私のガルパン戦車車輌の第88作目は、継続高校チームのタワーワゴン車となりました。劇場版の冒頭にいきなり登場して話題になった車輌です。ガルパンの戦車以外の車輌にも関心があって色々作ってきた私としても、無関心ではいられませんでしたが、フィンランド独自の車輌ですから適応キットがある筈も無く、カーゴタワーの構造の複雑さもあって、最初は作ってみようという気も起りませんでした。
ですが、その後、ミリタリートラックに詳しいサークルの先輩N氏が2018年4月にこの車輌に関しての分析考察(元記事はこちら)を行ってくれたことにより、再び関心が甦ってきましたが、作ってみようという気持には至りませんでした。
N氏の考察によって、トラック部分はZis-5またはGAZ-AAのキットがベースとして使える事が示されたものの、それらのキットが入手困難になっていた時期でもあったので、製作へのスイッチが全く入りませんでした。
ですが、N氏はよほどに関心があったようで、今年2020年3月の連絡電話でも「あのタワーワゴンのプラモはいずれは作るの?」と訊ねてきました。その際にタワーワゴンの劇場版と最終章の仕様の変化についても言及してきました(元記事はこちら)。
その際に、これだけ先輩が考察してくれて制作の環境も整ってきているのに、ずっと作らないままでいるのもどうかと思い、迷った挙句に8月の「ゆるキャン△」聖地巡礼を終えた後のタイミングに製作してみることに決めました。
そのことをN氏に連絡した際、最初に「トラックのキットは買ったのか?」と訊かれました。
「いえ、まだです。Zis-5かGAZ-AAのキットを買えばいいんですよね?」
「そう言ったけどな・・・、しかし、これは寸詰まりの問題があるんで、買うのはやめとけ。代わりに俺が適当なのを用意してやるから・・・」
「・・・寸詰まりの問題、って何ですか?」
「あれ?この前話してなかったか?」
「いえ、聞いてませんよ。今初めて聞きました・・・」
「そうか、要するにZis-5やGAZ-AAのキットでは、ホイールベースが劇中車より短いので、これをベースに作るとキャブ以外は寸法を縮めなきゃならない、ということ」
「マジですか・・・!」
そう応じつつも、正直なところ私にも思い当ることがありました。確かにネット上で見かけたタワーワゴン車の先行作品の大部分が劇中車より短くなっているというか、確かにキャブ以外のタワー部分などが縮められたりして、寸詰まり気味の傾向が共通して感じられたのを思い出しました。
ここでN氏の言う「寸詰まりの問題」を簡単に述べますと、上図のように劇中車は黄色の縦線の位置に車輌の中央部が位置しますが、Zis-5やGAZ-AAはホイールベースが劇中車より短いため、車輌の中央部が前に移動してキャブ部分にあたります。したがって荷台部分のシャーシーが短くなりますので、カーゴタワーなどの構造物をスクラッチで仕上げる際に、それらの寸法を縮めないとおさまらないことになります。
ネット上で見かけたタワーワゴン車の先行作品の大部分がその流れで作られているため、キャブはそのままだが、後ろのカーゴタワーなどの構造物は全体的に縮めたサイズに作られて窮屈な感じにもなっている例が見られます。私の感覚では「キャブが異様に大きく見えるな」と捉えていたのですが、要は後部が縮まっているから、そう見えるのでした。
この「寸詰まりの問題」について、N氏は「劇中車がモデルにしている実在の車輌が、そもそもZis-5かGAZ-AAよりホイールベースが長いようだ」と分析し、元モデルのトラックを「リパブリック社の1920年型トラック」としたうえで、「その荷台が長いタイプだったのではないか」と推定しています。
したがって、適応キットはZis-5やGAZ-AAよりも荷台が長いタイプでなければならないわけで、例えばZis-6やGAZ-AAAの方が適当であるという結論に行き着きます。キットはズベズダ、ホビーボス、ミニアート、アークモデルズなどから出ています。
それでN氏が「俺が適当なのを用意してやるから・・・」と言って後日に宅配便で送ってくれたのが、上図のアークモデルズのBM-13のキットでした。そのトラック部分はZis-6でありますから、これをベースにしてみてくれ、ということでしょう。
早速に御礼の電話をかけると、N氏は「GAZ-AAAのキットも探したけど売切ればっかりやった」と済まなさそうに話しつつも、「寸法的にはZis-6の方が長いから、タワーとかをスクラッチするにも余裕があってええんやないかな」と言いました。
確かにカーゴタワー部分はブラ棒の複雑な組み合わせによって作らないといけないので、ブラ材も3、4種類ほど揃える必要があります。先行作品のようにサイズを無理に縮めていたら、劇中車のようなカーゴタワーの雰囲気はとても作れません。私自身が細かい工作が下手ですので、ややオーバースケール気味のZis-6をベースにして大き目に作ってみるという選択はアリかもしれません。
オーバースケール気味の状態に作るのであれば、少なくとも「寸詰まりの問題」は解決出来ます。Zis-6はキャブ部分からして劇中車より大きいうえに、資料上の制約もあって、そもそも劇中車ズバリの姿形に仕上げるのが不可能に近いです。それで今回は、試行錯誤の意味で、なるべく劇中車に似せるモドキ作品という位置づけで製作してみることにしました。
なので、N氏がかねて指摘していた、上図の黄枠内の最終章仕様のカーゴの形状なども、あまりこだわらないことにしました。実在の車輌のそれは劇場版仕様に近いですが、最終章仕様のほうはサイズも大きくなっていて、枠の形状の一部も描画上でのミスである可能性が否定出来ません。
これが実際にフィンランドで活躍していたタワーワゴン車の写真です。全体的に劇場版の劇中車にほぼ共通する要素が多いです。しかも劇中には無い左側の側面観の写真ですので、劇中車の左側面もこれを参考にすることになります。
この車輌は、路面電車の架線整備用の高架作業車として使われていたといい、N氏の言う「リパブリック社の1920年型トラック」にあたるようです。エンジンフード側面にリパブリックのエンブレムがついています。
この実在の車輌も車輌の中央部がキャブの後ろに位置します。つまりホイルベースおよび荷台が長い車輌がベースになっているようです。模型で再現する際にZis-5かGAZ-AAのキットを使うと、後部の寸法が足らなくなるのも理解出来ます。
それで、Zis-6やGAZ-AAAのほうを使って、6輪を劇中車に合わせて4輪に改造するという流れが適当だろう、とN氏がアドバイスしてくれましたが、その通りに試みてゆくことにしました。
中身です。アークモデルズはロシアのメーカーですので、製品の雰囲気がズベズダやミニアートのキットに似ている感じがするのも偶然ではないのでしょう。
案内文およびキット車輌概説もロシア語でした。もともとロシア国内向けに作られた製品なのでしょうか。せめて英文も添えてくれれば、と思いました。
組み立てガイドは御覧のように3ページにわたりますが、これは6輪トラックのBM-13に作る工程ですので、今回の改造スクラッチの手順とは大いに異なります。ベースに使用するZis-6トラック本体も6輪を4輪に改造するほか、後部を色々改変するため、今回は組み立てガイドの図面は載せてもあまり意味がないと判断し、ここでは掲載しないことにしました。それで、実際の作業工程のみを画像にて紹介してゆきます。 (続く)