娘がどこかで買ってきた
おもちゃの望遠鏡。
のぞいてごらん
というから、のぞいてみた。
安物のプラスチック。
ぼやけた景色がみえた。
それがなんだかとてもレトロで
次の瞬間、昔のビデオをみている
ような錯覚に陥った。
あどけなく笑う娘が
遠い過去の記録になってしまう様な
そのとたんに怖くなって
望遠鏡から目をそらした。
振り向けば微笑む妻が座っている。
時は流れるのだ。
流れてしまったものはどうにもならない。
どんなに技術があろうと
どんなに金があろうと
時間をもどすことはできない。
かけがえのない美しい時間は
その瞬間にしか存在しない。
今を生きなくては。全力で。