GOKIGENRADIO

バーボングラス片手のロックな毎日

シン・ゴジラを観た-2 庵野監督のリアル描写

2016-09-21 23:35:09 | MUSIC/TV/MOVIE
前回に引き続きシン・ゴジラ。
庵野監督ファンからは「お前は庵野監督の作品をどれぐらい見たんだ?全部見てから語れ」とか言われそうだが、すまん、全然見ていないんだ。エヴァファンからは「なんだと?エヴァもガンダムも観てないだと?」とか怒られそうだが、すまん、世代が違うのでね。庵野監督や島本和彦と同世代なんだがね、エヴァ世代じゃないってことだよ。
それでも庵野監督シンゴジラを語らずにいられない。それくらい久々に感動してしまった映画だ。

何と言ってもリアルなんだ。
まるで現実社会、今の日本でもし謎の巨大生物(脅威)が迫ってきた時、日本はどう対処するんだ、ってところがこれでもかというほどリアルに描かれてる。
政府の対応や国民の反応については前回書いたが、今回は映像について。
このシン・ゴジラはアニメの絵コンテをそのまま実写化したのではないかというくらい、アニメでしか表現できなかった描写を実写で水戸に映像化してる。

ガキの頃に夢中になったのはアニメではなく、ウルトラQ、ウルトラマン、仮面ライダー、キカイダーなどの特撮物。もちろんゴジラも映画館で観た。
あれから数十年。映像の進歩は著しい。どこからが特撮でどこからがCGでってもうわからない。
昔のウルトラマンとかは、ぶっ壊されるビルがいかにもミニチュアセット丸わかりだったが、今回のシンゴジラ、本物のビルを壊してるのかと思ってしまうほどリアル。
ゴジラが歩くその振動で一般住宅の瓦がずり落ちるシーンや、橋桁がひしゃげ落ちるシーン、流されるボートや船、吹っ飛ばされる橋や欄干。どれを取ってもどこCGなの?ってわからない。

昔のウルトラシリーズとかで怪獣がビルを破壊するシーンは「あぁ中で電灯点滅させてるなぁ」、ビルが倒壊するシーンでは「せっかく作ったのに大変ねぇ」、怪獣が攻撃されるシーンでも「火薬で火花散らしてるなぁ」とか「後で編集で光線付け足したな」って感じだったが、このシンゴジラ、全てがリアル。
車が吹っ飛ぶシーンも、ビルがなぎ倒されるシーンも、踏み潰されるシーンも、尻尾で跳ね飛ばされるシーンも、全てリアル。
吹き飛ぶ地面の描写では、実際にはそんなストップモーションのように浮き上がったりすることはないはずだが、まるでそこに自分がいるみたいな錯覚になってしまうほどだ。

そうカメラが普通の実社会ではありえない角度だったり、構図からだったりするんだ。
だけど、それがリアリティ満載になる。ゴジラの尻尾が頭の上を旋回していくシーンなんて、思わず首をすくめてしまいそうになった。
この映画を3Dで見たら大変なことになってしまいそうだ。

適切な言葉が浮かばないが、重量感があるのよ。それぞれの重さが計算されてて「この建物ならこの力でブチ当てられたらこんな風に吹っ飛ぶだろうなぁ」とか「こんなものはゴジラにとっては草みたいなもんだろうなぁ」とか。実際の重さを計算し尽くしてるからか、傍若無人に街を破壊し突き進むシーンがリアリティあるのよ。

ゴジラ自体も重量感とか質感あるのよ。
最初に出てきたゴジラはなんかヌメヌメとしてて「えっ?これがゴジラ?」って感じなんだが、爬虫類(海から出てきたんだから両生類か」ならではのぬめり感と重量感があった。それからどんどん形態を変化(進化)させていくにつれて、だんだん皮膚など硬化していくの。
一度海に戻って再登場したゴジラは体も二倍近く大きくなり、宣伝で見たあの体内のエネルギーの赤が見え隠れする最終形態。
あっという間に進化したゴジラの皮膚はまるでゴーヤのように模様が入ったゴツゴツ感。初代ゴジラファンもこのゴジラ最終形態(まだ進化して究極生物になりつつあるそうだが)に「フリーザかお前は!」って突っ込みたくなるほど、恐怖感と威圧感を醸し出してる。

自衛隊の戦闘ヘリや戦車などもリアル。実際のヘリや車両を借りたのか?撃ってるのは実弾か?富士の演習場とかで撮影したのをCGで合成してないか?ってくらいリアル。横並びの装甲車(戦車)からの一斉砲撃や迫撃砲の迫力などは戦争映画ファンでも満足するだろう。
でもね、ゴジラの皮膚を貫通できないのよ。跳ね返される弾、って言っても拳銃の弾じゃないよバルカン砲の弾だよ。それが無情にも跳ね返される。戦闘機からのミサイル攻撃からの爆炎と煙で見えなくなる。でも全く効いてなく怒ったゴジラに炎を吐かれ、さらに高熱レーザー噴射されて全滅するシーンは、絶望感さえ漂う。
ナメック星でフリーザーに攻撃が全く効かなかった時のベジータの気分はこんな感じかもしれない。

映像だけじゃなく、台詞もリアル。
一度海に戻って消えたゴジラの再上陸に備え、東京近郊の防衛に力を入れる決定に、若手の記者が「なんで東京ばっかり優先するんでしょうね」と言ったののに対し東京の人口、GNP,予算、小さな国の国家予算より多い。さらに関東周辺で日本の四分の一を賄ってる現実を語る。その内容がまたリアルな数字。
動きを停止したゴジラ。その間に対策を練る政府。総理大臣も官房長官も防衛大臣も閣僚は全て死んでしまった(行方不明って映画で入ってるところもリアル)ので、臨時政府、暫定の総理大臣を任命する。

脅威の進化を遂げる巨大生物ゴジラという脅威を撲滅するためにアメリカおよび国連は核兵器の使用を決定。日本の決断を迫る。これも現実社会とリンクしててハラハラする。
「あの国は日本がどうなっても構わないというのか」という言葉にに、竹野内豊が言う「あの国は本気だ。たとえここがN.Y.でも彼らは同じ決定をする」。
ちなみに竹野内豊は「この国のいいところはトップが変わっても無理なくすぐ機能するところにある」とまで言ってる。
その臨時の暫定総理大臣が国連の核兵器使用を決断する際に言う「こんなことで名前を残したくなかったなぁ」。
米国特使として日本とアメリカの橋渡しをする日系3世役の石原さとみが言う「おばあちゃんの国に三度も原爆は落とさせない」。
どうしてもあと1日の猶予が欲しい長谷川博巳が言う「フランスにお願いして引き伸ばし提案をしてもらおう。代償はゴジラデーターの共有だ」。
特使石原さとみに対し大使(補佐官かも?)が言う「驚いたよ。あの国にこんな腹芸が出来るなんて」。
そんな、あれ?これってこの現実と一緒だよなぁ、とかこれってこのことにも通じるなぁってセリフがバンバン出てくる。

攻撃好きのアメリカに対し、フランスは上杉謙信のように気のない攻撃はしない。あの国の軍隊はほとんど傭兵だからね。無駄な戦いは1円の特にもならないから。
映画では、日米安保を含めたアメリカとの関係や、国連安保理事会での日本の立場、中国やロシアが虎視眈眈と入り込もうとするのを防御したり、いろんな意味でリアル。
自衛隊の立場や武器使用許可も、普段の行政の縦割りも、非常時の情報伝達組織の一本化も、全てがこの映画に描かれてる。

他にももっと色々見所、面白いところはあるんだが、買い尽くしてたらネタバレどころじゃない、wikiみたいになってしまうのでこの辺で。
とにかく劇場で見てほしい。あの迫力は映画館で見てほしい。
レンタルされるまで待ってTSUTAYAで借りてきて、彼女と二人でイチャイチャしながら観ようなんてしないほうがいい。
怖いよ。黙ってしまうよ。
もし50inch以上の画面のテレビで、サラウンド音響を配置したホームシアターで観るなら、覚悟したほうがいい。
それくらいすごい映画だ。観ればわかる。