減ることになるが、それは認められません。これが認められるのは、あくまでも通常の労働時間が、増減はあれ所定労働時間と同様な働き方の時間となる場合に限ります。業務を遂行するためにいつもの所定労働時間を超えて労働することが必要な場合には、その必要とされる時間が労働したものとみなされること(労使の書面による協定があるときは、この協定で定める時間がこの必要な時間となるが、労基署への届け出が必要)になっているからです。(労基法第38条の2 但し書き)
 
 また、深夜業や法定休日労働については、業務をしないようにするのが適当と考えます。この時間に限りなく業務を行うことは、みなし労働時間の趣旨からいっても、休養の点からも望ましいものではなく、休日労働については、みなし労働の適用外との見解もあるからです。

 さらに、目が届かず仕事をさぼりがちの者には、テレワークの解除も用意。また、逆に働きすぎによる健康障害に気をつけること、法的に言えば労働安全法の労働時間の把握義務があります。
(この法的義務を果たそうとする会社は、結局、それでは「労働時間の把握しなければ」とのことから、このみなし制度の適用はむずかしいと感じる会社も多いかもしれません。)

 <就業規則の例> 在宅勤務については、次の各号に該当する場合には、会社が必要と認めたときに、就業規則に規定する所定労働時間の労働をしたこととみなすものとする。
 ① 従業員の自宅において業務に従事していること
 ② 会社と在宅勤務者との情報通信技術の接続は、在宅勤務者にゆだねられていること
 ③ 在宅勤務者の業務遂行が、常時使用者からの随時指示を受けなければできないものではないこと
 ④ 深夜、休日には業務を行わないこと 

参考 割増賃金の基本と実務 第2版 石嵜伸憲編集 横山直樹他著 中央経済社 p225~
   テレワークの労務管理のツボとコツがゼッタイにわかる本 秀和システム 寺林顕ほか著
   情報通信技術活用の事業外勤務等ガイドライン(厚生労働省)
  
  
  
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