後期ゴシック彫刻・市民運動・演劇教育

小学校大学教師体験から演劇教育の実践と理論、憲法九条を活かす市民運動の現在、後期ゴシック彫刻の魅力について語る。

〔358〕髙﨑彰著『アカハチ- 沖縄・八重山の英雄オヤケ赤蜂を探して』は50年越しの探索、思索の結晶です。

2021年04月14日 | 図書案内
 髙﨑彰さんは、東京都の公立中学校で社会科を教える教師でした。その後、教頭、校長などの管理職、東京都教育委員会では指導主事、室長を歴任しています。退職後は数カ所の大学で講師に迎えられました。
 私とはまさに同世代で、日本演劇教育連盟の常任委員として研究部などで共に活動した演劇教育の仲間です。管理職時代に東京都中学校演劇教育研究会長、全国中学校文化連盟会長・理事長も務められています。
 1980年代、学校教育で「ゆとりの時間」導入時に、佐藤学さん、故・如月小春さん、髙﨑さんの公開鼎談が元になった特集を雑誌「演劇と教育」で組んで評判になりました。また雑誌の500号記念では鎌田慧さん、髙﨑さんと私の鼎談を我が家で行ったこともありました。

 そんな髙﨑さんが、昨年の暮れ、ほとんど2段組で300頁を超える大著『アカハチ- 沖縄・八重山の英雄オヤケ赤蜂を探して』を出版しました。欠かさなかった研究部会後の呑み会で時折熱く話された大学時代の沖縄フィールドワークの全貌がここには記されていました。50年前の卒業論文や学術論文、調査報告書がその中核を占めるのですが、たんに学生が書いたものと切り捨てにできないくらいにレベルが高いものです。多くの研究者が髙﨑論文に注目していた事実も丁寧に書かれています。
 研究書ということでとっつきにくい本をイメージするかもしれませんが、けしてそんなことはありません。表紙の絵や本文中の「旅の絵日記」はお連れ合いの髙﨑美也子さん(元中学校美術教師)が温かくユーモラスに健筆を振るっています。アカハチの夫婦が髙﨑夫妻に重なって映ります。
「50 年ぶりの八重山の島々を訪ねて」と「最近の〈オケヤ・アカハチ〉をめぐる研究・実践の動向」で卒業論文や学術論文などを挟み込んでいるのも本書を読みやすくしていることに繋がっているようです。
 興味深かったのは、髙﨑さんの卒業論文や学術論文が「早稲田大学アジア学会」というサークル活動での成果であるということです。70年安保で揺れる学内は学生運動のるつぼでした。そうした時代背景を髙﨑さんは活写しています。同時代を生きた者としてある感慨が湧いてきます。
 いずれにして本書はオヤケ赤蜂に関する基本的文献の要件を備えているのは間違いはありません。カーリルで検索すると、沖縄にある多くの図書館が蔵書にしていることがわかります。アマゾンでは素敵なコメントを目にすることができます。

 沖縄やアカハチに興味がある方は是非本書を手に取ってみてください。

■髙﨑彰『アカハチ- 沖縄・八重山の英雄オヤケ赤蜂を探して』ハガツサブックス(カーリルより)

石垣島、八重山諸島に伝わる英雄伝説??
逆賊とも呼ばれたアカハチの正体に迫る

 沖縄・波照間島で生まれ、のちに石垣島の大浜村(現在の石垣市大浜) を根拠地とした豪族の首領となったといわれるオヤケアカハチ。正義感が強く、島の自由のために先頭に立って権力にたち向い、八重山の人々から太陽と崇められ信望を一身に集めていた??。そう伝わる一方で、赤い髪に不思議な色をした眼……日本人離れしたその風貌からか、“ 逆賊 ” であったという説もある。そんな沖縄の英雄に魅せられた研究者が、50年前に書いた論文をもとに最新研究を加え、オヤケアカハチ考をまとめたのが本書だ。今なお八重山の人々の信仰の対象として崇められ続けているアカハチの正体とは??? その謎に迫る。

■目次
はじめに
第 1 章 50 年ぶりの八重山の島々を訪ねて
第 2 章 卒業 論文『オヤケ赤蜂の乱の研究』(1971 年)
第 3 章 学術論文『「李朝 実録」より見た 15 世紀末の南西諸島・先島社会』(1971 年)
第 4 章 調査報告書『古見の御嶽』(1969 年)
第 5 章 最近の〈オケヤ・アカハチ〉をめぐる研究・実践の動向
おわりに

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