ミュー ・ 百花春至為誰開

月山・葉山・野菜つくり・短歌・スケッチ   初夏の朝日連峰&果樹園 (寒河江市)

マイホーム

2009-09-12 | Weblog

A社モデルハウス(中央)①

同上 ② 2007/5 頃

②モデルハウス カフェテラス

同上 2階ラウンジ

同上 1Fリビング

同上 和室



退職する丁度一年前

2つのモデルハウスの設計をした


そのうちのひとつを

私の部下のパートのおばちゃん(一級建築士)に頼んだ

が モデルハウスを設計するほど

高い時給(800円/h)はもらっていません

と にべもなく断られ

仕方なく自分ひとりで設計した

苦い思い出がある


モデルハウスの設計は

初めからスケジュールが細かく決められている

かなりの神経を使う(胃が痛くなるときもあった)


数社~10社の設計部門のコンぺのようなものだ

モデルハウスの成否には会社の命運が掛かっていた と云っても

過言ではない


悪い言い方をすれば 海老で鯛を釣る かも知れない

何を差し置いても まずはお客様に一番美味しそうに見えなくてはならない

から 大変な仕事だった


どの会社のモデルハウスのデザインが優れているか

それこそ理屈抜きで一目瞭然である


コンセプト 規模 仕様・・・・・・・・etc

は 営業マン・・・・?が 勝手に決める


注文住宅の設計は

お客様の希望で・・・・・・・・

とか 云って失敗を適当にごまかせるが

モデルハウスでは そうはいかない


だが

モデルハウス設計の一番の魅力

自分の芸術作品・・・・・・・?を存分に

創れる(試せる)事にあった


口先だけの営業マンの言う事などは

当然の如く うわの空だった


設計が終了すると

ボォ~として 後に残るものは

エネルギーを燃焼し尽くし

魂を失くしてしまった

自分の抜け殻だった


まさにモデルハウスは自分の分身そのものだった


一昨年の秋 (私がまだ現役の頃)

両親と子供二人

そして おばあちゃんの5人家族が

②のモデルハウスを訪ねて来た


モデルハウスの外観 間取り

を 大変気に入ってくれた


モデルハウスと全く同じような家を建てたい

と 早速 営業から設計依頼をもらった


これこそ まさに設計者冥利に尽きる瞬間だ


だが・・・・・・長い経験から学んできたことだが

概して

こういった類の話にはガセネタが多く 途中で立ち消えになる場合が

ほとんどだ


しかしこの話はトントン拍子に進んだ


だが 途中大きな課題が行く手を阻んだ事もあった


モデルハウスは

夫婦2人+子供2人

計 4人家族を想定した40坪の家だった


おばあちゃんの個室と仏間の要望があった


1回目のプラン提出

65坪程度の大きさになってしまった

外観はそれなりに

モデルハウスの形に似せることが出来た


概ね好感度の感触を得た

と 思ったのもつかぬ間のことであった


おばあちゃんがどこかへ行って家相を見てもらって来た

玄関が病門に掛かっている

と 言われて来た


もちろん私も事前にチェック済みだった

病門は家相の中でも

あまり根拠のないものだったので 無視した


間取りを優先すると

どうしても玄関の位置が決まって来た


同上 ダイニングキッチン


何度もプランを提出していくうちに

家相よりも現実の生活の利便性の方が優先

と なって

プランはだんだんと固まって行った


打ち合わせの多くは夜に 自宅で行われた


私が寒河江の同じ住人であると知って

たいそう喜んでくれた


完成したら是非遊びに来てくれと

何度も云われた

私も完成したら伺う事を約束した


一昨年の年末ぎりぎり会社の大掃除の日に 無事契約した


そして昨年の一月 私は定年退職した


工事は雪解けをまって始まることになっていた

工事が始まるまで2~3ヶ月あった


様々な事情から

私が定年退職した事をすぐには伝えることはしなかった


昨年春工事がいよいよ始まった

途中 私も何回となく現場を訪ねた

退職したいきさつを その時になって初めて伝えた


昨年九月無事工事が終了 新居に引っ越した


近くを車で通った時など

わざわざスピードを落として

中の様子を伺ったりもしていた


同上


一昨日 近くの耳鼻科医院で咽喉の治療のあと

約束通り初めて訪問した

完成してから丁度1年が経っていた


留守番のおばあちゃん

私の訪問を大変喜んでくれた


家中を自慢げに

あれこれと説明を交えて案内してくれた


若夫婦のたっての注文だったカフェテラスには

モデルハウスと同じような鋳物製の白いテーブルセット

が 置かれていた

モスグリーンの日除けテントがよく似合っていた

休日の朝

新聞を広げモーニングコーヒーを飲み

ゆっくりくつろぐご主人の姿が浮かんで来た


なんとなく嬉しくなって来た


同上 リビング上部吹抜


リビングの吹き抜け天井には天井扇がゆっくりと回り

50インチの大型テレビ

革製のソファー

エアコン パソコン 蓄熱暖房器・・・・・・・

キッチンにはIHヒーター 食洗器

そして風呂場には壁埋込みのTV

まさに至れり尽くせりの装備品が整っていた

  
同上 玄関→リビング


1時間ほどで失礼した


玄関を1歩出た途端

なぜかとっても複雑な思いがしてきた


当たり前のことだが

モデルハウスは夢を授けるところで

生活臭などある筈がなかった


しかし そこには極当たり前のマイホームの姿があった

紛れもない日常茶飯事の現実の生活臭が漂っていた


いつまでも私の最後の芸術作品ではなかった