徳丸無明のブログ

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ユーハ マーケットオー リアルブラウニービッグ

2022-09-09 22:52:04 | 
今日はリアルにビッグなブラウニーです。




韓国産のお菓子。ユーハはUHA味覚糖のことです。駄菓子屋で発見しましたが、駄菓子らしからぬクオリティ。質が高いです。
本日は第47回私が好きなマンガの話。今回取り上げるのは杉浦茂の『猿飛佐助』(全1巻・ちくま文庫)です。全3巻のKindle版もあります。
忍者・猿飛佐助の冒険活劇。敵方の侍や忍者相手に痛快な忍術勝負を繰り広げ、平天下を目指すビルドゥングスロマン・・・というあらすじはどうでもよかったりします。と言うのも、このマンガの面白さは、ストーリーにはないからです。
話が単線的に展開していたと思いきや、ふいに奇妙なキャラクターが登場。よくわからない行動をとるので、何が目的かと注目していると、すぐに姿を消し、2度と現れることはない。するとまた別のキャラクターが現れ、好き勝手暴れてはまた消えていく。メインの登場人物以外に、名もなき多くのキャラクターが出演し、むしろそっちがメインじゃないかと思えるくらい作品をにぎわせるのです。そもそもどんな話だったか、わからなくなってしまうほどに。
このマンガは、そんな意味不明の描写に満ちているのです。話の本筋ではなく、本筋からの脱線のほうに面白さがある。
なんでも杉浦さんは、下描きをせずにいきなりペン入れをしており、しかも途中で思いついたアイディアを即興的に作品に取り入れていたらしいのです。それが自由でアナーキーな作風を生み出しているのですね。
マンガはもっと自由でいい!と言うよりむしろ、自由であるからこそマンガなんだ!そんなことを思わせてくれます。
登場人物は基本的に、いかにも少年マンガ向けの可愛らしい絵柄なのですが、中には不気味でグロテスクなキャラや、写実的なキャラも混じっており、その統一感のなさが、ストーリー展開のデタラメさと相まって、不協和音をより強めています。まるで風邪をひいたときに見る不思議な夢のよう。
「あたいは誰だい?」などのセリフ回しも独特でクセがあり、ついマネしたくなります。登場人物の名前も「うどんこプップのすけ」など、クセ強め。
前に『杉浦茂マンガ館』だったか、大判の選集を中古で見つけて入手したんですけど、その本の帯に書かれていたキャッチコピーが「みんなそろって明るくキレた」。杉浦ワールドを端的に言い表しています。
1908年生まれで、88歳まで執筆を続けた杉浦さん。後進の漫画家に多大な影響を与えてきたのですが、そのひとりが赤塚不二夫。皆さん、レレレのおじさんはご存じですよね?レレレのおじさんって、ほかの赤塚キャラと比べて異質だと思いませんか?明らかにデザインが違うでしょ。
あれはですね、赤塚さんが杉浦さんの作風を模倣して作り出したキャラなんですよ。だから見た目がほかと違うんです。杉浦マンガを読んでいただければわかります。レレレのおじさんにそっくりなキャラが数多く描かれていますから。
漫画家以外にも多くのファンを持つ杉浦さん。ポップで可愛いタッチは人気が高く、その絵はCDのジャケットや本の装丁に幾度も使われています。
ゴイゴイスー!
しかし現在、ほとんどの著作が入手困難。現在流通しているのは『杉浦茂の摩訶不思議世界 へんなの』(晶文社)と、『杉浦茂傑作漫画選集 0人間』(小学館)と、青林工藝舎から出てる『怪星ガイガー・八百八狸』を始めとした傑作選集くらいですか。河出文庫の『円盤Z』、『少年西遊記』、『少年児雷也』はもう絶版ですかね。
あ、ひょっとしたらちくま文庫の『猿飛佐助』ももう書店じゃ取り扱ってないかもしれませんが、古本ならわりと数多く出回ってます。
いずれにせよ、もっとたくさん杉浦マンガに触れたい!どっかの出版社が全集出してくれないものでしょうか。
大袈裟じゃなく、文化遺産となるべきマンガだと思います。