パンを発酵させる「イースト」と「天然酵母」の違いは何となくですがご存じだと思います。
でも「イースト」同様にビニール袋に入った「天然酵母」があることを知っている人は少ないのではないでしょうか。
世の中に出回っている「天然酵母パン」のほとんどが、パン酵母会社から仕入れた「天然酵母」を使っているようです。
そのことを知ったのはこの本を読んでからです。
『田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」(講談社)』です。
パン好きの私ですから、その本を読んでから本物の天然酵母パンが食べてみたいとずっと思っていました。その作者は遠く岡山(現在では鳥取?)でパン屋さんを営んでいるようです。機会があれば行ってみたいと思いながら時は過ぎていきました。
先日、ワインショップのお客様に「京都府亀岡市の田舎に天然酵母のパン屋さんがある」という情報を教えていただきました。その場でネット検索しホームページをチェックすると、先の本に出てきたパン屋さんとよく似た雰囲気のお店でした。
早く食べたくて、早速次の休みに出かけました。大阪から北に向かって走り、箕面のトンネルを抜けてしばらく行くと京都府亀岡市に入ります。亀岡に入って峠を越え下りに差し掛かったところにそのパン屋さんはありました。道路からは全く見えず、小さな看板が出ているだけなので、存在を知らなければアッという間に通り過ぎてしまうところでした。
これがそのパン屋さんの店頭と看板です。
看板がなければ、普通のお家ですね。
入口(玄関?)の戸を開けると、土間があり、その正面に小さなウインドーケースがありました。
その中に並んでいたパンはどれもとっても美味しそうです。それを見てようやくパン屋さんだと安心できました。
その向こうにご主人が立っていました。想像どおりの「天然酵母パン」職人そのものでした。
右手はガラス張りでその中が厨房でした。厨房の中では奥様が翌日の仕込みをされていました。
厨房正面に窯があります。厨房の壁は漆喰でご主人が塗ったそうです。これも元気な酵母菌を住ませるためです。
余談ですが、やはりパストリーゼ77を使っていました。さすがです(笑)。
ご主人から色々なお話を聞くことができました。
ご夫婦2人で営んでいらっしゃいます。国産小麦を使用し、自家製酵母で発酵させ、薪窯で焼く自然の力いっぱいのパンです。
自家製でおこす酵母菌は、普段はレーズンか米麹を使いますが、季節ごとにあんず、桃、ぶどう、柿、ゆず、レモン・・・を使うこともあるそうです。
運が良ければ、これら季節限定のパンにも出会えます。
天然酵母は販売されていて、市販されている天然酵母パンのほとんどがその天然酵母を使ったものだという、先の本と同じことを話されました。市販の天然酵母はイーストと同じ単一菌なので複雑味は出ないともおっしゃっていました。
木造の家屋も酵母菌のためには良い環境とのことです。酒蔵と同じだなあとも思いました。
食べてみると、もっちりした弾力とキメの細かさ、酸味や自然の甘み(旨み)、複雑味があります。食べ応えがあって、力強さを感じ想像以上に美味しかったです。とても幸せな気分になるパンだと感じました。
日本酒やワインとも通じるものがあることも実感しました。それもそのはず、両方とも酵母菌による発酵食品ですからね。(O.K.)