今日は生でクリームなチョコレートです。
お徳用サイズパック入りチョコ。一度に全部食べてしまわないよう、集中力が必要です。鼻血が出ますからね。
チョコは甘い。甘いのは思い出。そう、子供のころの話をしましょう。甘くておバカな話。
子供はダジャレが大好きですよね。しょーもないダジャレを言ってゲラゲラ笑います。しかも、飽きもしないでくり返す。
僕もそんな子供のひとりでした。んで、だいたい子供は自分でダジャレを考えたりはせず、人から聞いたのをそのまま口にするわけですが、僕にはオリジナルのダジャレがありました。
ひとつは、「めーぶつ」というやつです。特産品とか、伝統の品なんかの名物ですね。その名物を、「目をぶつ」という意味にとらえたのです。
それで、友達や弟とふざけているときに、「めーぶつ」と言いながら、目をげんこつで殴っていたのです。
まーアホですよね。でも殴ると言っても、全力でやっていたわけではありませんよ。あくまでこぶしを当てるだけというか、たわむれる範囲の殴打にとどめていました。
だとしても、目を殴るというのはけっこう危険な行為ですよね。視力に影響しかねない。
でも子供だから、そこまで配慮しないわけです。やってたのは小学生のころだったんで、目をケガすると視力が落ちるかもしれないということくらいは知っていましたが、それでもなんか、ふざける楽しさを優先しちゃうというか、ついついやらずにはいられなかったんですよ。いやー、アホですね。
でも本気で殴っていたわけじゃありませんので、友達も弟も、そのせいで視力が落ちたりはしていなかったと思います。たぶんね。
もうひとつは、「おせいぼ」というやつです。説明するまでもなく、お歳暮からきています。
こちらもめーぶつと同様、行為をともなっています。「おせいぼ」と言いながら、友達を突き飛ばすのです。「押せ」とかけているのですね。
こちらもあくまでおふざけですので、本気で突き飛ばしたりはしません。軽くよろめかせる程度です。
めーぶつのほうは僕がひとりでやってたんですけど、おせいぼは小学二年のときにクラスでちょっとだけ流行ってました。なので、これを思いついたのは僕じゃなく、クラスの誰かだったかもしれません。
みんなおふざけでやってましたから、やってるほうもやられてるほうも笑ってましたし、それがきっかけでケンカになることもありませんでした。
しかしある日、事件が勃発しました。
女子5人が、ひとりの男子をいっせいにおせいぼしたのです。
僕が通っていた小学校は、中庭と外庭がありまして、そのあいだには1メートルほどの高低差がありました。中庭から外庭に降りる階段が2箇所、スロープが1箇所ありまして、それ以外の場所はブロック張りの斜面になっていました。
女子5人がおせいぼをしたのは、その中庭の、斜面スレスレの所だったのです。おせいぼを食らった男子は、頭から外庭に転落しました。
転落した男子は、重傷とまではいきませんでしたが、頭部にケガを負いました(どの部分にどのようなケガをしたのかは覚えていません)。当然学校側の問題となり、緊急のクラス会が開かれ、まず5人の女子が担任の先生に尋問されました。
先生はひとりずつ、「あなたは◯◯君を押したの」と問いただしました。1人目の女子は、「押してません」と答えました。2人目の女子も「押してません」と言いました。3人目4人目も「押してない」と言い、5人目も「押してない」と言い切りました。全員の答えを聞いた先生は、「じゃあ誰も押してないのに落ちたっていうとね!」と激高しました。
5人の返答を聞いていた僕は、「こいつらきたねぇな」と思いました。というのも、僕はたまたま5人がおせいぼをした現場に居合わせていたからです。
5人はたしかに、全員で同時におせいぼをしていました。僕は男子が転落していく瞬間まで目撃していたのです。たぶん唯一の目撃者だったはずです。
なので、5人が言い逃れのため、保身のためにウソをついているのは明白だったのです。
彼女たちの立場に立って考えると、普段からおせいぼをしていたわけではないので(普段おせいぼをしていたのは、もっぱら男子でした)、力加減がよくわからなかった、ということなのかもしれません。また、さほど力を込めていなかったにもかかわらず、5人同時に行ったせいで、思っていた以上に突き飛ばしてしまったのかもしれません。だとすると、同情すべき点もあることになりますが、だからといってウソをついていいわけではありませんよね。
この件の責任問題、犯人の特定と処罰がどこまで進められたか、どのような形で終結したかはよく覚えていません。言っても子供のしたことなので、そこまで厳密にしようとはしなかったのかもしれません。女子5人はこれといった処罰を受けることなく、曖昧な幕引きが図られたのかもしれません。
ただその代わり、「おせいぼ禁止令」が出てしまいました。
先生は、「お歳暮とは年末に感謝の気持ちを伝えるために贈り物をすることであって、人を突き飛ばすことではありません」という、生真面目すぎるお説教をしました。
それを聞いた僕は、「何くだらないこと言ってんだ。そんなのわかりきったうえでやってんだよ」と思いました。
ですが、禁止令は出されてしまいました。それに、クラスメイトがケガをしています。
なんとなく、今まで通り楽しめなくなってしまった雰囲気があり、おせいぼをする生徒は減っていきました。そして、いつの間にかみんな忘れてしまっていました。
子供のあいだの遊びも、流行り廃りがあります。それにひとつの遊びが禁止されても、ほかの遊びをすればいいだけのことです。
覚えていませんが、たぶんおせいぼ以外の流行りがすぐに訪れたのでしょう。
当時のクラスメイト、男子を突き落とした5人の女子、そして突き落とされた男子。ひょっとしたら、もう誰もおせいぼのことなど覚えていないのかもしれません。今はいっぱしの社会人となり、年末にはお歳暮を欠かさない、気遣いのできる大人になっているのかもしれません。
ですが僕は覚えています。くだらないダジャレとともに友達を突き飛ばす快感を。バカなこととわかっていながらバカをやる楽しさを。
あなたもおせいぼをやってみませんか。同僚をいきなり突き飛ばしてみませんか。
そうすれば、何かが変わるかもしれない。童心を取り戻せるかもしれない。
くだらない行為の果てに、歓喜の宇宙は開けているのです。
お徳用サイズパック入りチョコ。一度に全部食べてしまわないよう、集中力が必要です。鼻血が出ますからね。
チョコは甘い。甘いのは思い出。そう、子供のころの話をしましょう。甘くておバカな話。
子供はダジャレが大好きですよね。しょーもないダジャレを言ってゲラゲラ笑います。しかも、飽きもしないでくり返す。
僕もそんな子供のひとりでした。んで、だいたい子供は自分でダジャレを考えたりはせず、人から聞いたのをそのまま口にするわけですが、僕にはオリジナルのダジャレがありました。
ひとつは、「めーぶつ」というやつです。特産品とか、伝統の品なんかの名物ですね。その名物を、「目をぶつ」という意味にとらえたのです。
それで、友達や弟とふざけているときに、「めーぶつ」と言いながら、目をげんこつで殴っていたのです。
まーアホですよね。でも殴ると言っても、全力でやっていたわけではありませんよ。あくまでこぶしを当てるだけというか、たわむれる範囲の殴打にとどめていました。
だとしても、目を殴るというのはけっこう危険な行為ですよね。視力に影響しかねない。
でも子供だから、そこまで配慮しないわけです。やってたのは小学生のころだったんで、目をケガすると視力が落ちるかもしれないということくらいは知っていましたが、それでもなんか、ふざける楽しさを優先しちゃうというか、ついついやらずにはいられなかったんですよ。いやー、アホですね。
でも本気で殴っていたわけじゃありませんので、友達も弟も、そのせいで視力が落ちたりはしていなかったと思います。たぶんね。
もうひとつは、「おせいぼ」というやつです。説明するまでもなく、お歳暮からきています。
こちらもめーぶつと同様、行為をともなっています。「おせいぼ」と言いながら、友達を突き飛ばすのです。「押せ」とかけているのですね。
こちらもあくまでおふざけですので、本気で突き飛ばしたりはしません。軽くよろめかせる程度です。
めーぶつのほうは僕がひとりでやってたんですけど、おせいぼは小学二年のときにクラスでちょっとだけ流行ってました。なので、これを思いついたのは僕じゃなく、クラスの誰かだったかもしれません。
みんなおふざけでやってましたから、やってるほうもやられてるほうも笑ってましたし、それがきっかけでケンカになることもありませんでした。
しかしある日、事件が勃発しました。
女子5人が、ひとりの男子をいっせいにおせいぼしたのです。
僕が通っていた小学校は、中庭と外庭がありまして、そのあいだには1メートルほどの高低差がありました。中庭から外庭に降りる階段が2箇所、スロープが1箇所ありまして、それ以外の場所はブロック張りの斜面になっていました。
女子5人がおせいぼをしたのは、その中庭の、斜面スレスレの所だったのです。おせいぼを食らった男子は、頭から外庭に転落しました。
転落した男子は、重傷とまではいきませんでしたが、頭部にケガを負いました(どの部分にどのようなケガをしたのかは覚えていません)。当然学校側の問題となり、緊急のクラス会が開かれ、まず5人の女子が担任の先生に尋問されました。
先生はひとりずつ、「あなたは◯◯君を押したの」と問いただしました。1人目の女子は、「押してません」と答えました。2人目の女子も「押してません」と言いました。3人目4人目も「押してない」と言い、5人目も「押してない」と言い切りました。全員の答えを聞いた先生は、「じゃあ誰も押してないのに落ちたっていうとね!」と激高しました。
5人の返答を聞いていた僕は、「こいつらきたねぇな」と思いました。というのも、僕はたまたま5人がおせいぼをした現場に居合わせていたからです。
5人はたしかに、全員で同時におせいぼをしていました。僕は男子が転落していく瞬間まで目撃していたのです。たぶん唯一の目撃者だったはずです。
なので、5人が言い逃れのため、保身のためにウソをついているのは明白だったのです。
彼女たちの立場に立って考えると、普段からおせいぼをしていたわけではないので(普段おせいぼをしていたのは、もっぱら男子でした)、力加減がよくわからなかった、ということなのかもしれません。また、さほど力を込めていなかったにもかかわらず、5人同時に行ったせいで、思っていた以上に突き飛ばしてしまったのかもしれません。だとすると、同情すべき点もあることになりますが、だからといってウソをついていいわけではありませんよね。
この件の責任問題、犯人の特定と処罰がどこまで進められたか、どのような形で終結したかはよく覚えていません。言っても子供のしたことなので、そこまで厳密にしようとはしなかったのかもしれません。女子5人はこれといった処罰を受けることなく、曖昧な幕引きが図られたのかもしれません。
ただその代わり、「おせいぼ禁止令」が出てしまいました。
先生は、「お歳暮とは年末に感謝の気持ちを伝えるために贈り物をすることであって、人を突き飛ばすことではありません」という、生真面目すぎるお説教をしました。
それを聞いた僕は、「何くだらないこと言ってんだ。そんなのわかりきったうえでやってんだよ」と思いました。
ですが、禁止令は出されてしまいました。それに、クラスメイトがケガをしています。
なんとなく、今まで通り楽しめなくなってしまった雰囲気があり、おせいぼをする生徒は減っていきました。そして、いつの間にかみんな忘れてしまっていました。
子供のあいだの遊びも、流行り廃りがあります。それにひとつの遊びが禁止されても、ほかの遊びをすればいいだけのことです。
覚えていませんが、たぶんおせいぼ以外の流行りがすぐに訪れたのでしょう。
当時のクラスメイト、男子を突き落とした5人の女子、そして突き落とされた男子。ひょっとしたら、もう誰もおせいぼのことなど覚えていないのかもしれません。今はいっぱしの社会人となり、年末にはお歳暮を欠かさない、気遣いのできる大人になっているのかもしれません。
ですが僕は覚えています。くだらないダジャレとともに友達を突き飛ばす快感を。バカなこととわかっていながらバカをやる楽しさを。
あなたもおせいぼをやってみませんか。同僚をいきなり突き飛ばしてみませんか。
そうすれば、何かが変わるかもしれない。童心を取り戻せるかもしれない。
くだらない行為の果てに、歓喜の宇宙は開けているのです。