ちょうど1カ月前の朝日新聞オピニオン&フォーラムに、政治哲学者マイケル・サンデルへのインタビュー記事が載っていた。
とても懐かしい名である。私は、15年前にNHKの「ハーバード白熱教室」で彼の討論型講義に、夢中になった一人である。
今回のテーマは「働く尊厳を取り戻す」である。私は、まったく同意見であるが、これはほかの人になかなか伝わりにくい。多くの人にとって、「働くのは働かないと生きていけないから」である。
サンデルは言う。
「エリートが自分たちを見下し、〔自分たちの〕日々の仕事に敬意を払っていないという労働者の憤りが、〔昨年の大統領選での〕トランプの成功の根本にあります」
「〔新自由主義者〕のメッセージはこうです。競争に勝ちたければ大学に行け。どれだけ稼げるかは、何を学ぶにかかっている」
サンデルは、新自由主義者が、職によって格差を設け、働く人びとを侮辱しているというのである。
職に貴賤があってはならない。社会は色々な職の人々によって維持されているのだ。働くということは、それによって、みんながみんなとつながっているのだ。
私はNPOで多くの若者と接してきたが、彼らは、働ける場が見つかったとき、喜びに満ち自信を回復する。働くことで仲間ができるのだ。そして、自分が社会を支えていると実感できる。
サンデルは言う。
「自らを生産者と位置づけるとき、……、私たちは共同体の『共通善』に貢献する役割を担っていると気づきます」
今の日本社会っは『共通善』という理想を忘れている。