あゆみは、主演の座を断った。
そんなに、主役のライバル役に魅力を感じているのか…それとも、こだわりの役作りなので、今さら役のチェンジは嫌なのか…と、周りは噂をした。
紆余曲折、とりあえず公演の稽古は進められた。
Aは、以前よりはパワーを発揮している。
しかし、あゆみほどのエネルギーは感じられない。
悩みながらも前進していた。
稽古もあと少し…。いよいよ本番に向けての磨き上げの時、あゆみが休んだ。
風邪をひいたと言う。
なんとなく不自然さを感じた。
本番近くだし、少しくらいの体調不良だと、とりあえず出てきそうなタイプだ。
よほどの高熱なんだろうか…。
そして、翌日…。
また、あゆみは休んだ。
風邪が治らないらしい…。
大丈夫だろうか?
よほどことなのだろうか…。
彼女は特に親しくしている仲間がいなかったので、誰かに様子を聞くことも出来ない。
「電話してみましょうか?」
演出に申し出た。
「うん…。頼む…。よほどことかも知れない…」
演出も、不自然さを感じていたようだ。
電話をしてみた。
……………。
出ない…。
電話にも出られないくらいひどい状態?!
時間をおいて再度かけてみる。
………かちゃ。。
出た。
「あゆみ、あんこだけど…。大丈夫?」
………ぷつっ。
切れた?
あれ?間違い電話しちゃったかな?
もう一度かけてみた。
……………。
それからは、出なかった。
なんだろう…胸騒ぎがする。