あの頃(新入生)11

2020-06-26 05:31:16 | 日記
役をチェンジして欲しい…という、Aの無茶な発言…。

スタートしたばかりだし、本人同士が大丈夫なら、叶わないコトでは無い。

だけど、無茶苦茶なお願いだ。



「今日は返事が出来そうにありません。次回まで返事を待ってください」

あゆみは深々と頭を下げ、帰って行った。


あゆみにしてみれば、今までの役を全うしようと全力で研究してきたのだから、急遽役を変更する…ということは、大変なことだと思う。

だけど、新入生としてやってきて、初めての公演でいきなりの主演は…大抜擢だと思う。いきなりではあるが、主演とは…、決して悪い選択では無いはず。

…どうするんだろう…。

次の稽古の日…、演出を伴って、複雑な表情であゆみとAが入ってきた。

「皆も知ってることだと思うが…。いろいろあって、あゆみが主演を演じる方向で話し合って来たが…。やはりあゆみは今のままの役を全うしたい…と言う。…なので、再度Aには、このまま主演を全うするように説得した。そして、このまま、役を変えずに続けることになった」

ざわっとした後、徐々に拍手が起きた。

「よろしくお願いします」

あゆみが頭を下げる。

「申し訳ありませんでした。」

Aも頭を下げる。

あゆみは、なぜ断ったんだろう…。

そんなに、主演のライバル役に魅力を感じるんだろうか…と、しばらくの間、稽古場では、その話しで持ちきりだった。