漫画原作を実写ドラマにするのは難しい。
どうやっても原作ファンはあれこれ言う。キャスティングだったり、ストーリーだったり。だいたい単行本何冊か文の話を全10-11話でまとめようと思ったらかなり無理が出る。初めからシリーズ化する予定でもあれば別だけどね。役者の演技がどうこうの前に、監督と脚本家と演出に全てがかかっていってると言っても過言ではないな。もちろん衣装やヘアメイク、大小道具、照明や音響・音楽もそれぞれ重要だ。
監察医 朝顔。
上野樹里久々の月9主演ドラマ。この原作漫画を知ってる人は少ないと思う。そういった意味では実写化しやすいはずだ。多少設定を変えても問題ない。キャラの設定も変えれる。出てこないキャラクターも出せられる。これが戦国時代とか幕末とかの話だと「この話ならこの部分がキモなのに・・・」とか「こいつはこの場所にはいないはずだぞ」とか「これはこういう背景でこうなったんではないのか」って、あちこちで飛び交ってしまう。なまじ知ってる人が多いと大変だね。そう考えると大河ドラマとかって大変よね。
で、この監察医 朝顔。このドラマ面白いのか面白くないのかがいまいちわからない。俺が原作漫画を知ってるせいとかではない。なんかテンポが悪い。どうでもいいことの部分がやたら長い。感情移入できにくい。そうかといえば家や控え室に置いてあるものや、キャラクターの描写は実に丁寧。細かいところにこだわる脚本家か演出家のせいか。だから「うーん、これはすごい」と褒めたくなる場面はかなり多い。でも同時に「これ何?」とか「ひどいな」とか「要る?」って場面や、「長いわ」「くどいわ」と早送りしたくなる部分が入り混じってるドラマ。
俳優陣は上野樹里、時任三郎、柄本明、風間俊介、板尾創路、杉本哲太、山口智子、志田未来・・・。演技派ぞろいだから演技に問題など全くない。志田未来の開所直後の空気を読めないキャラ設定、今時演出は完全に外してた。石原さとみ主演ドラマ【Heaven?】での志尊淳のウザキャラ以上にちょっと邪魔って思った。だがクレームが多かったのか志田未来の演技が3話目以降には抑えた感じになってちょっと安心した。中尾明慶のキャラ演技も途中から変わった。これは途中で演出家が変わったのか?
上野樹里の母(石田ひかり)が亡くなった(行方不明)のは阪神大震災だが、ドラマでは東日本大震災になってる。これは原作漫画の連載されてた時期とドラマ化された今では被災地の状況も違うし、これはこれで全く問題はない。設定を変更して良かったと思う。でも、いつまでも「風化させないで」とかってのが随所に出てくるのはうんざり。「あれからもう何年?」とか「東日本震災以降いろんな災害があって、その度に各地で被災者は出てるんだけど」って思ってしまうほどくどい。これは脚本が悪い。
でも、遺体捜索の時間を取るためにと、父(時任三郎)がハードな県警本部から所轄に移動したこととか、爺ちゃん(柄本明)がやるせなさからかそっけなかったって部分は見事だ。更に手袋が片方見つかった途端、爺ちゃんの気持ちが変わりだし、和解というか協力的になったたとこ。時任三郎は手袋が見つかったことで妻の死を現実のものと認識をしてしまって戸惑ってる。そんなところの描写はすごくうまい。これは演出家がうまいのか。脚本にそうあるのかよくわからん。
このドラマが秀逸なのは食事のシーン。グルメドラマではないのに、かなりの時間食べることを丁寧に描いてる。日常の食事のシーン。家での朝食、帰宅後の晩御飯。お弁当。上野樹里の仕事場の控室での食事、ヤマグともこの不気味なお土産や料理。恋人(6話目から旦那)の風間俊介ともんじゃ焼きデートで食べる。風間俊介は刑事部屋でも食べる。上司である戸次重幸も蕎麦を食う。「さぁ昼飯食うぞ」でお約束の「電話がなって事件発生、すぐ現場に急行せよ、残念だが飯はお預けもある。捜索中の時任三郎もおにぎりを食べる。落ち込んだ上野樹里もおにぎりを食う。そう、どんなに悲しくても、やるせなくても、忙しくても、嬉しい時も食べることは大事だ。どんな時でも食べないとだめだ。力が出ない。考えがまとまらない。エネルギーを蓄えなければいけない。逆に言えば食べられれば大丈夫だ。
そして秀逸なのが上野樹里と時任三郎の家。細々した演出が随所にされてる。冷蔵庫の張り紙や付箋(石田ひかりがいなくなった日のまま)、台所の食器(3人分だったが今は風間俊介用のと子供用の小さいのが増えてる)、仏壇代わりのタンスの上(子供が生まれたあと写真立てが増えてる)、そこらへんの家具や転がってる小物(絵本とか玩具がそのまま増えたって感じで置いてある)。いろいろ探してしまう。石田ひかりがいなくなる前と変わらないままの部分と今の部分。そして特筆すべきは風間俊介が入り婿し子供が育った今も、食事の時は石田ひかりの席は変わらず空けてある。こういう演出は唸ってしまうほど見事なり。
普通ならこんなドラマはベタ誉めドラマになるはずなんだが、先に述べたようにテンポがいきなり悪くなってしまうのが難点。まどろっこしい部分が多いのだ。細かいところにこだわるのはいいのだが、「くどい!」ってなってしまうとき多々あり。
まるでこだわったヤツの家に遊びに行って、置いてある家具やディスプレイに見とれたり褒めたりしてたら、いきなり語り出して・・・。その話が興味もないことなんだけど長い、くどい、もうええってって感じになるときに似てる。
タンスの上の写真立てが子供が生まれ増えたりってのはさりげなく演出してるのに、石田ひかりと約束した花の部分は語りを入れ回想シーンを入れしつこく描く。柱の傷が時任三郎の分まであることでこの家が時任の生まれ育った家であり、上野樹里が育った家とさりげなく描いてたのに、風間俊介と結婚したら家を出て行けって叱るシーンはやたらと長いしくどい。最後は上野樹里が泣きながら父・時任三郎に「私が一緒に暮らしたいんだよ」と告げるシーンの演技は両者さすがに見事だが、あまりに見事すぎてその日の事件(心霊スポットで白骨死体が見つかり、それが徘徊老人だったと解剖・検視で判明するが、息子は遺体の引き取りを拒否する)との関連性が全く飛んでしまった。
その次の第6話では夫婦の死体が見つかるが疑問点が多く、上野樹里らが検視。長女が「私が二人とも殺した」と自供するが、実はお母さんが永年旦那のDVの恨みから衝動的に殺してしまって、自責の念から自殺。母を殺人者にしたくないという想いから・・・。この話の回が特に「なんのこっちゃ」満載。演技派に囲まれての妹役・小林星蘭の下手っぷり。見事なまでに棒演技。この子こんなに下手だったっけ?子役の時はうまかったのになぁ。なんてのしか印象に残らないくらい、全編くどいのオンパレード。ちっとも面白くないの。上野樹里の家族の絆とかと関連さすためかなって思ったけどそこは全然描かれないの。もう次週は見なくていいかなって思ったくらい。
ただし、風間俊介が捜査と捜索で多忙で疲労がたまってる時任三郎に、風間俊介が冷蔵庫から栄養ドリンクを渡すシーンはちょっと笑ってしまった。リゲインならぬAgain。黄色いラベルの栄養ドリンクは時任三郎に似合う。牛若丸三郎太にプレイバック。24時間戦えますか。今なら絶対クレームの嵐。「ブラックだ」「働き改革だ」なんて世の中だものね。こんなさりげない演出は好物だ。あざとさのかけらもない。
そのせいか7話は視聴率落ちたみたいだが、この回は石田ひかりの手袋が片方見つかった回。そして上野樹里は法廷に鑑定証人として出廷。今回の事件は「紀州のドンファン」事件を彷彿させる話で、美魔女と言われるくらいべっぴんだが金持ちと結婚するたびにすぐ旦那が死んで遺産や保険金を手にしてきた女。このすごくいやーないかにも金の亡者な美魔女を演じる有森也美が上手かった。
そして毎回さりげなく泣かせるセリフや演技を見せる風間俊介が今回も見せてくれた。被災地で見つかった手袋は母・石田ひかりのものだったが、その中にあった骨は母のものではなかった。それでも気丈に振る舞いお父さんを励ましてる上野樹里に対して優しく労う。「よく我慢したね。お父さんの前だったからでしょ。今はもう我慢しなくていいよ。」
この監察医 朝顔で上野樹里を優しく見守り、いい旦那、いい父親を演じる風間俊介は、今放送されてる倉本聰脚本ドラマ【やすらぎの刻〜道】の昭和編のパートで、徴兵拒否で自殺してしまった兄の子供を宿した清野菜名と結婚するという、こちらでもいい旦那を演じてる。
8話では妻が死んだ原因を知りたい旦那の要望で解剖をするが、死因が特定できない。これがまたくどいほど長いだるい内容だった。妻の死に疑問を抱く旦那を演じてる俳優が誰か知らないが、これがまた下手なの。冷静なのかただ喚いてるだけなのか、ただのクレーマーなのかただ真実が知りたいだけなのか。セリフが多い割には妻の死が受け入れられないって演じてるのだろうけどいまいち伝わらない。結局遺伝性の病だったのだが、ここまで引っ張る意味が全然理解できない。俳優のせいにしちゃいけないな。これ絶対脚本が悪いよな。
そして今週(第10話)またがっかりしてしまった。先週の9話から引き続き、上野樹里らが家族ぐるみで付き合う行きつけのもんじゃ焼き屋の家族。その奥さんが不慮の死を遂げ旦那が疑われる。この旦那役をきづきが演じるのだが、どうもamazonのCMキャラのイメージが強くていまいち入り込めない。奥様へのDV疑惑、児童虐待の疑いも出て子供は妻の父母が勝手に引き取ってしまう。失意のきづきは自分が殺したと自首する。なんとかきづきの無罪を証明したい上野樹里だが、見知りの友人だからかメスを持つ手が震えて切れない。山口智子に叱られ解剖室を退室。10話の再度の解剖でも手が震える。
とまぁ書き連ねただけでもなんのこっちゃというとこだが、さらにくどくてなんじゃこりゃってのが、上野樹里の講義のシーン。メスが持てなくなった上野樹里に山口智子は自分の受け持ってる大学の講義を依頼する。
壇上で淡々と喋る上野樹里、大学の講義なんてまともに聴く人も少ない。二回目の講義も淡々と喋る上野樹里。そこで質問する学生(多分戸塚純貴だと思う)。法医学の解剖は承諾なしに切れるのか。遺族が拒否しても死因究明のために解剖することが法で認められてるのなら、それは人間の尊厳を傷つけていないか。この質問を皮切りに上野樹里が法医学を語る。これが長い。ほんまに長い。
全くわからん。こんなに尺必要か?っていうかこのシーンなんのためにこんなに長く取ったんだ。法医学とはどういうものか視聴者に知ってもらいたいのか?理解を深めてほしいのか?視聴者はそれが知りたいのか?これは絶対脚本家が悪いと思う。漫画で例えたら吹き出しだらけだ。セリフだらけのページは漫画なら飛ばしになってしまう。画力がない漫画家ほどそうする。書き分けられないから、絵で伝えられないからセリフにしてごまかす。
演技力のずば抜けた俳優がそろってるこのドラマで、ここまでの長セリフ必要あるか?今までドラマで描いてきたのではないのか?この脚本家のセンスを疑ってしまうほど、くどい、長い、しつこい。
メスが持てなくなって焦燥の中にいる上野樹里に、山口智子が講義を依頼するとき一緒に焼き芋を食べるシーンは。妻が亡くなり子供を義父母に連れて行かれて店も休んでるきづきを励まそうとお弁当を持っていくが拒否されてしまうシーン。それを自宅に持ち帰他上野樹里が自分も食欲はないのだが無理矢理にでも頬張るシーン。時任三郎と上野樹里の話を娘と階段で聞く風間俊介が涙をこらえるシーン。随所にはいいシーンがいっぱいあり、決して悪いドラマではない。でも、講義の長ゼリフのシーンはいらなかったなぁ。
くどいとか、しつこいって長々と書いてる俺の方がしつこくてくどいな。反省
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