海岸にひろがる駐車場で私は君を抱きしめた。
開けたままの車のドア、
そして聞こえるTUBE。
私はギュッと力を込めた。
あの時、君はどこを見ていたの。
私はカモメを見ていた。
空を舞うカモメを。
高鳴る胸の鼓動は
まるで空をかけていたのだ。
君のエネルギーを吸収したかった。
潮の香りなどない。
君の記憶だけだ。
私は君を抱きしめたまま、無我となった。
こみ上げる喜びを永遠としたかった。
カモメは空を舞う。
何も考えずに
私のカローラの遥か上空を
舞う。
私たちを見ていたのかな。
カモメは
抱きしめられている君に気づいたかな。
私と君、体はくっついた。
二人の間にはぬくもりだけがあった。
このぬくもりは私のものか、それとも君のか。
どちらにせよ、これ以上のない快適な温度だ。
人工にはだせない。
出させやしない。
私は空ばかり見つめていたが
それは怖かったのだ。
君を見るのが。
君の顔を見つめなかった。
見つめたかったが。
君の吐息も
鼓動も
私は無視していたのだよ。
ただ手探りでぬくもりを求めた。
空は どこまでも蒼く
カモメは白いのだ。
TUBEよ、どうか そのままで。