
リコカツ。
リコカツ=離婚活動。今まであまり聞いたことなかった言葉だが、まぁ字からして離婚までの活動のことだろう。就活とか婚活ってのから始まり、最近は何でもかんでも「活(カツ)」をつければ言葉として成り立つと勘違いされてる気がする。
いつものことだがネタバレを多大に含むので、録画しててまだ観てない人やまとめて観ようと思ってる人はこの先は読まないように。
北川景子と瑛太(おっといけない今は永山瑛太ね)の二人が主演のこのドラマ。
ファッション誌で働く北川景子が、5年間付き合った彼に「君は一人でも生きていける人だね」的なこと言われて別れ、雪山で「ばかやろー!」って叫んだら滑って落ちて遭難して、助けに来てくれた瑛太と出会い、すぐ結婚したが二人の価値観が合わず・・・。
離婚をテーマにしたコメディドラマねって感じで第一話を観たのだが、かなり不満と不安が残る。
このドラマ結構奥が深い。っていうか闇か。ほんでもって詰め込みすぎなのだ。
トレンド・流行の最先端を切り開くファッション雑誌のお洒落な編集者と、肉体派で生真面目な自衛官のカップルが結婚するという「そんなんうまくいくわきゃないだろ!」的な前提はともかく、主要登場人物のほぼ全員が何らかの問題を抱えてる。
しかもその登場人物や夫婦などが、見事にステレオタイプで描かれてるのだ。
これは脚本家が悪いっていうより多分プロデューサーが悪い。
「離婚をテーマにしたドラマを作ろう」って始まり、ゼロ日婚、夫婦の価値観、男尊女卑否定男女平等論、シングルマザー、熟年離婚とどんどん広がったんだろうね。そこに定年退職後も昔の肩書きを使い、年金生活なのに未だに家事を嫁にさせて当然と勘違いしてる旦那や、これからは趣味に勤しみ自分らしく楽しんで生きたいと欲する奥さんとかまで描こうとすると、こんな詰め込みすぎのドラマが出来上がる。
永山瑛太の役が航空自衛隊の航空救難団のエースってことで、これはあの名作ドラマ「空飛ぶ広報室」のように、航空自衛隊を丁寧に描いてくれるのかと期待したのだが、まぁ見事に裏切られた。
吹雪き始めた雪山にヘリで救助に向かうシーンは良かったのだが、そこだけだ。
その後の結婚式シーンは、多分実際の自衛隊員の結婚式の取材はしてないなってくらいダメ。自衛隊員の結婚式は出たことある人だったらわかると思うけど、自衛隊関係者は驚くくらいみなさん姿勢が良いのだよ(返事も良い)。幕僚長だの一佐だ1尉だの階級が上の者が参加してるから尚更お行儀も良い。
したがって幹部のいない同期や同僚・後輩のみの二次会で初めて弾けるのだ。そのはじけっぷりは一般人には止めようがないくらいだ。機動隊でも怪しい。日本最強の軍団だからな。
この結婚式の描写でも、流行の最先端を捉えるファッション誌の編集者側の参加者は、おしゃれで煌びやかでドレスアップされて華やかで、自衛隊側は行儀よく座りながらも出てきた料理を秒でたいらげながら、「いいなぁ」「綺麗だなぁ」「付き合いたいなぁ」と脳内で妄想してるなんて描いてたら、その後の二人の夫婦生活・価値観が合わないところもスムーズに描けたと思うんだけどな。
新婚旅行といえど、自衛隊員が越境する旅行はかなり面倒な手続きがいる。ましてや海外旅行?その辺をドラマでは軽くスルっと流してた。
新居もなぁ。官舎じゃなく車で基地まで一時間のところにマンションを買ってリノベーション。転勤っていうか配属先がまだまだ変わる若き自衛官で?
「ドラマなんだから細かいとこ抜き」ってのはわかるけどさ。
そういったことや生活リズム、しきたりや慣習など一切吹っ飛ばして、「任務のことについては国家機密だから家では一切話せない」って瑛太が北川景子に言うシーン。予備知識なくいきなりこう言われてもなぁ。視聴者も「なんで?」って思うだろう。いや「そういうもんなのね」って感じか。
もう少し自衛隊や任務についてる自衛官のこと丁寧に描いてよ。
自衛隊マニアじゃないけど、結構ガッカリなのだ。
このドラマが始まる前に、「ぴったんこカン・カン」ってバラエティ番組に永山瑛太と北川景子が番宣兼ねて出演した。航空自衛隊百里基地でロケ。永山瑛太が航空救難団のエース役を演じるからか、幹部が北川景子に一目会いたいからか全面協力。なんと二人が戦闘機に乗ってアフターバーナー、離陸前のGを体験するって企画までOKされてた。
隊員が礼儀正しくピシッとしながらも、北川景子が登場した際、内心はめっちゃ浮かれてるのが微笑ましい。永山瑛太はちょっと無愛想でリアクション(ノリ)が悪かったので「あれ?」と思ったのだが、それはこのドラマの自衛官役・緒方に合わせてたのね。
でも、ドラマではその自衛隊のことはちょびっとしか描かれていないうえに、瑛太はただの姿勢が良くて大声で、筋肉バカで大飯食らいで、デリカシーがなくファッションに疎いセンスの悪い奴として描かれた。そんな自衛官今どきいるか?
さらにステレオタイプな人物像描写はまだまだ出てくる。
北川景子のお母さん・三石琴乃は美魔女でエッセイスト。この人テレビや映画で見たことないんだけど、女優さんなの?なんか演技下手だぞ。セリフは下手ではない(いや上手い)のだが、仕草や動作が喋りと合っていないのだ。声優さんか?
お父さん・佐野史郎は大手広告代理店(経理だけど)を定年退職しても過去の名刺を持ち歩き配る。いるよな、いつまでも昔の肩書き(会社)の威光を忘れられないで威張り散らす年金親父。コンビニやファミレスで店員に偉そうに喚いてるクレーマー親父のほとんどがこのタイプだ。そして若い女の子好きね。バブル時は「ザギンでシースー」ってブイブイ言わせてた口ね(佐野史郎は経理だけど)。
永山瑛太のお父さん・酒向芳は元自衛官で厳格。家では「あれ」「それ」「これ」だけでお母さん・宮崎美子は理解しお茶出したりする。家の事は全て奥さんに任せっきりで、旦那が偉いと勘違いしてる昭和時代の親父ね。定年退職後もいつまでも家の中で偉そうにしてるが、
この二組の夫婦も熟年離婚を考えてる。もちろん奥さんの方からの三行半だ。
給料を持ち帰ってきて養ってもらってるうちは我慢できたが、もう世話はいいだろう。いつまでも三食用意して小間使いや家政婦のように扱われるなら、人生100年時代(誰が言い出したのかは知らんけど)、残りの人生は自分のために使いたい。
と、ここまででもすでに「いかにも!」ってステレオタイプでアップアップなのだが、それだけでは済まない。まだ出てくるぞ。
北川景子の元彼・高橋光臣は弁護士で彼氏としては申し分ないが結婚願望0男。結婚に価値を見出せなく、自由気ままな独身生活を楽しむ古い言い方で言えば独身貴族。今風の言い方は知らん、最近はなんて呼ばれてるんだ?
ジム(自衛官がジム通いするか?基地にいくらでもトレーニング機材あるぞ)で偶然瑛太と出会う。
グラマラスな女の子に器具の使い方教えてる際に胸が当たって戸惑う純粋でウブな自衛官。そこへ現れるその彼女の元彼。瑛太を今の彼と勘違いし攻撃するがあえなく制圧される。ってところもいかにも今まで使われてきた描写だが、さらにそこへ北川景子の元彼が居合わせてってのも加わると、いかにもの二乗だ。
北川景子のお姉さん・平岩紙もどうやらワケあり。子供連れて家を出ているみたいだ。結婚式も娘と二人だったし、ホテル暮らししてるみたいだし。
平岩紙は「朝顔」では旦那の板尾釧路を尻にひくカカア天下の法歯学者だったが、「俺の家の話」ではプロレスラーで家に殺気を持ち込む長瀬智也と別れた元ヨメ役だった。「俺の家の話」では多動症の息子に理解を示す恋人・前原滉との間に女児を授かり再婚するが、その彼は「仕事での僕の代わりはいるけど、旦那の代わりはいない」と1年間の育児休暇を取るような男だった。
いかにも「今の時代に合ってるでしょ」「これからは夫婦平等、家事も男もする時代」って「意識高い系」な旦那を演じてたが、そこは宮藤官九郎脚本、戸田恵梨香に「無理、ずーと家にいるなんて無理」と逃げて行かせてた。
最近じゃ「旦那も家事するべき」とか「男女平等」とかが声高いに叫ばれて、男も料理や掃除、洗濯などの家事をすることが当たり前の風潮だ。それをしない男はダメな夫で、家事を一緒にしてくれる旦那は良い夫。
そうなると夫の給料でやりくりする奥さん、夫を内助の功で支えてるだけの奥さんはダメ奥さんということになってしまう。
ただの永久就職狙いで寿退社など許さない。共働きできるだろ?フレックスも育休産休も取れるよ。旦那の稼ぎで子育てしたり、家事に勤しみたいって奥さん像は許されない。
そもそも「奥さん」とか「嫁さん」て言葉さえ問題視される世の中である。「夫の所有物じゃない」とか「奥に引っ込んでろってか?」と。男女平等なんだからと。
旦那は稼いで奥様はそれを支える。結婚式で度々祝辞で使われた「三つの袋」の話はもはや過去のこと。胃袋を掴め、給料袋を掴め、堪忍袋ハシゴまで隠しておけ。バージョンによっては「お袋さん(姑)を大事に」なんてのもある。
それは昭和の考えで、令和の時代には合わないと。
北川景子は仕事場で後輩編集者員・武田玲奈に良かれと思ってアドバイスするが、それをパワハラだれたと上司にチクられ企画を下される。今時コンプライアンス重視の雑誌編集部で、一方的なパワハラ告発だけで処分を下したりするか?
さらにトイレの個室で落ち込んでる北川景子の耳に、「北川景子を貶めるためにやったことだ」と同僚に話す武田玲奈の声が・・・。うーんもはや古典のような展開。陳腐なシナリオだ。
で、個室から北川景子が出てきて武田玲奈に「どうしてそういうことするのかなぁ。言いたいことあるなら直接言ってよ」と言う。普通このパターンだと、武田玲奈は気まずくてトイレから慌てて出たりするのだが、このドラマでは「正直見た目だけじゃないですかぁ」と言い返す。
今時の、実力もないくせに何か勘違いしてる新入社員をステレオタイプで描いたのだろうが、さらに武田玲奈ははっきりと「顔で仕事がもらえてるくせに偉そうにしないでくださいよ」と北川景子に言う。
この「顔がいいだけで」に似たセリフは、瑛太のセリフ「顔やスタイルはパーフェクトな君」もあるのだが、これを実際に脚本で使われる女優・北川景子ってすごいな。
北川景子という女優以外では、このセリフは成り立たない。
「なりたい顔何ちゃら」とか「美人だと思う女優何ちゃら」とかで、必ず上位にランキングされる北川景子ならでは。これが佐々木希とか白石麻衣とかでもダメかもしれない。北川景子以外の女優やタレントでは、この「顔がいいだけで」ってセリフが成り立たないだろう。凄いな。
このあと北川景子が自分が新入社員だった時のことお武田玲奈に語るのだが、案の定武田玲奈は「はいはい。ババアの説教は以上ですか?見た目だけの先輩の言葉はなんにも響きませんので。」と。BGMはAdoの【うっせぇわ】を使ってくれたらぽったりだったかもしれない。
しかし、北川景子がババアと呼ばれる時代なのだね。
とかなんとか、褒めたりけなしたり忙しい第一話レビューなのだが、とりあえず第2話に期待だ。
あ、それから永山瑛太が北川景子をかばって、階段で滑り落ちるシーン。
木村拓哉が「B.G.身辺警護人」でしたのと同じく、彼女を抱きかかえながら階段を背中から滑り落ちていくシーンは圧巻だ。距離角度、ともにB.G.より長いし急だ。
そこらへんの刑事ドラマや2時間サスペンスものなら、まず間違いなく翌日に死体で見つかるであろうこのシチュエーションを、「イタタタ」で済ます永山瑛太。
自衛官はターミネーター並みにタフだとこの脚本家は勘違いしてるんか?て突っ込んでしまいました。
瑛太のコメディ演技は悪くないぞ。
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