エピローグ

終楽日に向かう日々を、新鮮な感動と限りない憧憬をもって綴る
四季それぞれの徒然の記。

赤まま

2013年10月02日 | ポエム
赤まんまとも言う。
「ままごと」には、必須アイテムである。

またイヌタデの花とも称するけれど、料理の脇に構える蓼は、違った種である。
ぼくの学んでいる句会で、リハビリに励む女性が赤まんまを詠った。
身体が意のままにならぬ日々の苦闘が偲ばれる。



幼かった日々が、より新鮮に蘇るのであろうか。
そうだとすると、赤まんまの咲く意味は深い。

詩人・村野四郎もまた、赤まんまを歌った。
赤まんまに託した詩情は、膨らんでくるけれど悲痛である。
あるものへの怒りである。







「赤ままの引き寄す力時空超ゆ」








    歌

       中野重治



  おまえは歌うな

  おまえは赤ままの花やとんぼの羽根を歌うな

  風のささやきや女の髪の毛の匂いを歌うな

  すべてのひよわなもの

  すべてのうそうそとしたもの

  すべての物憂げなものを撥(はじ)き去れ

  すべての風情を擯斥(ひんせき)せよ

  もっぱら正直のところを

  腹の足しになるところを

  胸元を突き上げて来るぎりぎりのところを歌え

  たたかれることによって弾(は)ねかえる歌を

  恥辱の底から勇気をくみ来る歌を

  それらの歌々を

  咽喉をふくらまして厳しい韻律に歌い上げよ

  それらの歌々を

  行く行く人々の胸郭にたたきこめ


中野重治の「歌」という詩を全文紹介した。
ぼくの好きな詩の一つである。



赤まんまの葉が紅葉している。
これが集まれば、草紅葉だ。

そうだ、今年は日光戦場ヶ原の草紅葉を見に出かけよう。

大地の子

2013年10月01日 | ポエム
山崎豊子さんが亡くなった。
白い巨塔、沈まぬ太陽、そして大地の子と徹底した取材に基づく長編小説を発表し続けた。
文豪といって良かろう。

時々の社会的のテーマに挑み続けた作家生涯でもあった。
人は「社会派作家」というけれど、山崎さんは目の前の事実を当たり前に庶民の感覚で書いたのだと思う。
同時に拭い難い、社会に対する怒りを書いたのであった。

ぼくは、残留孤児の問題に関わった事から「大地の子」が心に残っている。


大地の子



このユーチュ-ブには最終回が、記録されている。
日本でも、中国の子でもない「ぼくは大地の子だ!」と地の叫びを吐露する場面だ。
日本に帰って来い、という父。
育ててくれた中国人の両親。
その狭間で悩む主人公が導き出した「結論」である。



素晴らしい、ドラマに仕立てたNHK感謝する。



沈まぬ太陽。
日航機墜落事故に題材を得て書かれた。



白い巨塔。
医学部の教授選の醜さを描いた。
医より権力を欲する一の差がが描かれている。

映画で主人公を演じた田宮二郎さんは、後年自栽した。
また、第二次世界大戦で在米日本人が対日戦争で戦った苦悩を描いたのが「二つの祖国」だ。







「桐一葉社会を暴き豊子逝く」





大切な作家を亡くした。
彼女の筆が、大震災をどう描くのか。
あるいは、今の政治的困惑をどう描くのか。
注目していた矢先の訃報であった。



            荒 野人