ある日の朝、いつものように新聞のお悔やみ欄を見て、一瞬目が釘付けになった。
そこに名前が書かれていたのは、私にとって心のすみから決して忘れることの出来ない人の名前だった。
もう亡くなっても不思議な年ではなかったが、正直ショックだった。
お葬式、どうしようか?
行こうか、行くまいか、、、しばらく迷った。
行かないで、後々後悔するより、思い切って行こうと心に決めた。
夫に話をしたら、やはり行った方がよいといい、一緒に行ってくれることになった。
葬儀場で私とこの人の関係を知っている人に会うのは嫌だった。
たくさんの参列者の中で、まぎれてお焼香をしてこようと思った。
お焼香をしながら遺影を見た。
「こういう顔をしていたんだ・・・」
喪主を見た。
喪主もこんな風になったんだ。
若いころ、偶然一度行き会ったことがあったけれど、年で面影も変わったな。
今、会っても誰だかお互いに分からないだろうな。
葬儀場で、ただ一人、昔教わった事のある知り合いの女の先生に会った。
この先生にはなぜか親しみがあって、毎年年賀状を交換していた。
先生には私と故人がどういう関係か話をしてもいいかなと思った。
案の定、先生に「どんなご関係?」と聞かれた。
私は事実を話した。
先生は驚いていたようだった。
故人と割と近くに住んでいたこの先生は、私との関係を知っているとばかり思っていた。
お葬式に行って良かったと思った。
私がずっと心の片隅に残っていたことにけじめがついた。
後で、喪主が香典帳に書かれた私の名前を見たら、どう思うだろうか?
誰だかわかるだろうか?
それが、ちょっと気になるね。
何となくミステリー。