強い寒波が東日本を覆い、それが「クリスマス寒波」と呼ばれていて、そんな寒波あったかなと思うも、そんなことよりクリスマスがもうどうでもいい年齢になっており、はしゃぎたいヤツは勝手にはしゃげよと冷めた感情しかなく、サンタ狩りにも興味が持てないものの、まつもときんに君が独自のプラットフォームで復帰するらしいというニュースが聞こえてきた昨今、皆さんお元気ですか的なM-1グランプリの感想文をお届けします。今回は2連覇狙い、初決勝、2回目、常連と、いろいろな立場のファイナリストを取りそろえた大会となりました。
また一段と感想文の公開が遅れてしまいましたが、速報性より質ということでなにとぞご容赦を。
個別の感想は以下の通り。まずはファーストステージから。
令和ロマン・・・「終わらせよう」でなぜウケる?何を終わらせるの?M-1?
自分の子供に教室の座席のいい場所を与えたいというネタ。席順という「学校あるある」と、画数などの「名字あるある」が、かつてない形で一体化しています。「そこ注目する?」という、意外性をかき立てる着眼点。「そんな些細なところの話、よく広げるな」という掘り下げ力。この2つが合わさることで、有無を言わせぬ説得力のあるネタとなっていました。くるまは、ケムリのことが見えなくなるくらいはしゃぎまくったほうが活きてくるし、面白さがより跳ね上がるみたいです。暴走するくるまと、懸命に制止するケムリのかけ合わせ。
笑いの神のイタズラか、阿部一二三の引き寄せか、2年連続トップバッターとなった令和ロマン。これもまた、「持ってる」ことの証なのかもしれません。
タカアンドトシが北海道でやってる「ジンギス談!」ってトーク番組があるんですけど、令和ロマンが去年のM-1優勝後に出演してて、「M-1前はどのネタ持って行こうかって遠足みたいにワクワクしてた」って話してたんですよね。この肩の力の抜けっぷりというか、M-1を心底楽しんでるのがプラスに働いてるんですね。この心持ち、みんな見習ったほうがいいと思います。
ヤーレンズ・・・おにぎり屋さんのネタ。バカバカしいダジャレ満載ですが、ボーッとして観てられるかというとそうではなく、ちゃんと頭使ってないと理解できない高度な作りもあって、レベルの高さを感じました。新米の、「新しいお米」と「新人」のダブルミーニング、にぎり海峡めし景色、深追いすると違うミュージシャンの曲になるところが特によかったです。漫才で楢原が演じるのは、だいたいおばさんキャラなのですが、これは女性を演じることでオカマっぽく見せたほうが面白くなるという計算なのか、それともそのほうが楢原の素に近く、自然に演じられるということなのか。
審査員たちから「中盤以降あまり展開がなかった」という指摘をされてましたが、そんなに展開って大事でしょうか。面白けりゃそれでいいと思うんですけどね。しゃべくりじゃなく、コント漫才だとそういうところも評価対象になってしまうということなのでしょうか。
採点後の「じゃあ松本さん」はややウケでしたね。だいぶ前に天竺鼠・川原がキングオブコントでカマした、「じゃあパンサー」のキレには遠く及ばず。
真空ジェシカ・・・これまで通り、真空ジェシカお得意の大喜利型漫才。「こんな商店街はイヤだ、どんなの?」というお題の答えを次々披露していく形式。この形そのものは変わりないのですが、だいぶ洗練されてきて、真空ジェシカの漫才が完成に近づいているように感じました。かまいたちの山内が、「全体通して何かつながりがあれば」と言ってましたが、天丼(偏った政党のポスターの反復)あり、伏線回収(少年ジャンプの掲載順と同じだから、出口近くのお店は迷走している)ありで、充分まとまりあったと思います。
セーラージュピター(木野まこと)と同姓同名も伏線かと思いました。「今年の都知事選みたい」なポスターは、現実が漫才よりおかしくなってしまったという風刺でしょうか。笑えない時代を笑いながら生きてる我々。
マユリカ・・・キモダチ・イズ・バック!最初中谷まで走っちゃって、阪本のお約束ダッシュが相殺されちゃいましたね。
同窓会のネタ。うんこサンドイッチは、「うんこを挟んでいる」のではなく、「うんこで挟んでいる」のがキモ。奇矯なことをする同級生はあだ名も個性的で、モーニングセットの内容がどんどん充実していくところがうまい。カーナビって80年代にありましたっけ?校歌の歌詞は「上海ハニー」で、曲は「六甲おろし」?
しかし「大急ぎで負けにきた」が一番ウケちゃってたのがやや残念。
ダイタク・・・ヒーローインタビューのネタ。ヒーローと聞いて、スポーツ選手と思いきや、双子を利用して活躍したヒーローだった。ちゃんと双子の特性を活かしてるし、見分けがつかなくても問題ない作りになっています。途中からほぼツッコミなしのボケたおし。このテンポのよさにも双子の強みが出ていましたね。「姿見に寄りかかって2人に見せた」ところが一番よかったです。
双子コンビであれば、もっとザ・たっちみたいな、わかりやすい売り出し方あったはずですが、ダイタクはそちらを選ばなかったわけです。ちゃんと漫才の力を蓄え、コツコツ進む道を選んだ。そこは称賛したいです。それとも、ザ・たっちの二番煎じになってしまうから同じルートをたどれなかった、というのが真相とか?
ジョックロック・・・病院を舞台とした、ドラマ風ネタ。冒頭で変な間があって、「ん?」って思いました。最初のつかみ、マイナンバーの説明が長めでしたが、そのぶんキッチリ大きめの笑いを取って、自信がないとこれはできないなと思いました。「アラームがMRI」は、アラームを声で再現するから伝わりにくいわけですが、「ピンとこない人は健康な人生でよかった」という2段構えによって、笑いを取り逃がさないことに成功しています。しゃべりの笑いだけでなく、「裏拍が取れない」という動きの笑いもある。「死んでないのに時間を計る」のは、あまりウケなかったから伏線かと思いましたが、単独の会話でしたね。「ブッダハンド」は、せっかくだったら仏教っぽいことしてほしかったです。「紫って500種類あんねん」はアンミカのマネ?
福本の屈伸風ツッコミ、個性を出すためのものですけど、ぜいたくを言えば、その動きが内容と関連してくるっていう構成にできないかな、と思いました。
バッテリィズ・・・名言のネタ。寺家がいろんな名言を紹介していくが、エースには響かない。スローなスタートでしたが、徐々に勢いを増して爆発しました。新星おバカキャラ誕生。たぶんこれ、ほぼエースの素でしょう。だから地のしゃべりというか、ごく自然なセリフになっている。エース自身は漫才ではなく、日常のおしゃべりの感覚でやってるはずです。寺家がエースの性格を熟知してて、その面白さを引き出すのにはどうしたらいいかを考えてやってるんでしょうね。だからエースが目立ってるけど、黒幕的にコントロールしているのは寺家なのです。この息の合わせっぷり、まさにバッテリー。キャッチャー(女房)の手腕が光ってました。
ママタルト・・・銭湯のネタ。肥満が大暴れする、いかにもお笑いというコミカルさ。老若男女が安心して見れる漫才ですね。やはりママタルトは肥満をどう活かすかにかかっている。檜原の最初のツッコミ、「エアコンのフィルターか」の声量に、「そんな声張る?」と驚き、「いや、でも肥満のキャラに負けないようそうしているのか」と思い、「いやしかし檜原は肥満の引き立て役に徹するべきだよな」と思い直していたら、中川家の礼二が「ツッコミを立てすぎる」、ノンスタイル石田が「かかりすぎてる」と評してて、やっぱそう見るべきだったかと思いました。
エバース・・・初恋の女の子と15年後に待ち合わせをするネタ。待ち合わせの日にちをいつにするか、場所をどこにするかで悩み、モメる。「さすがに末締めだろう」の静かな言い方にやられました。「こうしたら」という提案に、「でもそうするとこうなるかも」という返しがくる、それのくり返し。形式としてはブラックマヨネーズに近いか。「ちょっとある」の反復も面白いし、「どうやったら女の子と会えるのか」を気にしながら話の展開についていくのもワクワクさせられます。
今年NHK新人お笑い大賞優勝、ツギクル芸人グランプリも3位のエバース。佐々木は利発そうだし、町田は朴念仁っぽいし、デコボコ感のあるいいコンビだと思います。
トム・ブラウン・・・ホストクラブに通う女の子の肝臓を守るネタ。ザ・狂気。冒頭でホストが銃殺されるのに、なぜ笑えるのか。パラパラ踊るのもまったく必然性なく意味不明。何度くり返しても銃殺は変わらないので、その後はひたすら悪夢のような展開が続きます。ドラッグやってたらこんな光景が見えるのでしょうか。布川が「ダメー」のあと、特に何も言わない無言の間が妙に面白い。本気でこのネタで優勝できると思ってたんですかね。インパクトはすごかったですけども。
続きましてファイナルステージ。
真空ジェシカ・・・ここにきて、大喜利型じゃない漫才。アンジェラ・アキのコンサートに行ったらピアノが巨大化したという、ワンシチュエーションもの。「笑いと紙一重」のホラー要素もあり、緊張感で笑えます。セリフのない、ゆっくりとした動きだけの場面でもしっかり面白くて、これは「リアルに感じられる程度には不自然じゃない」設定作りと、観ている人をネタの世界に入り込ませる演技力によるものだと思いました。ガクのツッコミに川北がツッコミ返して笑いを倍増させてる手法もお見事。1本目より手数がだいぶ少なめですが、笑いの量は減ってない。こちらのパターンもアリだと感じました。
優勝予想の記事で、「良くて4位くらい」と書きましたが、今回優勝に手が届き、3位という結果に。まーごめ!
令和ロマン・・・1本目と変えてきました。戦国時代にタイムスリップするネタ。ケムリが固いのが意味不明。くるまはよく動きますね。冷静に観てたら2人の消費カロリーにだいぶ差があることがわかります。ネタを2本披露する賞レースって、ネタの振り幅を見せるより、2本とも同じ構成にしたほうが勝ちやすいって話、「アメトーーク!」の「賞レース2本目やっちまった芸人」で聞いたことあるんですけど、令和ロマンはしゃべくりとコント形式の2本で優勝。これは強い。
今年エントリーした時点で、「2連覇したらシラケる」とか、「ほかの芸人のチャンスを潰すことになる」といった批判がありました。でも2人ともそれはあらかじめわかっていたはずで、それでも優勝まで突き進んだ。この精神力もまた、強い。
しかしこうなると、「アナザーストーリー」はどうなるんでしょう。令和ロマンはベテランほど苦労してないでしょうし、2連覇だから感動は薄まってるはずです。それをどう観せるのか。なんならほかのファイナリスト多めに映したほうがよさそうですね。
M-1優勝者は、直後にオファーが増えて、いろんな番組を1周するのがお決まりとなっています。しかし令和ロマンは、去年の優勝後、テレビの出演依頼をほとんど断っていたそうなんですね。テレビに出ることに執着がなく、出たい番組だけ選んで出ていたと。つまり令和ロマンは、番組1周していないのです。するとそのぶん、前年のチャンピオン・ウエストランドが、そのままもう1周することになったのではないでしょうか。ウエストランドというか、正確には井口ひとりが。とすると、令和ロマンの2連覇によって、ウエストランド(というか、井口ひとり)は3周目に突入することになるのではないでしょうか。休みの日には、太田光代社長と一緒に病院通いをしているという井口。体が気になります。令和ロマンは史上初の2連覇を成しとげたわけですが、その裏でウエストランド(というか、井口ひとり)は、史上初の3周目に臨もうとしているのです。仮に令和ロマンが来年もエントリーし、3連覇すれば4周目です。井口の目には、今何が映っているのでしょう。
バッテリィズ・・・世界遺産に行ってみたいというネタ。こちらもエースのおバカ加減がいかんなく発揮されてます。ついつい「おバカ」という生き物を観察している気分で観てしまいますが、おバカゆえに本質を突くこともあり、「沖縄から北海道までの7倍ある万里の長城、どこ見に行ったら見たとされるの」とか、言われてみればごもっとも。
最後エースが「もうええわ」って締めててハッとなったんですけど、バッテリィズって、エースがツッコミ?おバカだから誤解されやすいのかもしれませんが、ボケているように見えて、ツッコむことが(おバカゆえに)ボケになっている「ツッコミボケ」なんですね。よくよく観てみると、寺家はほとんどツッコんでおらず、「案内役」とか「紹介者」と呼んだほうがシックリきます。この形式、あまり気づかれていないのかもしれませんが、なかなか独自。いやほんと、ナイスバッテリー!
準優勝、および文句なしに今大会のMVP。
そして何より、エース、来年のブレイク芸人筆頭候補に躍り出ました。おバカキャラは数あれど、エースは「一本スジの通ったおバカ」、もしくは「ちゃんと自分を持ってるおバカ」と言えましょう。このタイプは希少です。この手のコンビって、まずキャラが立ってるほうがバーンって売れて、そのあと地味だけど実力あるほうがジワジワ売れていく、ってルートをたどりがちですよね。博多華丸・大吉しかり、麒麟しかり、オードリーしかり、南海キャンディーズしかり、ハライチしかり。バッテリィズもそうなるのか、これから要注目です。
正直、僕も令和ロマン以外に優勝してほしかったのですが、でもこれが真剣勝負なわけで。それに必ずしも優勝者だけが売れるわけじゃなく、「準優勝のほうが売れる」というジンクスもあるくらいだし、今後のことを考えると、優勝よりインパクトだったりするんですよね。だから優勝(2連覇)という栄光は令和ロマンのものですけど、ブレイクはバッテリィズとか、そっちのほうになるはずなんですよね。だから別に、連覇は連覇でいいんじゃないかと。それは実力として素直に認めるべきではないかと思いました。
ノンスタ石田の衣装が誰よりもゴージャスだったのはなぜでしょう。マルチ商法の成功者みたいになってました。
今回エントリー数が一万組を超えたそうで。日本にはそんなに漫才師がいるんですか?アマチュアの数も増えてるんですかね?
まつもときんに君の影響もあって、審査員の顔ぶれが一部替わりました。漫才の内容あーだこーだ批評する人たくさんいますけど、今は漫才だけでなく、審査員の評価まで批評する人いて、「コイツはふさわしくない」なんて当たり前のようにコメントしてるんですよね。司会の今田耕司に対しても「いい加減替えるべき」って声がありますからね。もはや一億総評論家時代ですよ。
え?お前だってそんな記事書いてるだろって?まあねぇ~!
また一段と感想文の公開が遅れてしまいましたが、速報性より質ということでなにとぞご容赦を。
個別の感想は以下の通り。まずはファーストステージから。
令和ロマン・・・「終わらせよう」でなぜウケる?何を終わらせるの?M-1?
自分の子供に教室の座席のいい場所を与えたいというネタ。席順という「学校あるある」と、画数などの「名字あるある」が、かつてない形で一体化しています。「そこ注目する?」という、意外性をかき立てる着眼点。「そんな些細なところの話、よく広げるな」という掘り下げ力。この2つが合わさることで、有無を言わせぬ説得力のあるネタとなっていました。くるまは、ケムリのことが見えなくなるくらいはしゃぎまくったほうが活きてくるし、面白さがより跳ね上がるみたいです。暴走するくるまと、懸命に制止するケムリのかけ合わせ。
笑いの神のイタズラか、阿部一二三の引き寄せか、2年連続トップバッターとなった令和ロマン。これもまた、「持ってる」ことの証なのかもしれません。
タカアンドトシが北海道でやってる「ジンギス談!」ってトーク番組があるんですけど、令和ロマンが去年のM-1優勝後に出演してて、「M-1前はどのネタ持って行こうかって遠足みたいにワクワクしてた」って話してたんですよね。この肩の力の抜けっぷりというか、M-1を心底楽しんでるのがプラスに働いてるんですね。この心持ち、みんな見習ったほうがいいと思います。
ヤーレンズ・・・おにぎり屋さんのネタ。バカバカしいダジャレ満載ですが、ボーッとして観てられるかというとそうではなく、ちゃんと頭使ってないと理解できない高度な作りもあって、レベルの高さを感じました。新米の、「新しいお米」と「新人」のダブルミーニング、にぎり海峡めし景色、深追いすると違うミュージシャンの曲になるところが特によかったです。漫才で楢原が演じるのは、だいたいおばさんキャラなのですが、これは女性を演じることでオカマっぽく見せたほうが面白くなるという計算なのか、それともそのほうが楢原の素に近く、自然に演じられるということなのか。
審査員たちから「中盤以降あまり展開がなかった」という指摘をされてましたが、そんなに展開って大事でしょうか。面白けりゃそれでいいと思うんですけどね。しゃべくりじゃなく、コント漫才だとそういうところも評価対象になってしまうということなのでしょうか。
採点後の「じゃあ松本さん」はややウケでしたね。だいぶ前に天竺鼠・川原がキングオブコントでカマした、「じゃあパンサー」のキレには遠く及ばず。
真空ジェシカ・・・これまで通り、真空ジェシカお得意の大喜利型漫才。「こんな商店街はイヤだ、どんなの?」というお題の答えを次々披露していく形式。この形そのものは変わりないのですが、だいぶ洗練されてきて、真空ジェシカの漫才が完成に近づいているように感じました。かまいたちの山内が、「全体通して何かつながりがあれば」と言ってましたが、天丼(偏った政党のポスターの反復)あり、伏線回収(少年ジャンプの掲載順と同じだから、出口近くのお店は迷走している)ありで、充分まとまりあったと思います。
セーラージュピター(木野まこと)と同姓同名も伏線かと思いました。「今年の都知事選みたい」なポスターは、現実が漫才よりおかしくなってしまったという風刺でしょうか。笑えない時代を笑いながら生きてる我々。
マユリカ・・・キモダチ・イズ・バック!最初中谷まで走っちゃって、阪本のお約束ダッシュが相殺されちゃいましたね。
同窓会のネタ。うんこサンドイッチは、「うんこを挟んでいる」のではなく、「うんこで挟んでいる」のがキモ。奇矯なことをする同級生はあだ名も個性的で、モーニングセットの内容がどんどん充実していくところがうまい。カーナビって80年代にありましたっけ?校歌の歌詞は「上海ハニー」で、曲は「六甲おろし」?
しかし「大急ぎで負けにきた」が一番ウケちゃってたのがやや残念。
ダイタク・・・ヒーローインタビューのネタ。ヒーローと聞いて、スポーツ選手と思いきや、双子を利用して活躍したヒーローだった。ちゃんと双子の特性を活かしてるし、見分けがつかなくても問題ない作りになっています。途中からほぼツッコミなしのボケたおし。このテンポのよさにも双子の強みが出ていましたね。「姿見に寄りかかって2人に見せた」ところが一番よかったです。
双子コンビであれば、もっとザ・たっちみたいな、わかりやすい売り出し方あったはずですが、ダイタクはそちらを選ばなかったわけです。ちゃんと漫才の力を蓄え、コツコツ進む道を選んだ。そこは称賛したいです。それとも、ザ・たっちの二番煎じになってしまうから同じルートをたどれなかった、というのが真相とか?
ジョックロック・・・病院を舞台とした、ドラマ風ネタ。冒頭で変な間があって、「ん?」って思いました。最初のつかみ、マイナンバーの説明が長めでしたが、そのぶんキッチリ大きめの笑いを取って、自信がないとこれはできないなと思いました。「アラームがMRI」は、アラームを声で再現するから伝わりにくいわけですが、「ピンとこない人は健康な人生でよかった」という2段構えによって、笑いを取り逃がさないことに成功しています。しゃべりの笑いだけでなく、「裏拍が取れない」という動きの笑いもある。「死んでないのに時間を計る」のは、あまりウケなかったから伏線かと思いましたが、単独の会話でしたね。「ブッダハンド」は、せっかくだったら仏教っぽいことしてほしかったです。「紫って500種類あんねん」はアンミカのマネ?
福本の屈伸風ツッコミ、個性を出すためのものですけど、ぜいたくを言えば、その動きが内容と関連してくるっていう構成にできないかな、と思いました。
バッテリィズ・・・名言のネタ。寺家がいろんな名言を紹介していくが、エースには響かない。スローなスタートでしたが、徐々に勢いを増して爆発しました。新星おバカキャラ誕生。たぶんこれ、ほぼエースの素でしょう。だから地のしゃべりというか、ごく自然なセリフになっている。エース自身は漫才ではなく、日常のおしゃべりの感覚でやってるはずです。寺家がエースの性格を熟知してて、その面白さを引き出すのにはどうしたらいいかを考えてやってるんでしょうね。だからエースが目立ってるけど、黒幕的にコントロールしているのは寺家なのです。この息の合わせっぷり、まさにバッテリー。キャッチャー(女房)の手腕が光ってました。
ママタルト・・・銭湯のネタ。肥満が大暴れする、いかにもお笑いというコミカルさ。老若男女が安心して見れる漫才ですね。やはりママタルトは肥満をどう活かすかにかかっている。檜原の最初のツッコミ、「エアコンのフィルターか」の声量に、「そんな声張る?」と驚き、「いや、でも肥満のキャラに負けないようそうしているのか」と思い、「いやしかし檜原は肥満の引き立て役に徹するべきだよな」と思い直していたら、中川家の礼二が「ツッコミを立てすぎる」、ノンスタイル石田が「かかりすぎてる」と評してて、やっぱそう見るべきだったかと思いました。
エバース・・・初恋の女の子と15年後に待ち合わせをするネタ。待ち合わせの日にちをいつにするか、場所をどこにするかで悩み、モメる。「さすがに末締めだろう」の静かな言い方にやられました。「こうしたら」という提案に、「でもそうするとこうなるかも」という返しがくる、それのくり返し。形式としてはブラックマヨネーズに近いか。「ちょっとある」の反復も面白いし、「どうやったら女の子と会えるのか」を気にしながら話の展開についていくのもワクワクさせられます。
今年NHK新人お笑い大賞優勝、ツギクル芸人グランプリも3位のエバース。佐々木は利発そうだし、町田は朴念仁っぽいし、デコボコ感のあるいいコンビだと思います。
トム・ブラウン・・・ホストクラブに通う女の子の肝臓を守るネタ。ザ・狂気。冒頭でホストが銃殺されるのに、なぜ笑えるのか。パラパラ踊るのもまったく必然性なく意味不明。何度くり返しても銃殺は変わらないので、その後はひたすら悪夢のような展開が続きます。ドラッグやってたらこんな光景が見えるのでしょうか。布川が「ダメー」のあと、特に何も言わない無言の間が妙に面白い。本気でこのネタで優勝できると思ってたんですかね。インパクトはすごかったですけども。
続きましてファイナルステージ。
真空ジェシカ・・・ここにきて、大喜利型じゃない漫才。アンジェラ・アキのコンサートに行ったらピアノが巨大化したという、ワンシチュエーションもの。「笑いと紙一重」のホラー要素もあり、緊張感で笑えます。セリフのない、ゆっくりとした動きだけの場面でもしっかり面白くて、これは「リアルに感じられる程度には不自然じゃない」設定作りと、観ている人をネタの世界に入り込ませる演技力によるものだと思いました。ガクのツッコミに川北がツッコミ返して笑いを倍増させてる手法もお見事。1本目より手数がだいぶ少なめですが、笑いの量は減ってない。こちらのパターンもアリだと感じました。
優勝予想の記事で、「良くて4位くらい」と書きましたが、今回優勝に手が届き、3位という結果に。まーごめ!
令和ロマン・・・1本目と変えてきました。戦国時代にタイムスリップするネタ。ケムリが固いのが意味不明。くるまはよく動きますね。冷静に観てたら2人の消費カロリーにだいぶ差があることがわかります。ネタを2本披露する賞レースって、ネタの振り幅を見せるより、2本とも同じ構成にしたほうが勝ちやすいって話、「アメトーーク!」の「賞レース2本目やっちまった芸人」で聞いたことあるんですけど、令和ロマンはしゃべくりとコント形式の2本で優勝。これは強い。
今年エントリーした時点で、「2連覇したらシラケる」とか、「ほかの芸人のチャンスを潰すことになる」といった批判がありました。でも2人ともそれはあらかじめわかっていたはずで、それでも優勝まで突き進んだ。この精神力もまた、強い。
しかしこうなると、「アナザーストーリー」はどうなるんでしょう。令和ロマンはベテランほど苦労してないでしょうし、2連覇だから感動は薄まってるはずです。それをどう観せるのか。なんならほかのファイナリスト多めに映したほうがよさそうですね。
M-1優勝者は、直後にオファーが増えて、いろんな番組を1周するのがお決まりとなっています。しかし令和ロマンは、去年の優勝後、テレビの出演依頼をほとんど断っていたそうなんですね。テレビに出ることに執着がなく、出たい番組だけ選んで出ていたと。つまり令和ロマンは、番組1周していないのです。するとそのぶん、前年のチャンピオン・ウエストランドが、そのままもう1周することになったのではないでしょうか。ウエストランドというか、正確には井口ひとりが。とすると、令和ロマンの2連覇によって、ウエストランド(というか、井口ひとり)は3周目に突入することになるのではないでしょうか。休みの日には、太田光代社長と一緒に病院通いをしているという井口。体が気になります。令和ロマンは史上初の2連覇を成しとげたわけですが、その裏でウエストランド(というか、井口ひとり)は、史上初の3周目に臨もうとしているのです。仮に令和ロマンが来年もエントリーし、3連覇すれば4周目です。井口の目には、今何が映っているのでしょう。
バッテリィズ・・・世界遺産に行ってみたいというネタ。こちらもエースのおバカ加減がいかんなく発揮されてます。ついつい「おバカ」という生き物を観察している気分で観てしまいますが、おバカゆえに本質を突くこともあり、「沖縄から北海道までの7倍ある万里の長城、どこ見に行ったら見たとされるの」とか、言われてみればごもっとも。
最後エースが「もうええわ」って締めててハッとなったんですけど、バッテリィズって、エースがツッコミ?おバカだから誤解されやすいのかもしれませんが、ボケているように見えて、ツッコむことが(おバカゆえに)ボケになっている「ツッコミボケ」なんですね。よくよく観てみると、寺家はほとんどツッコんでおらず、「案内役」とか「紹介者」と呼んだほうがシックリきます。この形式、あまり気づかれていないのかもしれませんが、なかなか独自。いやほんと、ナイスバッテリー!
準優勝、および文句なしに今大会のMVP。
そして何より、エース、来年のブレイク芸人筆頭候補に躍り出ました。おバカキャラは数あれど、エースは「一本スジの通ったおバカ」、もしくは「ちゃんと自分を持ってるおバカ」と言えましょう。このタイプは希少です。この手のコンビって、まずキャラが立ってるほうがバーンって売れて、そのあと地味だけど実力あるほうがジワジワ売れていく、ってルートをたどりがちですよね。博多華丸・大吉しかり、麒麟しかり、オードリーしかり、南海キャンディーズしかり、ハライチしかり。バッテリィズもそうなるのか、これから要注目です。
正直、僕も令和ロマン以外に優勝してほしかったのですが、でもこれが真剣勝負なわけで。それに必ずしも優勝者だけが売れるわけじゃなく、「準優勝のほうが売れる」というジンクスもあるくらいだし、今後のことを考えると、優勝よりインパクトだったりするんですよね。だから優勝(2連覇)という栄光は令和ロマンのものですけど、ブレイクはバッテリィズとか、そっちのほうになるはずなんですよね。だから別に、連覇は連覇でいいんじゃないかと。それは実力として素直に認めるべきではないかと思いました。
ノンスタ石田の衣装が誰よりもゴージャスだったのはなぜでしょう。マルチ商法の成功者みたいになってました。
今回エントリー数が一万組を超えたそうで。日本にはそんなに漫才師がいるんですか?アマチュアの数も増えてるんですかね?
まつもときんに君の影響もあって、審査員の顔ぶれが一部替わりました。漫才の内容あーだこーだ批評する人たくさんいますけど、今は漫才だけでなく、審査員の評価まで批評する人いて、「コイツはふさわしくない」なんて当たり前のようにコメントしてるんですよね。司会の今田耕司に対しても「いい加減替えるべき」って声がありますからね。もはや一億総評論家時代ですよ。
え?お前だってそんな記事書いてるだろって?まあねぇ~!