GOKIGENRADIO

バーボングラス片手のロックな毎日

ヤンキー漫画 1980年代編

2018-11-21 06:31:11 | BOOK/COMICS
今、放映されてる『今日から俺は!!』でもわかるように、1980年代はヤンキー全盛期。
携帯電話もなけりゃ、ググったりもできない。インスタやSNSなどももちろん無い。男はリーゼント、パンチパーマ、刷り込み、アメリカン。女はカーリーヘアや聖子ちゃんカット。オキシドールで脱色。スカジャン、ドカジャン、革ジャン、ピンヒール、かかと潰した靴。うんこ座りして地面に唾を吐き、そこらへんの自動販売機や公衆電話の前でたむろする。嘉門達夫の「ヤンキーのにいちゃんの唄」そのマッッマの世界がそこにはあった。
純喫茶店はグループごとに行きつけの店、たむろする店が決まってて、それを知らないデート中の純愛カップルが入ったりすると場違いだった。

さてそんな時代を反映するかのように、80年代のヤンキー漫画も70年代のものとは違い、学園・学校に巣食う軍団に立ち向かったりもしないし、政治家や国の巨悪を相手に戦うこともない。真面目な生徒会委員長(女子)は出てくるものもあるが、ヒロインが一般生徒になっているのが多い。
基本的には不良の主人公(相棒・コンビ)が仲間や後輩と共に喧嘩したりする。基本的に怠惰な日常を描いたものが多い。

中期-1980年代
【タイトル】(作者/連載開始年〜雑誌名)

【あいつとララバイ】(楠木みちはる/1981〜少年マガジン)
少女漫画の金字塔、ハイテーン・ブギにも通じるおしゃれなヤンキー漫画。横浜を舞台にバイクと彼女を愛する主人公が、不良との抗争やバイクでバトルする。ラブコメ要素もかなり強い。主人公の乗るバイクはKAWASAKI 750RS(通称Z2)で、その他登場するバイクもリアルに描かれ、バイク好きにもたまらない。この作者の【シャコタン☆ブギ】(1986〜少年マガジン)も当時ヤンキーの中で流行ったシャコタン、煙突マフラー、オバフェン、ハの字スリックなどの改造クルマ好きが納得する内容だ。ちなみに【あいつとララバイ】は少年隊主演で実写映画化されてるが、原作ファンにとっては無残な結果。ヒロインは麻生祐未が演じてた。



【夏にきいてくれ】(西尚美/1981〜別冊フレンド)
少女漫画ではこれまで【ハイティーン・ブギ】など暴走族と真面目な少女との交際って話はあったが、暴走族と不良少女の話はなかった気がする。これは読者層を考慮意識してたのかな。それまでの少女漫画って普通の学園もので、かっこいい男子生徒とグズな女の子って感じのばかりだものね(偏見か?)。この【夏にきいてくれ】の主人公は学校ではロンタイ、夜はチャイナ服着て原付バイクを乗り回す、茶髪でフルパーマ、タバコも平気で吸う不良少女。男は暴走族で金髪リーゼントのイケメン(当時はこんな言葉はなかったが)で甚兵衛着てバイクに乗ってるが、実はいいところのお坊ちゃんってところは、まぁ少女漫画のお約束みたいなもんだが、そんな不良の二人の恋の話。面白い傑作だよ。



【湘南爆走族】(吉田聡/1982〜少年キング)
第一話で手芸を愛する真面目な主人公が、警察に追われる暴走族のリーダーに見初められ湘南爆走族二代目を継ぐ。紫トサカのリーゼントと長ラン。最初はコメディ要素が強かったが、回を重ねるごとに随所にシリアスなチーム抗争が描かれる傑作。江口が乗るSUZUKI GS400、石川のHONDA SB400、丸川のKAWASAKI KH400、桜井のSUZUKI GT380など、当時暴走族に好まれた中型バイクが揃ってる。
1987年に実写映画化され、主人公江口洋助と1漢字違いという事で選ばれた江口洋介、そして織田裕二と清水美沙がこの映画でデビューしてる
OVAの主題歌は元横浜銀蝿の翔やHOUND DOG、LOUDNESS、Mr.Children、杉山清貴といった超豪華メンバー。



【ペリカンロード】(五十嵐浩一/1982〜少年キング)
こちらもバイク中心の不良漫画。真面目な主人公が友人たちとバイクチームを組み、暴走族との抗争やアメリカ不良とバトルしたりしていく。
主人公は最初は原付のHONDA MBX50に乗ってたがMVX250F、CBR400Fに乗り換える。他のメンバーもKAWASAKI Z400GPやZ400LTDにのり、他の登場人物もYAMAHA RD350LCやXJ400、SUZUKI RG250ガンマなど、当時人気のあったバイクが多々登場。不良漫画というよりはバイク漫画といった方がいいかもしれない。



【ビー・バップ・ハイスクール】(きうちかずひろ/1983〜ヤングマガジン)
この漫画はそれまでの不良・ヤンキー漫画を変えた。それまでと違い長ランではなく中ランと短ラン、仕立てのボンタンやゴクスト、ぺたんこのバック。喧嘩も数人相手でも無敵なんてことは絶対になく、大人数相手では負けるし逃げる。当時そこらにいっぱいいた不良高校生の日常風景がリアルに描かれ、実際のヤンキーの学園生活、あるある的なネタが随所に。とはいえ実際の不良はそんなに毎日ケンカばっかりしてないがね。不良漫画だが暴走族、バイクや車が全く出てこないのも特徴。
1985年には仲間トオルと清水宏次朗主演で実写映画化された。ヒロインは中山美穂。とにかく出てくるヤンキー不良が全てリアル(本物のヤンキー学生をオーディションして使ってた)。漫画の実写映画化を初めて面白いと思った映画で、走る電車の中でケンカして陸橋のあたりで窓から敵をどんどん川に投げ込むという今なら絶対NGな映像も見れます。(的場浩司もこの映画シリーズでデビューしたはず)。



【バツ&テリー】(大島やすいち/1984〜少年マガジン)
不良だが野球をさせたら超高校級の二人。まぁハーレーを乗り回してリーゼントで野球のヘルメットをかぶる学生なんているわけないが、それはそれなりに面白かった。【タッチ】みたいに甲子園目指すわけでもないし、【BE-BOP HIGHSCHOO】のようにリアルな不良でもない。ピッチャーとキャッチャーのバッテリーをもじったタイトルからしてわかるくらいの、ゆるゆるな不良漫画。



【押忍!!空手部】(高橋幸二/1986〜ヤングジャンプ)
連載当初は【嗚呼!!花の応援団】のような感じで、平凡な学生生活をなんとかしようと空手部に入たが、超強力な主将をはじめ先輩にしごかれる毎日ってドラマだった。それが主役は主将の高木(大阪魂三代目)に完全に移行し、大阪の不良高校とのバトル勃発。この辺あたりまでは【熱笑!!花沢高校】(タイトルも似てるなぁ)みたいで知ってる大阪の地名があちこちでてて面白かったのだが、神戸との喧嘩を経て今度は四国、東京〜関東との抗争へと。ジャンプ系の漫画の定番そのままにどんどん強いやつが出てきて、今までの敵が味方になりつつエスカレートしていく。最後の方は空手・拳法漫画なのか不良漫画なのかわからないくらいになってた。



【ホットロード】(紡木たく/1986〜別冊マーガレット)
この漫画を最初に読んで「ついに少女漫画にもリアルな不良の世界が描かれたな」って思った。どこにでもいる普通の女子高生が、なんとなく反抗期になり髪を脱色し、暴走族の集会で出会った男の子に恋をする。ただそれだけの話なんだけど、実際の普通の学生の生活ってこんな感じ。クラブ活動に熱中するわけでもなく、大学受験のために予備校と塾通いするわけでもなく、退屈な毎日を過ごしてる学生。今みたいにスマホでライン連絡取り合ったり、インスタとかSNSするわけでもない。そんな退屈な毎日をヘッドライトと集合管の音が響く夜の街は変えてくれる。そんな世界を描いた名作。
2014年に能年玲奈(現:のん)主演で実写映画化されたらしいが、観ていないのでなんとも言えない。ちなみにこの漫画のせいで俺は牡蠣を食べるたびにビビってる(読んでない人にはわからないネタでごめんなさい)。



【ヤンキー烈風隊】(もとはしまさひで/1986〜月刊少年マガジン)
痛快な暴走族漫画。喧嘩をさせたら無敵の主人公率いる烈風隊。精鋭のメンバーも喧嘩が強く気合が入ってるやつばかり。お約束の他のチームとの抗争、ヤクザや愚連隊も絡んでしっちゃかめっちゃか。これでもかと弄られたバイクや改造車(しかも全部高級車)。リアルさとは正反対だけど、面白いよ。



【BADBOYS】(田中宏/1988〜ヤングキング)
広島を舞台に繰り広げられる暴走族漫画。お坊ちゃん育ちの主人公が不良になる。名門だが今は少数しかメンバーのいない弱小チーム極楽蝶の10代目リーダーになって、仲間とともに抗争を繰り広げ、広島TOP3に認められるほどに。全編広島弁が飛び交い、バイク勝負より喧嘩の多い漫画。登場キャラクターもそれぞれ個性があって、ヤンキー漫画には珍しくそれぞれ彼女(しかもどの子も可愛い)がいる。その後【グレアー】【KIPPO】と継承される世界観のある漫画。



【ろくでなしBLUES】(森田まさのり/1988〜少年ジャンプ)
東京の吉祥寺をメイン舞台にした学園ヤンキー漫画。テイストは【ビー・バップ・ハイスクール】と良く似ているが、こちらはボクシングも絡めたストーリー。登場人物の名前はボクシングや格闘家の名前をもじったのが多い。この作者は【Rookies】でも登場キャラクターに阪神をはじめプロ野球選手の選手名をもじった名前をつけていたから、こういうのが好きなんだろうね。
浅草の薬師寺、池袋の葛西、極東の川島などとの集団乱闘や喧嘩シーンは特にリアルに描かれてる。



【今日から俺は!!】(西森博之/1988〜少年サンデー)
これは今まで散々書いたし、今実写ドラマやってるから端折る。



こうやって羅列するとバイクが登場する漫画が多いな。不良=バイク乗ってる=暴走族ってイメージがあったのかな。
制服も学ランとセーラー服が圧倒的に多くて、ブレザーなんて真面目な進学校くらいだったもんな。
時代は変わったよな。

不良・ヤンキー漫画 1970年代

2018-11-21 01:25:36 | BOOK/COMICS
前回ヤンキー漫画の実写化について書いたが、今回は歴代のヤンキー漫画を羅列してみようかなと。

ヤンキーって言葉は俺らの頃はまだ新しくて、不良と呼ばれてた(と思う)。その後ツッパリね。これでさえ横浜銀蝿とかなめ猫が出てくるまではそれほどポピュラーじゃなかった気がする。

初期-1970年代
【タイトル】(作者/連載開始年〜雑誌名)

少年漫画雑誌での不良を題材にした漫画の初期は、謎のある転校生が学園に巣食う悪と戦ったり、裏には政治的な背景が絡んでたりって感じでスケールがでかかったのが多かったな。

【男一匹ガキ大将】(本宮ひろ志/1968〜少年ジャンプ)が不良漫画のルーツだと思う。他にもあるのかもしれないが俺は知らないので許してくれ。
山口県のただの悪たれ小僧(=ガキ大将)がいろんな地区の不良や番長と戦い、喧嘩によってどんどん子分が増え、そのうち全国制覇するのだが株取引までしたりする。今なら即炎上するであろうメッカチ(片目)だの、コジキ(浮浪者)だのという言葉がガンガン飛び交ってるのは時代だな。【硬派銀次郎】も面白かったな。



【愛と誠】(梶原一騎/ながやす巧/1973〜少年マガジン)は、金持ちの令嬢が通う高校に、昔スキー場で助けてくれた男が転校してきて、学園を仕切るスケバンや番長グループと戦い、最後は政治家も絡んで・・・って内容。分厚いハードカバー本に投げナイフを隠したり、ゴーゴーで踊ろうぜなんてセリフが時代を感じる。真面目な岩清水くんの「君のためになら死ねる」は漫画史上に残る名言。西城秀樹と早乙女愛で映画化もされた不巧の名作(妻夫木聡と武井咲版もある)。



【男組】(雁屋哲/池上遼一/1974〜少年サンデー)も、少年院から手錠をしたまま送り込まれた男が、財閥の息子が仕切る悪の高校に転校してきて戦う。政治家の思惑に翻弄されたり、途中では拳法まで絡んでくるもう何が何だかってスケールのでかさだ。1980年から連載された【男大空】と内容がかぶってる気がするのは俺だけかな。



【750ライダー】(石井いさみ/1975〜少年チャンピオン)は一応不良漫画なんだが、バイクを愛する主人公とその仲間の話。不良漫画のお約束となる品行方正な委員長(女子)や、学校サボって喫茶店で一服という定番路線を作った漫画。最初の頃こそ暴走族との抗争があったが、途中からはあだち充の漫画ようなほのぼの路線になってしまったのは残念。HONDA DREAM CB 750 Fourが毎回綺麗に描かれてて憧れた。



【暴力大将】(どおくまん/1975〜月刊少年チャンピオン)は不良というよりは愚連隊だな。戦前戦後の大阪の混沌とした街を舞台に暴れまくる。同時期に漫画アクションで連載されてた【嗚呼!!花の応援団】は大阪の大学応援団の漫画で、1980年から少年チャンピオンで連載された【熱笑!!花沢高校】は大阪の気弱な学生がどんどん大阪の不良と戦っていき大阪制覇する漫画だ。今でこそ訪日観光客で溢れてる天王寺や京橋だが、1970-80年頃はかなり危ない場所(一般人には無縁)だった。はるき悦巳の【じゃりン子チエ】と一緒に読むと当時のディープな大阪が感じられるよ。



【私立極道高校】(宮下あきら/1979〜少年ジャンプ)は、それまでの不良漫画を一新する「こんな学生いねぇよ(いるわけねぇよ)」ってくらいのスケール。学園を仕切る奴はいるが、定番とも言えるヒロイン、美しき品行方正な女性委員長は出てこないし(それどころか女性はほとんど出てこない)、学園の裏に潜む政治がらみの巨悪も存在しない。長ランを通り越して、地面に擦れるかくらいの洋ランを着た学生のほとんどは、卒業後99%がヤクザに就職する(生徒はもちろん極道の息子が多い)。そんな学園でケンカばかりする暑苦しい漫画だが面白かった。実在の学校の名前と校章を使ってしまったがために打ち切りになってしまったのは残念だが、1980年から連載された【激!!極虎一家】で【私立極道高校】の登場人物は復活。



カールのついた髪、大きな目に星がキラキラ輝くといったのが定番だった少女漫画。
実は少女漫画でも不良・ヤンキー漫画は早くからある。

【スケバン刑事】(和田慎二/1975〜花とゆめ)はスケバンのヒロインが学生刑事になり、学校に巣喰う悪徳教師等を倒すという奇想天外なストーリー。まぁ昔は今みたいにうるさくなかったので、なんでもありの設定だったな。実写ドラマ化され、斉藤由貴、南野陽子、浅香唯などでシリーズ化されたから有名だね。



【ハイティーン・ブギ】(牧野和子/1977〜プチコミック)は、リーゼントに革ジャン(実は財閥御曹司)の翔と両親がいない桃子のラブストーリー。ロック、バイク、同棲、未成年での妊娠といった当時の不良及びカップルが憧れたエッセンスが全部詰まった漫画。当時は男子にもこの漫画のファンが多かったな。1982年に近藤真彦主演で実写映画化されたが、公開前からの原作ファンの不安を見事に的中させたとても残念な内容。当時絶大なる人気を誇ったたのきんトリオのアイドル映画だった。この後しばらくジャニーズ系のアイドルが主演する映画はジャニーズファン以外には不評だった。



1970年代だけでも結構あるなぁ。
次回は1980年代について書こう。