猫じじいのブログ

子どもたちや若者や弱者のために役立てばと、人権、思想、宗教、政治、教育、科学、精神医学について、自分の考えを述べます。

ロシアのウクライナ軍事侵攻はロシアの拡張主義の終わりを招く

2022-05-05 21:49:37 | ロシアのウクライナ軍事侵攻

5月9日にプーチンがどんな決断をするかに注目が集まっている。大方の予測は戦争続行しかないという見方である。

ブルガリアの歴史、ポーランドの歴史を読むと、17世紀以降、ロシアの拡張主義が周辺諸国にとって脅威になっている。20世紀にソビエトがロシアに誕生しても、依然として周囲の国々に脅威をあたえた。

今回、プーチンはロシア軍をウクライナに侵攻させたが、戦争を続行させれば弾薬がつき、多くの優秀な兵を失う。どこかで、戦争を止めなければ、地上軍では、ヨーロッパのどの小国よりも軍事力が弱くなる。じっさい、モルドバの大統領にもバカにされ始めている。ベラルーシもカザフスタンも過去のロシアへの怨念を晴らすときを待ち構えている。

現在、ロシアが占領している地域は、ウクライナ侵攻以前より多いが、それを維持するのはむずかしい。

ウクライナ政権が存続する限り、おとなしくロシアの支配を我慢することはあり得ないであろう。占領地域の住民ひとりひとりを取り調べ、ロシア政府に従わない住民を強制移住させるか、殺すしかなくなるだろう。しかし、現代において、おおっぴらに殺すことはできない。したがって、ウクライナ側に、ロシア政府に反抗する住民を追放するしかなくなるだろう。

どんづまりである。

戦争を続行するプーチンに残されたものは、核兵器しかなくなる。しかし、核兵器を使用しても、その後の世界は、プーチンの望むものではないだろう。

プーチンはウクライナ侵攻で歴史に大きなねじれを生んだが、それがロシアにも跳ね返り、ロシアの拡張主義が終わりを迎えつつあると思う。


「〈侵略〉と〈戦争〉を考える」朝日新聞のオンライン討論に参加して

2022-04-29 23:25:39 | ロシアのウクライナ軍事侵攻

この2カ月間、テレビをつけると、笹川平和団体幹部とか防衛庁の防衛研究所幹部とか元自衛隊幹部とが、ロシア軍のウクライナ侵攻を解説をしている。聞いていて私は何か不快に感じる。なぜ、ロシアは、先に空爆をしてから、地上部隊を送らなかったのか、となど、ロシアの戦争のやり方が非効率的だとをのべ、自分たちが軍事専門家として優秀だと暗に自慢している。

戦争とは人を殺すことではないか。そんなに効率的に戦争することが、そんなにいいことだろうか。まったく おかしい。それなのに、効率的な戦争が、今のアメリカ軍のうたい文句になっている。テレビ出てくる日本人の彼らはそれを代弁し、暗にアメリカを称賛している。

大多数のアメリカ人は、戦争で不具や死人になりたくないから、自分は戦争に行きたくないと思っている。だからこそ、アメリカ政府は、戦争をゲームのように見せ、自分たちは効率的に戦争を遂行できると、国民に思わせているのだ。

日本にもう少し知的な人間はいないのだろうか。笹川平和団体や防衛研究所や元自衛隊よりマシな人間はいないのだろうか。

そう思っていたところ、きょう、朝日新聞の考論オンライン『〈侵略〉と〈戦争〉を考える――歴史・憲法・政治の現在地』があった。さっそく、オンラインに参加した。討論者は憲法学の長谷部恭男(65歳)、政治学の杉田敦(63歳)と日本近代史の加藤陽子(61歳)である。

戦争はしてもよいのか、という話しから始まった。杉田は、戦争犯罪を行わなければ、戦争しても良いという考えはオカシイと言った。ウクラナイでは18歳から60歳までの男は出国禁止だということは、総力戦である。戦闘員と非戦闘員との区別はなくなる。長谷部も、戦争というものは始まったら地獄であると述べた。「地獄」ということに私も同意する。

戦争をなぜするのか。それは、古代や中世では略奪が目的であったが、現代では、自分の意見に相手を従わせるためであると私は思っている。

杉田は戦争にホッブスの考え方とルソーの考え方があるという。ホッブスは、国と国が安全のために戦うが、国の安全よりも自分自身の生命のほうが大事であるから、国が自分の安全を保障しないなら、戦争を拒否できる自由がある、という。いっぽう、ルソーは、共同体を守るため、共同体の構成員は死を決して戦うべきだという。

長谷部は、ロシアはホッブスの立場で、ウクライナはルソーの立場だと述べた。聞いていて、これは政府の立場をいうのか、国民のタテマエなのか、国民の本音なのか、私にはわからない。ロシアは徴兵制ではなく、今回のウクライナ侵攻にあたっても、兵の補充のための募集広告が地下鉄にぶら下がっている。また、戦争に加担したくない若者は国外に逃げているし、国内も広いのでどこかに隠れて暮らせるという。

私自身は、国が「共同体」であるはずがないから、ホッブスの言うとおり、自分の生命を守るのが当然だと思う。

杉田は、戦争の目的は、ルソーのいうように憲法体制をめぐる争いなのか、加藤のいうように歴史観をめぐる争いなのか、と問うた。この質問の意図は良くわからないが、前者は長谷部の持論である。加藤も著作の中では長谷部の主張に賛意を示していた。

しかし、「略奪」型の戦争と違い、どちらにしても、相手とを倒さないと戦争が終結しない。したがって、「決闘」型の戦争となることは、長谷部も杉田も同意していたと思う。アメリカが西側の価値「自由」と「民主主義」の守る戦争をウクライナに押しつける限り、妥協点がみいだせない。加藤もその点に疑問を提示し、ロシアが侵略戦争を仕掛けた点の犯罪性を意識すべきと言っていたような気がする。

杉田は、「決闘」型の戦争でも、「冷戦」のように、相手を閉じ込めることで、ミサイルや戦車が出てくる「戦争」にならないで済むと言っている気がした。長谷部は「冷戦」も危険な状態であることは変わりがない、とした。長谷部は、ロシアはまっとうな議会制民主主義の国でないとした。

私は人を殺すという状態から抜け出るためには、「決闘」型では妥協できなくなると思う。

加藤は、ウクライナ侵攻の初めの段階でアメリカが強く出るという選択は、核戦争を引き起こすリスクがあったと言った。私は、アメリカはロシアとチキンレースをすべきだと思っている。核の使用は望まなくとも、全世界で廃棄しない限り、いずれ使われると思っている。

関連して、杉田は、敵基地攻撃能力よりも、専守防衛なら、原発の全廃、地下壕の建設が必要と言った。杉田は、また、ロシアのメンツを立てても、戦争状態は変わらないと言った。杉田の現実認識を私は支持する。

話の順は前後するが、ウクライナがロシアの軍事侵攻にすぐ下らなかったのは、加藤は、ウクライナがロシアの侵攻を予測して準備していたからではないか、と問題提起していたが、他の二人から言及がなかった。加藤の事実認識を支持する。

軍事専門家の技術論より、意味がある討論であった。今後の議論の発展を期待する。


ロシア軍のウクライナ侵攻は続いている、「戦果」より毎日の「戦禍」を私は知りたい

2022-04-27 22:57:01 | ロシアのウクライナ軍事侵攻

ウクライナ軍事侵攻の報道がだんだん少なって、停戦協議とか人道回廊とかだけになっていく気がする。しかし、ロシアのミサイルは毎日ウクライナの地に撃ち込まれているはずであり、大量のロシアの戦車がウクライナの地を動き回っているはずであり、多数の人命が失われているはずであり、国内難民や国外難民が今なお続いているはずである。

毎日起きていることは、煽動的な報道をしたいタイプの人びとにとっては、価値がないかもしれないが、人道的立場からすれば、毎日起きているからこそ、許しがたいのだ。

毎日、どこに、どれだけミサイルが撃ち込まれ、どれだけの人が住居を失ったのか、いま、ロシア兵は何人、戦車は何台、ウクライナの地にいるのか、きょうは何人死んで何人負傷したのかを私は知りたい。ロシア軍に占領された地域に、何人が住んでいて、難民になったのか、殺されたのか,強制移住になったのか、を私は知りたい。「戦果」ではなく、「戦渦」を私は知りたいし、みんなに知ってほしい。

ロシアの戦略は、ウクライナに軍事侵攻しているという事態を、世界の人びとから忘れさせようとしている。お金をかけずに、持久戦に持ち込み、実効支配の範囲を広げようとしているように見える。西側の政府の本気度を確かめているようにも思える。

ロシアは、攻め込む側であり、自国の直接の被害は少ない。ウクライナは攻め込まれる側であり、住居だけでなく、インフラが破壊され、経済的打撃が大きい。最初から対等でない戦争をしている。ウクライナは世界からの支援を必要としている。兵士だって、どんどん死んでいき、補充ができない。ウクライナの支援のために政府を動かすには、「戦果」より「戦禍」の報道こそ、必要だと思う。


ウクライナに勝っているとするプーチンを笑ってすましてはならない

2022-04-18 22:53:39 | ロシアのウクライナ軍事侵攻

きょうのBSTBS『報道1930』で、ロシアの大統領プーチンがウクライナとの戦争で勝っていると思いこんでいる、とキャスターとゲストが笑っていたが、笑うようなことでないと思う。ウクライナの国民が死に、日常生活が破壊され、難民が国民の4分の1に及び、ロシアの実効支配の地域が、2月24日のウクライナ侵攻前より増えている。今のところ、本当に、ロシアが勝っているのである。ロシアの戦いかたが効率悪くても、勝っているのである。

現在時点で、唯一のウクライナ軍の大きな戦果は、ロシア海軍黒海艦隊のミサイル巡洋艦「モスクワ」を攻撃で沈没させたことである。しかし、どうやって、ウクライナ軍が巡洋艦を撃沈させたか、のニュースがない。たまたま撃沈できたのか、それとも、何か新しい兵器がアメリカから供与されたのか、わからない。たまたまであれば、ウクライナ軍の反撃が続かない。

1週間前に、アメリカのバイデン政権は新たな軍事支援を発表した。2カ月に渡って闘っていればウクライナ軍の弾薬は尽きるから、弾薬の支援が当然必要である。しかし、戦争というのは、民間人でさえ死ぬのであるから、当然、戦闘員は死ぬのである。人員は補充できない。対戦車ミサイルの供与というが、戦闘員が担いで攻撃する小型兵器である。攻撃すれば戦闘員の位置がわかる。何人かの戦闘員は集中砲撃で死なざるを得ない。

援軍が来なければ、ウクライナ軍の兵員は減る一方で、ウクライナが勝つことがない。プーチンがそのことを知っている。

西側の経済封鎖で停戦に導くといっても、ロシアは自給自足できる国である。食料だけでなく、自分のところで石油がとれる。長期戦が戦える国である。プーチンがそのことを知っている。

だから、プーチンの頭がオカシイと笑ってすむことではない。効率が悪くても勝てばよいと考えているだけだ。

BSフジの『プライムニュース』で、プーチンが恐れているのは、西側の参戦であると、小泉悠が言っていた。だからこそ、プーチンは自国の人びとに向かって、「ウクライナ侵攻は戦争でなく特別軍事作戦だ」と言っているのだ。西側の参戦を恐れているからこそ、追い詰められれば核を使うと脅しているのだ。

私は、名目だけの経済封鎖ではなく、包囲されているウクライナの東部の諸都市を奪還するために、アメリカは参戦すべきである。マリウポリの住民を助けるために、包囲しているロシア軍を空から攻撃すれば良いではないか。アメリカが参戦しても、中国は参戦しない。世界大戦に発展しない。

アメリカの参戦が、ロシア軍のウクライナ侵攻を早期に止める唯一の方法だと私は思う。

[補遺]

CNNとアメリカ国防省高官の話を合わせると、巡洋艦モスクワに「ネプチューン」というミサイルをウクライナ軍が2発命中させたということだ。ウィキペディアによれば、「ネプチューン」は、ソ連時代に開発されたミサイルをもとに、ウクライナが対巡洋艦ように改良したもの。したがって、アメリカ軍が供与した兵器ではない。


BSTBS『報道1930』プーチンの言い分、ロシア人の言い分

2022-04-14 23:07:36 | ロシアのウクライナ軍事侵攻

人間は記憶にその行動が左右される。戦争は憎しみを生む。憎しみに人間が左右されることを私は歴史の歪みと私は呼ぶ。

きょう、BSTBSの『報道1930』がロシア大統領ウラジミール・プーチンの立場からみたウクライナへの軍事侵攻について語っていた。プーチンから見ると、ウクライナは分離主義者によって牛耳られている。自国がウクライナを使って西側から攻められる前に、ウクライナを攻めてその非武装化をはからないといけないという思い込みがあったのでは、ということが番組の主張である。

1941年6月22日、第2次世界大戦で、独ソ不可侵条約があったにもかかわらず、ドイツはソ連(ロシア)に攻め入った。当時のソ連のトップ、スターリンは、本当にドイツ軍が攻めてくるとは思っておらず、戦いの準備をしていなかった。その結果、1945年5月に、ソ連がドイツ軍を押し返し、ドイツの首都ベルリンを陥落させるまでに、ソ連は民間人を含めて2700万人の戦死者をだした。ドイツの700万人の戦死者に対してである。

プーチンがウクライナの民族主義者を「ナチス」と呼ぶのは、このソ連とドイツの戦争においてウクライナ分離主義者がナチス政権のドイツに味方したという歴史による。

プーチンからみると、1991年に、ソ連が消滅したということは、イデオロギーの問題ではなく、「西側」の陰謀によるロシアの敗北である。ソ連時代は、色々な民族を抱えていながら、「共産主義」のもとに一体感をもって人々は平和に暮らしていた。プーチンには、ソ連の崩壊に伴うロシアの混乱を立てなおしたという自負がある。また、それが、ロシアの多数の人々のもつ記憶であるという。

私が知らなかったのだが、番組は、プーチンは国家の祝日から革命記念日を排除し、戦勝記念日5月9日をロシア最大の祝日にしたといういう。毎年、戦勝記念日に無料の大コンサートが野外で行われ、人びとが祝っているのが、YouTubeで見られる。(ウィキペディアによると5月9日の軍事パレードは1995年以来である。)

また、2001年にプチーンはロシアの国歌をソ連時代の国歌の曲に戻し、歌詞だけを変えたのだという。プーチンは、2010年、この国歌が他国ウズベキスタン(?)で演奏されるのを聞いて、涙を流したという。

とにかく、プチーンが多民族国家ロシアに一体感を再びもたらしたのは事実のようだ。

ウクライナも、ロシアによるクリミア併合後、ウクライナ人としての意識を強め、西側の援助で軍事力を強化したのも事実のようだ。

歴史の歪みが強まっている。ロシア軍のウクライナ侵攻がどんな結末を迎えようとも、歴史の歪みはますます強くなるだけのように思える。この歪みの解消は、「西側」という面妖な考えを棄て去り、「自由主義国」というトンデモナイ虚構を葬り去り、「個人主義」の本来の意味に帰り、個人が国家への帰属意識を持たなくなるまで、待たないといけないのかもしれない。

それまでは、人の道に徹するしかない。

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