
A社モデルハウス(中央)①

同上 ② 2007/5 頃

②モデルハウス カフェテラス

同上 2階ラウンジ

同上 1Fリビング

同上 和室
退職する丁度一年前
2つのモデルハウスの設計をした
そのうちのひとつを
私の部下のパートのおばちゃん(一級建築士)に頼んだ
が モデルハウスを設計するほど
高い時給(800円/h)はもらっていません
と にべもなく断られ
仕方なく自分ひとりで設計した
苦い思い出がある
モデルハウスの設計は
初めからスケジュールが細かく決められている
かなりの神経を使う(胃が痛くなるときもあった)
数社~10社の設計部門のコンぺのようなものだ
モデルハウスの成否には会社の命運が掛かっていた と云っても
過言ではない
悪い言い方をすれば 海老で鯛を釣る かも知れない
何を差し置いても まずはお客様に一番美味しそうに見えなくてはならない
から 大変な仕事だった
どの会社のモデルハウスのデザインが優れているか
それこそ理屈抜きで一目瞭然である
コンセプト 規模 仕様・・・・・・・・etc
は 営業マン・・・・?が 勝手に決める
注文住宅の設計は
お客様の希望で・・・・・・・・
とか 云って失敗を適当にごまかせるが
モデルハウスでは そうはいかない
だが
モデルハウス設計の一番の魅力
自分の芸術作品・・・・・・・?を存分に
創れる(試せる)事にあった
口先だけの営業マンの言う事などは
当然の如く うわの空だった
設計が終了すると
ボォ~として 後に残るものは
エネルギーを燃焼し尽くし
魂を失くしてしまった
自分の抜け殻だった
まさにモデルハウスは自分の分身そのものだった
一昨年の秋 (私がまだ現役の頃)
両親と子供二人
そして おばあちゃんの5人家族が
②のモデルハウスを訪ねて来た
モデルハウスの外観 間取り
を 大変気に入ってくれた
モデルハウスと全く同じような家を建てたい
と 早速 営業から設計依頼をもらった
これこそ まさに設計者冥利に尽きる瞬間だ
だが・・・・・・長い経験から学んできたことだが
概して
こういった類の話にはガセネタが多く 途中で立ち消えになる場合が
ほとんどだ
しかしこの話はトントン拍子に進んだ
だが 途中大きな課題が行く手を阻んだ事もあった
モデルハウスは
夫婦2人+子供2人
計 4人家族を想定した40坪の家だった
おばあちゃんの個室と仏間の要望があった
1回目のプラン提出
65坪程度の大きさになってしまった
外観はそれなりに
モデルハウスの形に似せることが出来た
概ね好感度の感触を得た
と 思ったのもつかぬ間のことであった
おばあちゃんがどこかへ行って家相を見てもらって来た
玄関が病門に掛かっている
と 言われて来た
もちろん私も事前にチェック済みだった
病門は家相の中でも
あまり根拠のないものだったので 無視した
間取りを優先すると
どうしても玄関の位置が決まって来た

同上 ダイニングキッチン
何度もプランを提出していくうちに
家相よりも現実の生活の利便性の方が優先
と なって
プランはだんだんと固まって行った
打ち合わせの多くは夜に 自宅で行われた
私が寒河江の同じ住人であると知って
たいそう喜んでくれた
完成したら是非遊びに来てくれと
何度も云われた
私も完成したら伺う事を約束した
一昨年の年末ぎりぎり会社の大掃除の日に 無事契約した
そして昨年の一月 私は定年退職した
工事は雪解けをまって始まることになっていた
工事が始まるまで2~3ヶ月あった
様々な事情から
私が定年退職した事をすぐには伝えることはしなかった
昨年春工事がいよいよ始まった
途中 私も何回となく現場を訪ねた
退職したいきさつを その時になって初めて伝えた
昨年九月無事工事が終了 新居に引っ越した
近くを車で通った時など
わざわざスピードを落として
中の様子を伺ったりもしていた

同上
一昨日 近くの耳鼻科医院で咽喉の治療のあと
約束通り初めて訪問した
完成してから丁度1年が経っていた
留守番のおばあちゃん
私の訪問を大変喜んでくれた
家中を自慢げに
あれこれと説明を交えて案内してくれた
若夫婦のたっての注文だったカフェテラスには
モデルハウスと同じような鋳物製の白いテーブルセット
が 置かれていた
モスグリーンの日除けテントがよく似合っていた
休日の朝
新聞を広げモーニングコーヒーを飲み
ゆっくりくつろぐご主人の姿が浮かんで来た
なんとなく嬉しくなって来た

同上 リビング上部吹抜
リビングの吹き抜け天井には天井扇がゆっくりと回り
50インチの大型テレビ
革製のソファー
エアコン パソコン 蓄熱暖房器・・・・・・・
キッチンにはIHヒーター 食洗器
そして風呂場には壁埋込みのTV
まさに至れり尽くせりの装備品が整っていた



同上 玄関→リビング
1時間ほどで失礼した
玄関を1歩出た途端
なぜかとっても複雑な思いがしてきた
当たり前のことだが
モデルハウスは夢を授けるところで
生活臭などある筈がなかった
しかし そこには極当たり前のマイホームの姿があった
紛れもない日常茶飯事の現実の生活臭が漂っていた
いつまでも私の最後の芸術作品ではなかった