父が残したもの

 父が他界して明日で半年。そんなこともあり実家に帰って来ました。他界した父は多くのものを残してくれました。残念ながらと云うべきは、それは物やお金ではなく、人と人とのつながり、あるいは思いでなどではありましたが。

 喪中のハガキで亡くなったことを知りましたと、かつての教え子(高校の教師をしておりました)が半年を経てなお電話や手紙を下さったり自宅を訪ねてくださるのだと、母が云っておりました。息子としても、まったくもって「有り難いこと」と感謝いたしておる次第です。

 そんな父が残したものに二冊の本があります。いずれも七十を過ぎてから作ったものですが、最初に作ったのが所謂自伝で、二冊目が句文集でした(田舎の小さな結社の同人会長をいたしておりました)。

 「自伝」には、人生の大半を費やした教員時代の交々が、「句文集」には自選の句と共に作句に至る情景やその折々に思ったことなどが記されております。卒業後も近しくお付き合いくださったかつての教え子の皆さんにも差し上げていたようですが、ご笑納くださった皆さんには好評ではあったようです。

 家族としては、この二冊を読むことで、それまで切れ切れに聞いていた70余年の歩みをつなぎ合わせ、あらためて一人の男が生きてきた軌跡を知り確認することが出来ると云う意味では貴重な資料であり、良くぞ書き残してくれたと云う思いに尽きます。

 父には書き残す価値がある程の人生があったことをあらためて思うと共に、翻って自分が歩んできたこれまでの人生を思うと、果たしてどれ程の意味があったのかと、図らずも人生の第二ラウンドに入ろうかとしている郷秋<Gauche>は考えてしまのであるなぁ。


 カバーの中央に配されているのは、還暦を過ぎてから始めた面打ちによる自作。いまだ自宅の鴨居のあちらこちらに掛けられた、目に見える残したもののひとつである。

 「恩田の森Now」 http://blog.goo.ne.jp/ondanomori 

 11月30日に撮影した写真を4点掲載いたしました。秋と冬との狭間を行き来する森の様子をどうぞご覧ください。

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