GOKIGENRADIO

バーボングラス片手のロックな毎日

少女漫画

2018-06-01 09:14:39 | BOOK/COMICS
漫画誌のニュースが続々と流れる。
5月26日を最後に休刊される花とゆめに続き、6月30日には月間バーズが、9月にはヤングアニマル嵐が、10月にはYOUが休刊するらしい。
休刊といえば「いつか復活するのか?」と思われるが実際はそんなことはない。廃刊だ。

CDが売れない時代だと音楽業界が嘆く。
ダウンロードの手軽さに負けてCDが売れない。ドラマの主題歌とか話題曲をダウンロードで聴いて、気に入ったからフルアルバムを買うのかと言えばそうじゃない。興味があるのはその曲だけってことね。

同じことは漫画誌にも言えると思う。
いろいろ載ってる週刊/月刊漫画誌を買うより、読みたい漫画だけネットでダウンロードして読んだり、コミックスを買う方がいいのだろう。効率的ってやつね。
雑誌が売れない、CDが売れないって言っても、電子書籍やダウンロードなんかのシステムを作ったのもその業界の人なんだからね。
自分で自分の首絞めてるようなもんだわな。

俺らの時代はレコードは貸借りでカセットに録音、マンガ誌も貸借りで回し読みだった。
とにかくお金がなかったもんね。
だからかな借りたレコードはカセットレーベルにインスタントレタリングしたり、曲順考えて入れたりしてた。なけなしのお金で買ったレコードは大事に聴いていた。おかげで今でも当時の歌はタイトルも歌詞もフレーズもメロディも出てくる。ダウンロードで聞く今は、数年たったらタイトルさえ思い出せない曲が多い。

マンガだって、真剣に読んでたからかワンシーン、セリフをちゃんと覚えてる。
だから同じマンガにはまってたやつとは、もう連載終わって何年も経つのに語れたりする。克明に覚えてたりするのよね。

少女マンガというジャンルは最初苦手だった。
大きな目の中にはお星様がキラキラしてる、フリルの服着てたり、外国が舞台だったり。
だからキャンディキャンディとかベルサイユのバラでさえ、読んでたけどちっともストーリーがよくわかっていない。アンソニーとかテリーとかオスカルとか。だいたい外国名カタカナ名ってやつはイマイチ覚えられないのよね。いきなりニックネームで呼んでたりするし。エリザベートとエリザベス、マリーとメアリーなどが一緒ってのは当時わからなかったのよ。

しかも少女漫画にはいっつも謎の人が出てきたりする。
紫のバラを送ってくれる人だったり、丘の上でバグパイプ吹いてた少年だったり。陰ながら支えてくれる足長おじさん的な人だったり。
最終回でようやくあの人は実はこの人だったの!?と種明かしをされるんだが、そこまでの過程がまどろっこしいのよね。少女漫画ファンはそれが醍醐味と楽しんでたのかもしれないけどね。

俺が少女漫画にはまったのは、学生の頃に少女漫画のキャラに似てると言われたことから。
いくえみ綾のスターダスト三年目って漫画。



無理やり読まされた。ぶっきらぼうで愛想がないとこが、当時の俺は確かになんとなくそんなノリであったから似てるといえば似てる。しかし俺の家にも鏡くらいはある。こんな男前では間違っても無い。そしていくら俺が細身だと言ってもここまで華奢じゃない。奇抜な頭と服装、あとは音楽をやってるくらいしか共通点は無い。
でも当時のいくえみ綾の漫画は忌野清志郎的なノリではまったなぁ。

そして多田かおるの愛してナイト。



関西が舞台ということもあるが、俺らが行っていた(出てた)ライブハウスとか実名でガンガン出てくるし、漫画内で登場するバンドが歌う曲(歌詞)は44マグナムとかアクションとかノヴェラとか実際のハードロック系バンドの曲だった。

で、極め付けがパンクバンドのボーカルが、主人公のライバルとして出てきたこと。スターリンの遠藤ミチロウをイメージして作られたであろうそのキャラ、そして彼の歌う曲のおかげで、俺の元に「(あの曲の入ってる)レコード持ってたら貸して」というミーハー(死語)さんが連日やってきた。仕方がないから漫画で使われた曲「STOP GIRL」をカセットに入れて渡してあげるのだが、案の定翌日には複雑な顔をしてたっけ。そりゃ無理だわね。

そして別冊月間マーガレットに伝説的なヤンキー漫画が登場する。
紡木たくのホットロード。



リアルでありながらどこかロマンチックなんあい要は当時のがんじがらめの校則や、親の言うことに逆らえない女子たちのハートをがっちりつかんでたのではないかね。つい数年前に能年玲奈主演で実写映画化されたけど、イマイチ評判良くなかったなぁ。時代が違うんだろうね。ヤンキーはバイク乗らないし、族なんか絶滅危惧種だもんね。

ベルサイユのばらのように中世ヨーロッパ舞台の漫画はハマらなかったが、古代日本を舞台にした漫画にははまった。
山岸凉子の日出処の天使。のちの聖徳太子である厩戸皇子と蘇我蝦夷のお話。
最終巻でちょっと知恵遅のような小野妹子を遣隋使に選び、親書を委ねるところが印象的。

「日出づる処(日出處)の天子より日沒する処(日沒處)の天子に致す」で始まるこの書は、日本(倭の国)が中国(隋)の冊封制度(支配下)から出ますよ、これから私たちは同等ですよって独立宣言的な文。
この日本の運命を左右する文書の伝達が痴呆の小野妹子であることが、この物語の意図を見事にまとめてる。

クソ面白くもなくダラダラと年号を並び立てた教科書なんかより、この漫画を読んだ方がよっぽど勉強になると思ったよ。だって大化の改新が645年っていうのはみんな覚えてるだろうけど、なんで蘇我入鹿が殺されたのか、大化の改新って結局何が変わったのかとか知らない人の方が多いやん。

しかも史実(日本書紀)ではこの書に激怒した隋は小野妹子に返書を渡し、それに対しさらにまた「東の天皇が敬いて西の皇帝に白す」(直訳すりゃ「こっちは天をまとめる皇、そっちは皇の帝」)って、完全に喧嘩売ってるんだよ。これのおかげでその後、隋を滅ぼした唐とは同等の貿易交流してるもんね。

外国モノは苦手だと言ったが例外もある。
魔夜峰央のパタリロ。



常夏の国マリネラ王国、ダイアモンドで潤ってて税金がただで、福利厚生や保障がされてる国。こんな国に生まれたかった。
作者は以前にラシャーヌとかアスタロトとか魔界の話を書いてた人だが、絵も抜群に綺麗で、ストーリーも毎回面白い。源氏物語や西遊記など同じキャラを当てはめた別ストーリーもある。

オスカルとアンドレの関係はわからないが、バンコランとマライヒの関係は語れる。今風に言えばBLね。
もともと悪の組織の殺し屋だったマライヒが、007のような諜報機関(Mi-6)の凄腕スパイのバンコランに堕とされ、いいコンビなるところがいい。印象的なのは連日のハードな任務で食事をまともにとれないバンコランが、心配したマライヒに対して「まだ1杯のウォッカを1日のエネルギーに変えることはできる」っていうシーン。
いや、感動したとかじゃなくて「イギリス人のくせにウォッカ?」って思ったのよ。ジョンブル魂ならそこはスコッチでしょうと。まぁつまらんことほどよく覚えてるもんだ。

そして外国もんは苦手だといいながもはまったのがもう一つ。
吉田秋生のBANANA FISH。
カリフォルニアからニューヨーク、アメリカを舞台に繰り広げられる少年ギャングの戦いは見どころ満点。アッシュがかっこいいのだ。華僑の殺し屋・李月龍やブランカ(白)などクールなキャラが登場。

ベトナム戦争や児童虐待などの下手すりゃ重苦しくなる問題も、企業リテラシーやBLなども入っている。ショーターが薬で頭をやられ、アッシュが唯一心の拠り所にする日本人の英二を殺す暗示に贖う姿が哀しい。

たいていの漫画の続編やサイドストーリーは面白くないものが多いのだが、続編にあたるYASHA-夜叉とイヴの眠りは傑作だ。
バナナフィッシュではアッシュのライバルとして登場し、仲間になったシンが主人公で綴られていく。

同じく薬物や人体の極限をテーマにした漫画の傑作がある。
惣領冬実のES -Eternal Sabbath-
この人の漫画は全部面白い。バスケ漫画のボーイフレンド(SLAM DUNKと並ぶ傑作だと思ってる)とか、音楽漫画THREEとかは傑作だ。

話を元に戻して吉田秋生さんの漫画では、確か近日最終回を迎える予定の海街diaryも面白いね。
綾瀬はるか、長澤まさみ、広瀬すずなどで実写映画化されている。

少女漫画って結構実写化されてるのよね。
二ノ宮知子/のだめカンタービレ
神尾葉子/花より男子
一条ゆかり/有閑倶楽部
森本梢子/ごくせん
あげてったらきりがないが、こうして羅列しててちょっと気が付いた。

実写版に限らずヒットした少女漫画は、一般の世界とはかけ離れたところを描いてるのだが、シリアスだけでなくどこかギャグやユーモラスな部分が入ってるという共通点があるな。

今放映されてるNHKの朝ドラ、半分、青い。で70-80年代の少女漫画の世界が描かれてると好評らしい。
少女漫画家を演じる豊川悦司の怪演がいいとか、主人公の永野芽郁を完全に食ってると言われたり、くらもちふさこのいつもポケットにショパンなどがクローズアップされてる。
やはり同世代のみなさんは、当時を思い出してノスタルジックに浸れるからなのだろうか。

これを機会に里中満智子や萩尾望都などのレジェントの漫画を大人買いして読んでもいいかも。
美内すずえさんはガラスの仮面を掲載誌別冊花とゆめが休刊になっても必ず最後まで書き上げると仰られてる。
ガラスの仮面は、連載開始当初貧乏だったマヤが、休載〜連載再開したら携帯電話持っててちょっとびっくりした。それくらい月日の流れは速く、文明や生活の変化が早いから作者も大変だとは思うけどね。

そういったことからも、もうこれからは小説のように単行本書き下ろしの方がいいかもしれない。
毎週毎月の締め切りを気にしないで書けるだろうから、いい作品ができそうだ。
雑誌や炭鉱ビンなおの紙ベースが電子書籍に変わっても、漫画は永遠に不滅でしょう。